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空のエリス  作者: 長部円
第2部 1章
45/98

5 三国、リューリク平原に集う

5


バグロヴァヤの帝都スタリーツァこそ手に入れられなかったが、周辺地域を掌握したウリン軍はようやく西進を再開。

バグロヴァヤ軍はリューリク平原で迎え撃つことにした。

ここで敗れて、その背後にある大都市クレーストグラードも失うと領土が分断されることにもなるため、バグロヴァヤ軍首脳は国家の存亡にもかかわる一戦として、現状のバグロヴァヤ軍における最強の布陣で臨むつもりだったが、途中で"なぜか"男性ばかりが体調を崩したため、軍首脳は男性をクレーストグラードに帰らせる決定を下し、女性のみで軍を編成し直してリューリク平原へ向かった。


テストゥド大陸最南端の町ズートリヒェス・ドライエクに滞在し、両軍の様子を見ていたエリスは頃合いを見て、専属侍女たちとともに空へ飛び立った。

もちろん、行き先はリューリク平原。


自分と専属侍女たちに認識阻害の魔法を施したエリスは、戦場からやや離れているが、リューリク平原全体を魔法の効果範囲に含められる地点で両軍を俯瞰する。

ウリン軍は男女がほぼ同数の構成。

一方のバグロヴァヤ軍は全員が女性で、人数だけであればバグロヴァヤ軍のほうが多い。

だが、ウリン軍が攻め込むと、加護(グナーデ)による強力な攻撃で次々とバグロヴァヤ軍の兵を倒していく。

「ファニー、頃合いね」

「はい、お願いします」

「クービッシャー・ラウム…ベグレンツト・シュティルシュタント」

エリスは"クービッシャー・ラウム"と"ベグレンツト・シュティルシュタント"、2つの時空魔象(ラウムツァイト)を発動。

その瞬間、ウリン軍もバグロヴァヤ軍も全員が活動を停止した。

「さあ、ファニー…再び、あの"惨劇(トラゲーディエ)"…いいえ、あの時以上の惨劇を」

「はい…」

エリスは自分と2人に"活動停止魔法(シュティルシュタント)"の無効化を付与してから、全てが静止した戦場の上空に到達。

ファニーが戦場に"泡の玉(ブラーゼ)"を仕掛けた後、3人がしばらく待つと、"ベグレンツト・シュティルシュタント"の効果が切れ、両軍が再び動き出す。

ファニーが仕掛けた大量のブラーゼも同時に戦場へ降り注いだ。


ウリン軍の女性戦闘員とバグロヴァヤ軍のほぼ全員が少しの間動きを止め、その隙にウリン軍の男性戦闘員は攻勢を強めたが、女性たちが再び動き出すと、ウリン軍の女性戦闘員は何の躊躇いもなく"味方"であるはずの男性戦闘員を襲い始め、バグロヴァヤ軍も敵側の突然の仲間割れに戸惑うことなく、ウリン軍の男性戦闘員を攻撃する。

ウリン軍の男性戦闘員だけが、突然の"裏切り"によって恐慌をきたし、次々と戦場に斃れていった。


かつてセントメアリでエリスたちが引き起こした"惨劇(トラゲーディエ)"は非戦闘員を含んでいたが、今回の対象は全て戦闘員なので、エリスたちの眼下にはより凄惨な光景が広がっていた。

男性戦闘員の全滅によって戦いは終わり、残った女性たちはしばらく両軍入り乱れてイチャイチャした後、それぞれの国に引き揚げていった。

打ち棄てられた男性戦闘員の屍はエリスたちが"ザントサック"などとして使うため、時空魔象(ラウムツァイト)を用いて回収した。


だが、"惨劇(トラゲーディエ)"はこれで終わらなかった。

バグロヴァヤ軍はウリン軍の再度の侵攻に備え、戦場近くの砦に"女性のみ"で数日滞在していたため、その間にザフィッシュマテリエの"症状"が寛解し、国内での混乱は起きなかったが、ウリン軍は撤退した町"キウン"でも女性戦闘員が男性を残らず手にかけ、その過程で大半の建物を破壊した。

ウリン軍はキウンを放棄し、暴走した女性戦闘員たちが強制的に隔離された上で加護(グナーデ)によって全員の症状が寛解されるまで相当の期間を要した。


リューリク平原から撤退し、さらにキウンも放棄して東に去っていくウリン軍の様子を観察していたメイは、キウンで"何か"を発見したようで、エリスに単独行動を願い出た。

「エリ…ウリン軍が撤退した所で"宝探し"をしてきます」

「わかったわ…メイが持って帰ってくる"お宝"…私も楽しみよ」

メイが"お宝"を見つけた時、エリスもその"お宝"と、邪な笑みを浮かべたメイを見ていたから、エリスはメイに何も尋ねず、快く送り出した。


バグロヴァヤは思わぬ"同士討ち"による相手の自滅でリューリク平原での戦いを比較的軽微な被害に止め、さらにリューリク平原で半壊したウリン軍の侵攻が止まったことで立ち直り、その後、さすがに失地回復とまではいかないが、ウリンとの力関係はなんとか均衡を保っている。

エリスは早速リューリク平原での"戦果"をノクスに報告し、それを待っていたノクスはついにヘーアへ海越えを命じた。


「これで当分の間、バグロヴァヤの相手はノクスお姉ちゃんにお任せですね…」

「ええ…ヘーアが"目標"に達するまでの間、ウリンの相手は頼むわね…エリス」

「はい、ノクスお姉ちゃん」

ヘーアがテストゥドに上陸してバグロヴァヤへの侵攻を始めたら、ウリン軍がそれに乗じることも当然想定しており、エリスはメイやドライヴァイゼンたちとともにウリン軍を足止めさせるための策をすでに用意していたが、さらに良いものがないか検討している。

「うふふ…愛しいエリス…」

「ノクスお姉ちゃん…すき」

姿が愛らしいだけでなく、頼もしい存在にもなった末妹をノクスは熱っぽい視線で見つめ、大好きな長姉からそんな目で見られたエリスはぎゅっと抱きつき、上目遣いで唇を求める。

エリスの求めに応じてノクスが唇を重ねると、どこで見ていたのか、

「お姉様とエリスちゃん、ずるいです…わたしもエリスちゃんとちゅーしたい」

と言ってすぐにイルミナが乱入しようとしたため、

「イルミナは私とするですの…」

エクレアが現れてイルミナの唇を奪ったが、最終的には全員が自分以外の3人とキスをして満ち足りた表情になった。

もっと文才があれば、関ヶ原の合戦と赤壁の戦いを足して2で割ったような、臨場感溢れる描写ができたのですが、残念ながらそれはかなわず、戦いはあっさり終わりました。

<2022/ 5/ 1 3:35修正>不要な改行を削除しました

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