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空のエリス  作者: 長部円
第1部 3章
39/98

39 フリーゲンデ・プリンツェシネン

39


エリスたちによってヒンメルスパラストにお持ち帰りされたペペは、エリスから専属侍女や三賢女(ドライヴァイゼン)を紹介されると、帝国史上初の元人間(アントロポス)のエルステであるメイに興味を持ち、本人と話すうちに"メイ様"と呼んで慕うようになった。

また、メイに対する敬慕ほどではないが、メイ以外の専属侍女たちにも敬意と"好意"を抱き、現実では実行しないものの、自分の部屋でたまにエリスや専属侍女たちに"歪んだ愛情"をぶつける妄想に耽っていた。


そんなペペを人間(アントロポス)のままにしておくはずがなく、エリスは準備が整うとペペをディアボロスにした。

ディアボロスになったペペはメイから専用武装"カメリエンダーメ"を与えられると、早速飛行機能の習熟訓練を開始。

エリスたちが巡視に行っている日は留守番のファニーが、巡視が休みの日はメイやイーリスがそばにいて訓練を手伝い、ペペが問題なく飛べるようになる頃には、ペペの"妄想の相手"にイーリスが増えていた。


次の巡視にはペペが初めて加わり、彼女の案内で、彼女がエリスたちに堕とされるまで所属していた反政府勢力"アヴァロニア・リベレーション・フロント"(ALF)の拠点の1つを襲撃。

青紫色だった瞳は暗紫紅色に変貌し、邪な笑みを浮かべながらかつての同志を斬り捨てていくペペにALFの構成員は戦慄し、ほとんど何もできないまま全滅した。


最後の拠点でも首領のもとにエリスたちが辿り着くまで、ALF構成員たちの抵抗は全く意味をなさなかった。

エリスたちに抜け道をすべて潰されたALFの首領アレックス・バーと取り巻きたちは地下にある拠点の一室に追い詰められ、メイの"ケルパーブレヒャー・シュロットフリンテン"でアレックス以外の人間(アントロポス)はこの世から抹消された。

完全に四面楚歌の状況に陥ったアレックスは、これまで自らを"アヴァロン王家の縁戚"と称してALFを率いてきたが、最後の王トマスから数えて4代前の王の妃が一族から出たというだけで血縁はない。

「本当にバンベリ家の血縁なら、ゴーサ家の末裔であるわたくしが滅ぼすべきだけど、お前如きわたくしが手を下すまでもない…。

 ペペ…やりなさい」

「ふぁい、メイ様…」

メイからの命令を受けて少しの間だけ恍惚の表情をしてから、ペペは躊躇なくアレックスに襲いかかる。

「ツヴァイタイル」

アレックスはペペの"加護(グナーデ)"による一撃で真っ二つにされ、反政府勢力ALFもこの時をもって壊滅した。


----


アヴァロニア大陸最北端の岬を含む地域を最後に、エリスたちによるアヴァロニア大陸巡視は完了。

人間(アントロポス)による反政府勢力はことごとくエリスたちに潰され、最大勢力のALFも壊滅したことで、ディアボロスを嫌う人間(アントロポス)たちは大きな衝撃を受けた。

以後、仲良しの数名程度で"レジスタンス"を気取る者たちはいても、それ以上の人数による組織ができることはなかった。


エリスがパンゲーアを訪れ、巡視の完了をリリスに報告すると、

「エリスが最後に巡視を行ったアヴァロニア大陸最北端の岬、人間(アントロポス)どもは"エッジ岬"と呼んでいたらしいけど、エリスが好きな名前をつけていいわ」

と言われ、専属侍女たちと相談の上、メイが提案した"アエイオウ岬"に決めた。

メイ曰く、"アヴァロニアは帝国によって統一されている"という語句の略らしい。

エリスはメイを伴って相談の結果をリリスに伝え、それを受けてリリスはメイを大いに褒めた。

「メイは本当に聡明な子ね…。

 もし、この子がアヴァロンの女王か、王を補佐する立場にいたら、私の代でのアヴァロニア征服は叶わなかったわ…。

 これからも、エルステとしてエリスをしっかりと支えてあげてね」

「はい…」

「私からも…メイ、大好きよ…ずっとそばで…」

エリスがメイをぎゅっと抱きしめて、言葉の途中で我慢できずに唇を重ねると、メイは驚きやら嬉しさやらで頭の中が混乱し、エリスが唇を離しても、だらしない表情で

「えへへ…エリ…しゅき…」

などといった言葉を漏らして、正気を取り戻すまでに少なくない時間を要した。


----


エリスたちが巡視を行ったことで、ヴェルトヴァイト帝国によるアヴァロニア大陸の支配は強化されたが、次の目標であるテストゥド大陸への進出に向けては、なお相当の期間をかけて準備をする必要があった。

ただ、エリスが率いる"デー・クラフト"は今のところ、ドライヴァイゼンをはじめとする裏方が動いていて、エリスたちが関与することはほとんどない。

そのため、エリスは次の動きについてリリスに相談し、"巡視"と少し違う形でアヴァロニア大陸の空を飛び回ることにした。


"巡視"の際は認識阻害を施した上で、各地に降り立って地上の様子を見回ったが、今回はあえてエリスとわかる姿を見せたまま空を飛び、よほどのことがない限り地上には降りない。

人間(アントロポス)たちが何か企んでいたとしても、空からエリスが見ているために事を起こせない、などといった人間(アントロポス)対策を一番の目的としているが、侍女たちと空を飛びながらイチャイチャしたい、というエリスの想いも籠められていた。


エリスは右側にメイとファニー、左側にアンネとイーリスを従え、ふわふわの黒髪にクロエを潜ませ、ヒンメルスパラストから飛び立つ。

ヒンメルスパラストから一時的に専属侍女がいなくなっても、ペペやカリナ、ベルタといった、"専属侍女に次ぐ"侍女たちを残してきているため、エリスは心配していなかった。

メイと出会った場所である半分沈んだ塔"エルステ・パゴーデ"を左手に見ながら、エリスたちは南に進路を取り、姿を隠しているクロエ以外の5人がいろいろな組み合わせでくっついたり離れたりしながら飛んでいく。

ヒンメルスパラストの下にあるセントメアリだけでなく、少し離れたツェントラルシュタットでも、住民たちが"空飛ぶお姫様"と侍女たちのイチャイチャを見上げていた。

サブタイトルをドイツ語で「空飛ぶお姫様"たち"」にしている理由は、もちろん"お姫様"がエリスとメイを指すからです。

なお、今回の39話で3章は終わり、そして「第一部 完」(アヴァロニア大陸編完結)とします。

1章・2章と同様、次の章の前に3章での新規登場キャラのまとめを挿みますので、第2部の1話目は(2022年)3月上旬投稿予定です。

<2022/ 2/11修正>グナーテ→グナーデ

<2023/10/19修正>最終行を少し加筆しました

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