31 ロアベーア会談
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イルミナとエリスは侍女たちとともにロアベーア島へ先に到着し、サンゴ帝国のディアンティーノたちを待っていた。
ディアンティーノたちがやってくると、エリスと脇に侍るメイ、アンネが挨拶をする。
「イルミナの妹、エリスです…」
「か、かわいい…」
ディアンティーノたちは皆、愛らしいエリスたちにしばらく見惚れていた。
我に返ったディアンティーノたちが"いつもの場所"に案内され、エリスたちも交えた会談が始まった。
ディアンティーノがティグリ大陸南部の戦況について説明し、イルミナとの間でマリーネによる支援について話し合う。
ティグリ大陸征服についての話はスムーズに進み、比較的短時間で終わった。
すると、ディアンティーノの興味はエリスの側にいるメイに移り、躊躇せずエリスへメイについての質問を試みる。
「あの…そちらの侍女は、もしかして…」
「ああ、こちらのメイは私のエルステで…元人間です。
人間側の醜い争いに巻き込まれた形の彼女は"同族"である人間を憎んでいたため、私が同胞に迎え入れました」
「ヴェルトヴァイト帝国の皇女様はいずれも元人間を侍女にしていると聞いておりましたが、まさか筆頭侍女とは…。
確かに、彼女は"ただのかわいらしい元人間の侍女"ではないようですね。
皇女様の侍女というより皇女様のパートナーといったほうが適切なように思います」
「エルステは、まさにわたしたちのパートナーとなるべき存在として選定していますから。
さすがに、元人間をエルステに選んだ皇女はエリスが初めてですが。
それだけ、エリスにとってメイは特別な存在なのです」
イルミナの言葉を受けて、エリスとメイは少し頬を赤く染めながら微笑む。
「私も、ティグリ大陸でかわいい人間を捕まえて同胞にしたいと思ってしまいました…」
「お望みなら、そういったことのお手伝いもしましょうか?」
「是非、お願いしたいです…」
エリメイによってロリコンに堕ちたディアンティーノの欲望に塗れた依頼をイルミナは快諾した。
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ロアベーア島でディアンティーノたちと顔を合わせてから数日後、エリスはパンゲーアに帰ってきてノクスとイチャイチャしていた。
イルミナからはすでに聞いていたが、ノクスは皇位を継承するため以前よりも忙しく、突然訪れても会えない場合がある。
そのため、予め面会の日時を決めて、ようやくその日を迎えた。
ノクスはかわいい妹をひたすら愛で、エリスは大好きな姉に甘えるという時間がしばらく続いたが、不意にエリスは
「ノクスお姉ちゃん…イルミナお姉ちゃんとサンゴ帝国についてですが…」
という問いかけをノクスにする。
「あの子なりに、私が皇位を継いだ後のこの国と自分の行く末を考えた上での行動なのでしょうね。
私が皇帝になったら、地上と次の皇位を任せる子供と海の支配を任せる2人目の子供は必ず産むから、イルミナが今持っているものの大半をいずれ、私の2人目の子供に譲らないといけないことは確実よ。
でも、私にとってイルミナは、海の支配者でなくなってもこの世でたった2人の、私のかわいい妹だから、よその国にやるわけにはいかないわ…」
ノクスは、遠い将来のことだが、いつか必ず訪れる"その時"についてエリスに話す。
「私も、大好きなイルミナお姉ちゃんと会えなくなるなんて絶対嫌だから、もしノクスお姉ちゃんが"その時"を見据えて何らかの準備をしているなら、協力させてください…」
「うふふ…やっぱり私にもう1人妹がいてよかったわ…。
もちろん、エリスには協力してもらいたかったから、エリスから申し出てくれてうれしいわ…。
ちなみに、もし私に"3人目"が必要になるような事態が発生したとしても、エリスは心配しなくていいわよ。
神々にも愛されているかわいいエリスからヒンメルスパラストとデー・クラフトを奪うなんて全く考えていないわ」
「えへへ…そう言ってくれて、すごくうれしいです…」
エリスの言葉と愛らしい笑顔を受けて、ノクスは小さな妹と唇を重ねる。
ノクスのエルステ・ユノが次の予定を告げるまで、2人は何度も口づけを交わしていた。
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ティグリ大陸に戻ったディアンティーノは、海沿いの町を攻めた際にマリーネとの連携で人間の女性を捕らえるよう指示し、町の制圧後に数名の人間を見定めたが、彼女の好みのタイプはいなかった。
2度目も成果は芳しくなかったが、3度目の正直でようやく出会えて喜んだディアンティーノは、女帝ラウリーノの許可を得て同胞にした元人間の女性を"ヌリーノ"と名付けて側に置くようになった。
<2023/ 5/ 4修正>不要な改行を削除しました