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空のエリス  作者: 長部円
第2部 1章
41/98

1 第3皇女と15人の侍女

今回から第2部「テストゥド大陸編」ですが、後書きに念のための「おことわり」を書いておきます。

1


アヴァロニア大陸のほぼ中央に位置する、かつてアヴァロン王国の都だった大都市セントメアリ。

その上空にある、ヴェルトヴァイト帝国第3皇女エリスの居城・ヒンメルスパラストの一室に、エリスと、彼女に仕える侍女のうち、特別な肩書を持った者たちが集まった。

エリスのそばには専属侍女"フィーア・テュヒティヒステン"のメイ、クロエ、アンネ、ファニー。

ファニーの隣に"ドライヴァイゼン"のマグノーリエ、バルザミーネ、クラウディア。

アンネの隣には幹部集団"ノインラターネン"の"7人"。

クラウディアの隣に"セントメアリ防衛軍総司令代理"ラヘルが座った。


ノインラターネンはセントメアリ攻略を主目的にしていた幹部集団"アハトシェッツェ"を改組したもので、フィーア・テュヒティヒステンやドライヴァイゼンとの兼務を解消。

"フィーア"(4)のレニ、"ジーベン"(7)のグレーテル、"アハト"(8)のカリナは識別番号を含めてアハトシェッツェと変わらず、新たに"アインス"(1)としてイーリス、"ツヴァイ"(2)としてペペ、"ドライ"(3)としてリューディア、"ノイン"(9)としてベルタを加え、アハトシェッツェでクラウディアが兼務していた"フュンフ"(5)とファニーが兼務していた"ゼクス"(6)は現状、適任者がいないため"空席"にしている。

なお、ノインラターネンのメンバーは形式上、フィーア・テュヒティヒステンの配下扱いになり、イーリスとペペ、それに空席のフュンフはメイの配下、レニと空席のゼクスはクロエの配下、カリナとベルタはアンネの配下、リューディアとグレーテルはファニーの配下とされた。


新メンバーにノインラターネンについて伝えたところ、イーリスは

「メイ様の"アインス"を継げること、誠に光栄の極みです…」

と感激し、ペペは

「"ツヴァイ"は好きな番号なので、とてもうれしいです…」

と素直に喜んだ。

「カリナお姉さまと一緒に、アンネお姉さま配下のノインラターネンとして、より一層忠勤に励みます」

ベルタはそう言って愛らしく微笑み、

「リューディアもついに、ベルタに教えてもらった魔法で、エリさまとメイさまへの恩返しができるのですね…。

 エリさまとメイさまの敵はすべて滅ぼしてみせます…うふ…ふへへ…」

リューディアはそう言って、邪な笑みを見せた。


ラヘルとリューディアの姉妹については、ベルタが魔法を教える以外にも、ただの侍女ではなく"戦力"として使えるかどうかの見極めを行っていたが、ラヘルは防衛戦の指揮官に向いており、リューディアはベルタの影響を強く受けて、ベルタと同じ"単独や少人数での運用"に向いていた。

イルミナが従えている"ツヴェルフ・ウンディーネン"は、部隊の指揮官としての適性にかかわらず、1人で戦力になる者をメンバーとしている。

エリスもそれに倣い、リューディアはノインラターネンに加入させたが、ラヘルは選ばなかった。

その代わり、ラヘルを、エリスが不在の時のみ権限を行使できる"セントメアリ防衛軍総司令代理"に任命。

「わたしが…エリス様の代理…。

 エリス様の足元にも及ばない非才の身ですが、エリス様が不在の際は、エリス様が帰ってくるこのセントメアリを、わたしの全力でもって防衛します」

ラヘルは自分にエリスの代理が務まるかどうかという不安を少なからず抱えつつ、総司令代理を引き受けることになった。

なお、"セントメアリ防衛軍総司令"はエリスが持つ肩書の1つだが、平時の指揮系統ではプレジデンティンのヘレーネが実質的な総司令となっており、"セントメアリ防衛軍総司令"の出番は敵襲や災害発生などの非常時に限られる。


----


エリスが15人を集めた理由は、テストゥド大陸における情勢と、デー・クラフトが取るべき対応の確認だった。

大陸の西部を占めるバグロヴァヤ帝国(イムペーリヤ)が東の勢力"ウリン"から侵略を受け、ウリン軍は帝都に接近。

すでに皇帝やその一族は帝都から脱出して西方に逃れたという。

ウリンは戦闘要員の頭数こそ多くないが、ほぼ全員が"加護(グナーデ)"持ちらしい。

これらの情報は先行してバグロヴァヤに潜入しているヘーアの諜報要員"ナハトヴァンドレリネン"からもたらされた。


「イルミナお姉ちゃんが"兵器"にしたヴィーナはバグロヴァヤにいた当時、ウリンなどという国は聞いたことがなく、そのこともナハトヴァンドレリネンが調べたら、元は別の国名だったけど、クーデターによって国を乗っ取った者が現在の"ウリン"という名に変えたそうよ。

 その者によってウリンは勢力を急拡大させて周囲の国を併合し、バグロヴァヤをも飲み込もうとしている。

 本来は人間(アントロポス)同士の争いなどに首を突っ込む義理はないのだけど、このままウリンにバグロヴァヤを滅ぼされると、私たちのテストゥド大陸征服にとって都合が悪い。

 かと言って今、バグロヴァヤと同盟を結ぶつもりもないわ。

 あくまで我らヴェルトヴァイト帝国はノクスお姉ちゃんのヘーア、イルミナお姉ちゃんのマリーネと私のデー・クラフトだけでバグロヴァヤもウリンも征服する。

 この前提で、私たちデー・クラフトがどう動くかだけど、何かいい作戦を考えている者はいるかしら?」


3人ほど挙手して発言したが、いずれもエリスがすでに考えている作戦と比べて著しく劣っていた。

「エリス様」

4人目の提案者はドライヴァイゼンのバルザミーネ。

「ミーネ、発言を許可するわ」

「ありがとうございます。

 私は、最適なタイミングを選んで、ファニーさんにバグロヴァヤとウリンの戦場を"第2のセントメアリ"にしていただきたいと考えています。

 エリス様、どうでしょうか」


少しの間、静寂が場を支配した後、邪な笑みを浮かべたエリスが言葉を(つむ)ぐ。

「なかなかいい案ね。

 私の腹案より優れているわ。

 他になければ、ミーネの案で進めるわよ」

"5人目"は現れず、バルザミーネの案で作戦を立てることにした。

まず作戦の要となるファニーを中心とした打ち合わせを行って"本番"に必要なものを揃えていく一方、"場"を整えるための下準備も、ヘーアやマリーネに協力を仰ぎながら進めていった。

<おことわり>

本作品は異世界を舞台とした完全なフィクションであるとともに、本作品に登場する国家"バグロヴァヤ帝国"について、現実世界の特定国家・特定地域はモデルにしておらず、現実世界の特定国家・特定地域を応援したり貶めたりする意図は一切ありません。

なお、バグロヴァヤ帝国は現実世界の2022年に起きた"とある出来事"より早い、2021年11月28日に投稿した第1部32話が初出です。

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