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空のエリス  作者: 長部円
第1部 3章
31/98

31 ヘーアのセントメアリ到達と包囲

31


アヴァロニア大陸のほぼ中央に位置する大都市セントメアリ。

その上空に浮かぶ宮殿"ヒンメルスパラスト"の最高所に、数人の女の子と彼女たちを見守る長身の侍女がいた。

ヴェルトヴァイト帝国の女帝リリスの第3皇女エリスと専属侍女"フィーア・テュヒティヒステン"であるメイ、クロエ、アンネ、ファニー、それにかつてこの宮殿の主だったアヴァロン王国の"元王女"ラヘルとリューディアの計7名。

真ん中にエリス、右隣はメイ、その隣はリューディアで右端がファニー。

エリスの左隣はラヘル、その隣にアンネがいて、左端が唯一小柄でないクロエ。


彼女たちの眼下に広がるセントメアリの町には、母親と手をつなぎながら歩く幼女や杖を突きながらゆっくり進む老女など、幅広い年齢層の人間(アントロポス)がいる。

だが、男性は1人もいない。

セントメアリがアヴァロンの王都だった時は男のほうが多く、その時にエリスが上空から町を眺めていたとしても、町を行き交う人間(アントロポス)が塵芥のようにしか認識できなかっただろう。

男を排除したセントメアリの人間(アントロポス)の女性はザフィッシュマテリエの影響でディアボロスにも敵意を持たないため、エリスも彼女たちとは普通に接しているが、以前から元人間(アントロポス)のメイを"エルステ"、ファニーを"フィアーテ"にして、何人かは人間(アントロポス)のまま自分の"兵器"に仕立ててじゃれあい、元王女2人もディアボロスにして侍らすなど、エリスは人間(アントロポス)の女性を比較的好ましく思っている。

すでにエリスの姉であるノクスとイルミナが人間(アントロポス)の女性を洗脳して自分の"兵器"にしたり、ディアボロス化させた上で専属侍女に取り立てたりするなど"人材"として有効利用しており、エリスは姉2人を見習いつつ、2人よりも積極的に人間(アントロポス)の女性たちと関係を深めた。


エリスは人間(アントロポス)たちが"魔王"と認識している女帝リリスの娘という素性を隠しながら、ときどきメイと一緒にセントメアリの町をデートという名目で散策し、実際にデートを楽しみつつ、今後も続く人間(アントロポス)と帝国の戦いにおいて人間(アントロポス)側の戦力になりそうな女性をチェックしていた。

すでに"自分のもの"として親衛隊"シュヴェンツェ"に加えた者もいるが、チェック済みでまだ手を付けていない者は、ほとんどが姉2人や彼女たちの専属侍女、ゲネラールやアトミラールへ"兵器"の"素体"として提供するつもりでいる。

地上では帝国の第3皇女らしい働きをしているエリスだが、現状"身内"しかいないヒンメルスパラストでは今のように、かわいいロリっ子たちに挟まれて"空に浮かぶ楽園"を満喫していた。


"天上に一番近い場所"での休憩を終えたエリスは、かつてアヴァロンの国王が使っていたものではなく、新たに虚無魔象とメイのトイフェライで造り直した執務室に入ると、シュヴェンツェの合法ロリっ子たちと戯れながら、"ヘーア"と人間(アントロポス)たちの戦況やセアラからの政策に関する承認依頼書を確認。

セントメアリの統治は基本的に元第1王女のセアラへ委任しているが、"本来は女王メアリ5世として王国を統べる権利がある"メイの承認を必要とするようにしたものもあり、それを実質的な支配者であるエリスがメイとともに査閲している。

戦況は、ヘーアに必死の抵抗をしていたカーボニア王国が昨日王都を失陥し、数日のうちに帝国とセントメアリの間に残る人間(アントロポス)たちの支配領域は消滅してヘーアがセントメアリに到達する見込みだが、北からアヴァロン王国の軍勢も迫っているとのこと。

「今日と明日はこの子たちとたくさん遊んで、明後日から両軍を迎える体制にするわよ」

「承知しました、エリ…」


----


ヘーアはアヴァロン王国軍よりも先にセントメアリ到達を果たし、門がない北以外の三方を包囲した。

1日遅れてセントメアリの北側に到着したアヴァロン王国軍だが、全員が男性であるため"結界"を構成する柱の1つ"フィアーテ・ゾイレ"より内側に入れず、城内にいる警備兵と接触することができない。

アヴァロン軍が北側で城壁や帝国軍とにらみ合うことしかできない一方、ヘーアはゲネラールの1人・イングリトが正門に近づき、警備兵に"無血開城"を求めたが、

「セントメアリは女性であれば、種族の違いだけで入城をお断りすることはありません。

 ただ、武装した"魔族"の集団をそのまま城内に入れるわけにはいきません。

 どうしてもと言うなら、魔王軍からセントメアリを護るため、我らは全力をもって迎え撃ちます」

という趣旨の回答で指揮官クラスの女性は開城を拒否した。


その翌日、今度はゲネラールのツェツィリアが単独で、最低限の護身用武器だけ携えて東門から入城許可を求めると、門番はツェツィリアを(いぶか)しむことなく、通行を許可した。

ツェツィリアの最大の目的はセントメアリの中に入れるかどうかと無事に外へ出られるかを確認することだけで、それ以上は考えていなかったため、適当にセントメアリの城内を見て回ってから、日が沈む前に正門から外へ出た。

ツェツィリアの"成功"を受けて、次の日以降も非武装の帝国兵やゲネラールが数人ずつ、包囲戦の息抜きを兼ねて東門からセントメアリに入り、帰りは正門から出ることを繰り返した。


そして、ヘーアがセントメアリに到達して三方を包囲し始めてから相当の日数が経過したある日、ゲネラールのダクマー率いる部隊が西側から、ツェツィリア率いる部隊が東側から同時にアヴァロン軍を襲撃した。

数でも士気でも劣勢だったアヴァロン軍はたちまち潰走したが、帝国軍はアヴァロン軍の兵を執拗に追ったため、アヴァロン軍で生き延びた人数は10分の1にも満たなかった。

ヘーアは数日かけてアヴァロン軍がセントメアリの周囲から完全にいなくなったことを確認すると、包囲を解き、セントメアリの南に入植地として造成した町"ツェントラルシュタット"へ向けてゆっくりと撤退していった。


こうして、セントメアリに"平穏"が戻ってきた。

食糧や生活必需品が不足するかもしれないといった懸念も、"内乱"の発生中と帝国・アヴァロン王国両軍による包囲中は途絶えていたアヴァロニア大陸北部との物流が復活したことで、長期の籠城戦に備えた蓄えが尽きる前に解消された。

政府・軍レベルでは様々な要因でセントメアリに接触できていないアヴァロン王国だが、民間レベルでは"ある1点"…セントメアリが男の入城を拒み続けていることを除いてほぼ元通りの交流がなされている。

たまにセントメアリで魔女っ子や子どもの吸血鬼を見かけたという者がいるものの、"未成年"であればその類の"仮装"は非常事態宣言や戒厳令でも発令されていない限り違法ではなく、"本物"かどうかの確認もされてこなかった。

アンネとベルタのデートも、魔女っ子姿のエリスとメイの"視察"も誰も咎めず、むしろ"ロリかわいい"ともて囃された。


----


セントメアリが平穏を取り戻してから10日ほど経ったある日の夜、エリスは3人の小柄な"元人間(アントロポス)"の子たちとイチャイチャしていた。

普段はポニーテールにしている白くてきれいな長い髪を下ろしたメイはとても美しく、エリスは何度でも見惚れてしまう。

「エリ…」

名前を呼ばれて、エリスが引き寄せられるようにメイの唇に自分の唇を重ねると、エリスの頭の中は幸せで満たされていく。

「エリス様…」

珊瑚色(コラレンロート)の瞳でずっとエリスを見つめていたラヘルは、エリスがメイとのキスを終えた瞬間を見計らってエリスに抱きつき、唇を奪った。

エリスは積極的なラヘルとのキスの心地よさにしばらく身を委ね、メイはリューディアに求められて"ちゅー"をした。

元第3王女のリディアも次姉のラヘル同様、エリスによってディアボロスの"リューディア"となっており、青かった瞳は山吹色(ゴルトゲルプ)に変わっている。


満足したラヘルがエリスから離れると、待っていたリューディアがエリスのもとに寄ってきた。

「エリさま…」

エリスは上目遣いで見つめてくるリューディアをぎゅっと抱きしめると、一切加減せずに大人のキスをした。

キスが終わった後のリューディアは理性を失っており、姉に大人のキスを迫っていたが、やがて眠りについた。


エリスは3人とキスして抱き合ったことで幸せな気持ちになったが、それ以上のことをする気はなかった。

女帝リリスやエクレアが意図的にそう仕向けたこともあり、そういった本を目にしても、エリスは自分がそういう欲望に溺れようとはしなかった。

だが、女帝の目的のために、人間(アントロポス)を堕とす手段として必要になることもあったり、自分にそういう欲望が向けられることもあり得るため、知識としてそういった本に目を通すことはあった。

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