24 "宝燈"からさらなる"拡張"へ
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ノクスにドライヴァイゼンの"拡張"を進言したエリスは、自らの幹部集団もさらなる"拡張"への手を打ち始める。
専属侍女4人とドライヴァイゼンの3人、ノインラターネンの9人のほか数人の侍女を集めると、
「スルーズ、あなたを"エルフ"に任命するわ」
スルーズを幹部集団の新たなメンバーに決めた。
「エリス様、"ノインラターネン"は9名が定員では?」
ノインラターネンの"アハト"であるカリナが当然の疑問点をエリスに問う。
「そうよ…だからスルーズはノインラターネンのメンバーではないわ」
「では、将来ノインラターネンを改組した際のメンバー、ということでしょうか」
「その通り、構想としてはイルミナお姉ちゃんの"ツヴェルフ・ウンディーネン"と同じ12名を定員とするつもりだけど、ついこの前までのノインラターネンのような、立ち上げ当初から長期間空席がある状態を避けるため、"次の段階"にはそれにふさわしい者が12名揃ってから移行するわ。
それまではスルーズと"ツェーン"・"ツヴェルフ"のいずれかは表向き、ノインラターネンより格下の侍女という扱いになってしまうけどね」
「そういうことなら、納得しました」
「名目上そういった扱いでも、わたしはエリスさまにさえ認めていただければそれだけで満足です…」
エリスを敬慕しているスルーズは、エリスに熱のこもった視線を向けた。
「うふふ…健気なスルーズ、とてもかわいいわ…」
エリスは微笑みながら、スルーズの両の頬に掌を当て、彼女の顔を自分の顔に近づける。
「ふぇっ…」
大好きなエリスの顔が至近距離に迫り、彼女の漆黒の瞳に視線が合ってしまったスルーズは、その漆黒に精神が吸い込まれる"心地よさ"を感じながら、瞼を開いたまま意識を失った。
「さあ、またあなたで遊んであげるわ…」
虚ろな存在と化しているスルーズの身体は、この日もエリスにたくさん玩ばれた。
翌日、ファニーに付き添われたグレーテルがエリスに"大切な話がある"と訴え、エリスは昨日の幹部会議と同じ場所に専属侍女4人とドライヴァイゼンの3人を集めた。
「昨日ここで、あの話がなくても申し上げるつもりでしたが、ちょうどよい機会です。
将来のジーベンヴァイゼンとなるため、ノインラターネンの職務を解いていただけますでしょうか」
「ファニーからあなたが何か思い悩んでいると聞いていたけど、このことだったのね…。
いろいろな思惑があるのだろうけど、余計な詮索はしない。
あなたの申し出、ありがたく受けるわ」
こうしてグレーテルはノインラターネンの"ジーベン"からジーベンヴァイゼンへの転身を目指すこととなり、後日ノインラターネン解任の正式な手続きがなされた。
これで、次の段階…仮称"ノインラターネン・プルス・ドライ"への移行にあたって補充すべき人員は3名となった。
「"プルス・ドライ"については、できれば何らかの形で飛行能力を持った者がいいです。
飛行ユニットによる補助も、わたくしのように能力がない者とアンネのようにある程度飛べる者ではだいぶ違うので…。
あとは、"ナハトヴァンドレリネン"のような諜報要員も欲しいですね…」
メイからの要望をもとに、まずは女帝リリスのエルステであるユリアネに相談。
「ヴァンピーリンで今のところ私から薦められる者はおりませんが、エミーリアのようなこともありますので、エリス様が希望する条件に合う者を仲介します」
「そうね…ヴァンピーリンなら、"将来"に備えてエミーリアのような内政向きの者も欲しいわ。
それと、ヴァンピーリン以外で、パンゲーアにいる有望な娘も紹介して…。
引き受けてくれるなら、私をぎゅってしていいから…」
ぎゅっ。
「それじゃあ、お願いね」
「ふぁぃ…えりすさま…」
ユリアネはしばらく表情を緩めたまま立ち尽くし、リリスの口づけでようやく我に返ったように見えたが、
「はぁ…エリス様は柔らかくてふわふわで…えへへ…」
まだ完全には正常な意識が戻っていなかったため、リリスは強めの魔力を籠めて再びユリアネの唇を奪った。
「そんなにエリスの抱き心地が堪らなかったの?」
「はい…ノクス様とイルミナ様の幼い頃も極上でしたが、エリス様はずっと小さな体のままで、すばらしいです…」
「エリスはその、味方をも魅了してしまう愛らしい容姿だけでなく、神から授かった能力も利用して次々と敵対勢力の主力を堕とし、自分の手駒にしている…。
帝国軍の主力はもちろんノクスが率いる"ヘーア"だけど、エリスと"デー・クラフト"も今やなくてはならない戦力…。
権力欲しさにエリスをノクスと争わせようとする輩は当然現れるだろうけど、デー・クラフトがそれほど大きくなっていない今のところは、メイやクロエがいるから心配なさそうね…」
「エリス様が帝位を継ぐ器でないと自認されていることは私もご本人から伺っておりますので、我らヴァンピーリン、エリス様の望まぬことは必ず阻止します」
「あなたとヴァンピーリンたちがエリスにとって"真の味方"でいてくれることはとてもうれしいわ」
エリスとメイはノクスとイルミナのもとも訪れ、同様に相談。
「エリスちゃんも"12人体制"にするのね…。
飛べる子は難しいけど、諜報要員は良さそうな子がいたら紹介するわ」
「私のところも、現有戦力でエリスに譲れる者はいないが、条件に合う有望な者がいたら紹介するし、諜報要員の育成なら喜んで協力するわ」
「ノクスお姉ちゃん、イルミナお姉ちゃん、ありがとうございます」
「大好きなエリスちゃんの喜ぶ顔が見たいから…」
「かわいい妹のためならば、これくらい当然よ…」
大好きな姉2人からの抱擁を受けてエリスは幸福感で満たされ、ノクスとイルミナもエリスの抱き心地に酔いしれた。
メイも姉のように慕っているユノと抱き合い、両者ともご満悦の表情。
1人だけ冷静だったフェブラが声をかけるまで、皇女たちとエルステの抱擁は続いていた。
これで第2部の2章は終わりです。
次から3章に入りますが、次回の"25話"は2章での追加キャラクタ情報のまとめで、本編はその次(26話)からとなる予定です。