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空のエリス  作者: 長部円
第2部 3章
74/98

34 迫る帝国軍と三女の動き

34


エリスの率いる帝国軍は、ついにプランタン騎士団の一部が常駐する町も奪取し、サンタントワーヌへさらに接近した。

この事態にプランタン家の三女マティルドは、勝勢に乗って押し寄せてくる帝国軍を籠城戦で迎え撃つ前に、奇襲による一撃を与え、勢いを削ぐべきと主張。

当然、姉2人はその策に懸念を抱いたが、身内への甘さか、最終的にはマティルドによる帝国軍への奇襲を了承した。


幅の狭い谷のような地形に差し掛かった帝国軍の様子を、マティルドは斜面の上から眺めていた。

そして、帝国軍の中に"幻覚の美少女"そっくりであるエリスがいることを確認すると、

「手筈通り、帝国軍の横っ腹を叩いて反撃が来る前に離脱しなさい」

そう指示して騎士団員を送り出した。


プランタン騎士団は谷の両側から奇襲を仕掛けたものの、エリスたちはこういった地形で奇襲されることを予め想定しており、落ち着いて対処した。

いざ自分の順番が来て斜面を降りてきたマティルドは、"本物の"エリスの姿を正面から至近距離で視界に収めた瞬間、動きを止める。

そのまま立ち尽くし、騎士団員からの呼びかけにも応じず、あっさり帝国軍に捕縛された。

マティルドとともに逃げ遅れた騎士団員たちも捕まり、マティルドによる奇襲は失敗に終わった。


幻覚ではない"実在の美少女"エリスをまともに見て精神的な何かが限界を超えてしまい、立ったまま失神したマティルド。

エリスやメイ、ミヤなど精神操作を得意とする者たちは、マティルドが意識を失っている間に"仕込み"を済ませた。


「わたしの心も体も、愛らしいエリス様のものです…」

目を覚ましたマティルドは、それまで敵だったはずの帝国軍を率いるエリスに忠誠を誓う。

ただし、彼女の姉たちを含めて同胞(ディアボロス)にするか兵器(アンドロヴァッフェ)にするかを決めていないため、"暫定措置"としての"洗脳"にとどめており、"姉妹の絆"などの要因で解除されるリスクは当然ある。

「まずはあなたを手に入れることができてうれしいわ。

 でも、このままではあなたたち姉妹は相争わないといけなくなる。

 そこで、あなたに協力してもらって、あなたの姉2人も私のものにしたいの」

「姉さまたちのことについては、わたしもそのようにしていただきたいと思っておりました。

 ただ、エリス様がわたしたち姉妹だけでなく騎士団やサンタントワーヌをも手中に収めたいと望まれるならば、領主に近い者も含めてかなり入念に内部からの切り崩しが必要です」

「私のためにそこまで考えてくれているのね…頼もしいわ。

 あなたの言う通り、王国征服の足掛かりとして、サンタントワーヌはできる限り無傷に近い形で手に入れたい。

 ディアやミヤと相談して、どうやって切り崩すかを決めてちょうだい」

「はい…」

マティルドが持っている内部情報をもとに、帝国軍はサンタントワーヌ攻略のための作戦を練り始めた。


----


マティルドが帝国軍に捕まったという情報は、サンタントワーヌに帰還したプランタン騎士団の女性団員によってジャンヌとフェリシテに伝わった。

その団員によると、マティルドが自身を人質とする代わりに団員たちの解放を要求し、帝国軍がそれに応じたため、帰ってくることができたという。

「魔族どもが降伏勧告などの際にマティルドを盾にしてくるかもしれないわね」

「あの時、2人で強く止めていればよかったのですが…奴らにもマティルドにも甘かったですね…」

「ともかく、状況が悪化したことを領主に報告した上で、王都からの救援要請を含めて今後のことを相談するわ」

この時、2人はマティルドも、帰ってきた団員たちもすでにエリスの支配を受けていることに気づいていなかった。

また、騎士団員に混ざってエリス配下の諜報要員"ユヴェーレン"もサンタントワーヌへの侵入を果たし、工作活動を開始していた。

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