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空のエリス  作者: 長部円
第1部 3章
37/98

37 ミッテルアヴァロニア巡視

年末年始の休みと土日祝日の3連休を使いながら短文で誠に恐縮ですが、2022年の『空のエリス』初投稿です。

37


ロアベーア島から帰ってきて数日後、エリスはアヴァロニア大陸中部・ミッテルアヴァロニア州の巡視を開始した。

ミッテルアヴァロニアはエリスの長姉・ノクスが"ヘーア"を率いるようになってから征服した地で、帝国領としての歴史は比較的浅い。

州の南側は征服にあたってアンデレス・ウーファ州と同様に人間(アントロポス)を完全に駆逐し、今はディアボロスだけが住んでいるため、アヴァロン王国時代からある町にはディアボロスが使い方を知らなかったり、知っていても使う必要がなくて無用の長物と化した施設も少なからず残っているほか、町や村全体が棄てられて"ガイスターシュタット"(ゴーストタウン)になった例もある。

エリスたちの巡視には、そういったガイスターシュタットに不審者がいないかの"見回り"も含まれていた。


エリスたちはミッテルアヴァロニアの巡視を開始して1か月以内に、早くも2か所のガイスターシュタットで不審者と"遭遇"。

正確には、不審者側からすれば遭遇だが、エリス側は予め不審者がいるガイスターシュタットを把握しており、"見回り"の当日に状況が変わっていなければ、不審者をどう扱うかはエリスの自由にしていいとリリスから一任されている。

不審者の集団はガイスターシュタットをアジトにして違法行為を行っていたようだが、それだけなら帝国の法律上、長期間監獄に収容されるだけの罰しか科されない。

しかし、集団の構成員は見た目だけでエリスたちを侮り、得物を持って襲いかかってきた。

これが"皇族への反逆罪"の成立要件の1つ"皇族に対して危害を加える行為"とみなされ、当該行為について科される法定刑は死刑しかないため、その場でアンネとイーリスが全員の"処刑"を執り行った。

人間(アントロポス)だった頃は武器を持って戦うことなどまず無理で、ディアボロスになってからは元同族の人間(アントロポス)ばかりを屠ってきたため、イーリスにとってディアボロスとの実戦は初めてだったが、アンネとともに無傷で"処刑"を完了した。


3件目の不審者は違法薬物を扱っている輩だったため、薬物を得意分野とするファニーが留守番をクロエと交替し、"当日"の"見回り"に同行。

「うふふ…いけないお薬で荒稼ぎをしようだなんて…そのような輩は、わたしが特製のお薬で始末してあげる…」

ファニーの"お薬"を浴びた輩の体はすぐに崩れ、ディアボロスとしての原形をとどめる者は1人もいなかった。

「これだけあれば、ユノ姉様が欲しいと言っていたものを創るには十分ね…フフフ…」

メイは"ディアボロスだったもの"の塊を見て不敵な笑みを浮かべ、塊を別のものに作り変えていた。


ミッテルアヴァロニアのほぼ中央に位置する州都・ツェントラルシュタットより北はエリスの進言もあって、人間(アントロポス)が駆逐されず、ディアボロスと雑居しているほか、法規制も南側に比べて緩やかになっている。

エリスがディアボロスとある程度の差をつけながらも、人口比ではほぼ同数である人間(アントロポス)を帝国の国民として扱うように気を配っていることは、洗脳した人間(アントロポス)をはじめとして様々な手段で広められ、州北部ではディアボロスだけでなく、洗脳されていない人間(アントロポス)も少しずつエリスを慕う者が増えている。

"取り締まり"の際の扱いも、圧倒的に多い人間(アントロポス)とディアボロスで、法で定められた最低限の範囲以外に差をつけず、両者とも無法者は容赦なく処断した。


なお、セントメアリに比較的近い場所の巡視にはカリナ、ベルタのヴァルプルギス姉妹も同行。

「えへへ…ようやく、アンネお姉さまとカリナお姉さまと一緒に、エリス様のお側で戦えるのですね…うれしいです…」

初めて巡視に参加する日、ベルタはそう言って、とびっきりの笑顔で喜んだ。

カリナは"リージゲ・クレフテ"、ベルタは"ドゥンケルヴォルケ"という専用武装を予めメイから与えられており、"荒事"の際には姉妹によって迅速な敵の殲滅がなされていた。

大好きな姉についていって、笑顔で不審者どもを滅ぼしていくベルタに惹かれたイーリスは次回以降、積極的にベルタと話すようになり、状況に応じてアンネとともに、戦闘経験の浅いベルタをサポート。

アンネと一緒に自分をサポートしてくれるイーリスへの好意が日に日に高まっていたベルタは、ある日のガイスターシュタットにおける不審者どもとの戦闘中、油断して敵の攻撃を受けそうになっていたところを、間一髪でイーリスに助けられた際に"限界"を超えた。

「あの…先ほどはありがとうございました…。

 それで、これから…大好きなあなたのことを、イーリスお姉さまと呼んでもいいでしょうか」

"事後処理"の最中、ベルタはイーリスに助けてもらったことへの感謝とともに想いを告げ、その容姿故に、妹扱いされることの多かったイーリスは喜んでその申し出を受け容れた。

ぎゅっと抱き合って好意を伝え合う新たな疑似姉妹を、エリスとカリナは優しい眼差しで見守っていた。


ミッテルアヴァロニアの巡視が一通り終わり、次のアヴァロニア大陸北部・ヒンターアヴァロニア州の巡視は数か月後。

ベルタはヒンターアヴァロニアの巡視への同行を許可されなかったため、エリスたちが次の巡視に行くまでの間、2人の疑似姉(アンネとイーリス)2人の元王女(ラヘルとリューディア)とともにいろいろなことをして遊んだ。

ディアボロスになるまで人並みの生活ができなかったイーリスは、ベルタくらいの年齢の頃に同年代の子たちと遊ぶことができなかったため、年甲斐がないと思いながらも年下の女の子たちと時間が許す限り遊び、イーリスがベルタたちと楽しそうに遊ぶ様子を見かけたヘレーネは、自室に戻ってから、静かに嬉し涙を流した。

<2022/ 1/29修正>「2人の疑似姉」、「2人の元王女」に設定しているルビを修正しました

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