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空のエリス  作者: 長部円
第1部 1章
13/98

13 黄髪番番と"デー・クラフト"

いただいた感想の中で要望のあった"キャラと用語の解説"について、

●キャラクタはある程度集まった段階(エリスが"フィアーテ"を手に入れたあたりを想定)で紹介ページを作る予定です。

●用語は都度前書きや後書きに補足説明として記載しますが、まだ補足説明がなく、解説が必要な用語がありましたら、感想にてリクエストいただきますようお願いします。

13


夕食後、リリスからの指示を受けた"3人目のドライヴァイゼン"がエリスの部屋を訪ねてきた。

「クラウディア、遅い時間にもかかわらずよく来てくれたわ。

 もう察しているとは思うけど、私がドライヴァイゼンに選んだ3人のうち、最後の3人目(ドリッテ)があなたよ」

「はい…私がエリス様のお部屋に呼ばれる用件と言えばそれしかないとは思っていましたが、エリス様から直接そのお言葉をいただけて、とてもうれしいです…」

そう言葉を返し微笑んだクラウディアの顔に目立つ皺は1つもないが、黄色い髪が彼女の生きてきた時の長さを表している。


「私と同年代や少し上の世代ならメイたちフィーア・テュヒティヒステンがいるわ。

 それより上の世代は、皇帝である母様の配下から比較的若手の部類に入るマグノーリエを、イルミナお姉ちゃんの配下から中堅どころのバルザミーネを選んだ。

 私がクラウディアにドライヴァイゼンとして求めているものは、母様やお姉ちゃんたちの配下ではない立場からパンゲーアの中、帝都、そして帝国を見てきて、パンゲーアの中で長年働いてきて得た知識と経験よ」

「それらすべて、必要とあらばエリス様に…惜しまず提供いたします」

「あと…あなたがずっと私のドライヴァイゼンでいてくれるよう、あなたの身体を少し変えたいのだけど、いいかしら?

 もちろん、それは正式にドライヴァイゼンに任命する日になってからで、その黄色い髪だけは残すけど、他は私やメイと同じくらい小さくなるの…。

 多少不便になるかもしれないけど、その代わり"寿命"の減り方はかなり緩やかになるわ」

「エリス様にずっとお仕えできるなら、見た目がエリス様好みの小柄でかわいい幼女になっても構いませんし、それによってさらに長く生きられるのであれば、願ってもないことです…」

それからも"祖母と孫娘"のような2人の会話はしばらく続いた。


----


数日後、リリスの執務室にエリスとその専属侍女たち、それにマグノーリエ、バルザミーネ、クラウディアが集まった。

「クラウディア…かわいい…」

リリスはエリスから話を聞いていたものの、実際に髪以外は"若返った"クラウディアが執務室に入ってくると、彼女の姿を見て思わずそう(つぶや)いてしまった。


リリスの前でエリスは3人と唇を重ね、正式にマグノーリエ、バルザミーネ、クラウディアはドライヴァイゼンとなった。

「リエ、ミーネ、ディア、これから末永く、私だけでなく、母様が治めるこの国のために、よろしく頼むわね」

「はい…」

「エリスったら、さっそくドライヴァイゼンたちを愛称で呼ぶなんて、かわいい…」

「今いる専属侍女たちは皆短い名前だからそのままでよかったのですが、ドライヴァイゼンたちは名前が少し長いですし、私の配下となったのであれば、少しくらい私から親し気に呼んだほうがいいと思ったので…」

「当の本人たちは、エリスからそんな風に呼んでもらったことがうれしすぎたみたいよ」

リリスに言われてエリスが3人を見ると、3人とも床にぺたんと座り込んで、顔を赤くして表情を緩めたまま動かない。

幸い、強制的に目覚めさせる前に我に返った3人を従えて、エリスはリリスの執務室を出た。


エリスたちは、エリスの部屋の近くに用意された、"D-Kraft"と記されたプレートが掲げられている部屋に入る。

「"ルフトヴァッフェ"ではないのですね」

「ノクスお姉ちゃんの"ヘーア"が(ラント)、イルミナお姉ちゃんの"マリーネ"が(メーア)を担当していて、私の軍の担当は(ルフト)になるけど、それは実際に動き出すまでは秘匿すべきと言われているから、仮称として"デー・クラフト"を掲げているのよ。

 でも、母様からは私の軍の正式名称を"ルフトヴァッフェ"にするつもりはないと聞いているし、私も同じ考えよ」

バルザミーネの素朴な疑問に、エリスは"身内"にしか話せない事情を明かす。

「わたくしは、エリのために"ふわふわ軍(フラウシゲ・クラフト)"という仮称を提案したのですが…」

「それは…確かにエリス様の長い黒髪はふわふわしていて思わずもふもふと触ってみたくなってしまいますが、そんな名称にしたら…あぁぁ…がまんできないれす…えりすさまぁ…もふもふしていいれすかぁ…」

「いいわよ、ミーネ…リエもディアもいらっしゃい。

 メイ…こうなるから私は却下したのよ」

主である少女のふわふわした黒髪を恍惚とした表情で愛でる"三賢女(ドライヴァイゼン)"。

エリスはそんな、堕ちた大人たちを見下しながらメイに苦言を呈した。


3人が正気に戻ってから、エリスたち7人は"デー・クラフト"の当面の活動方針について、昼食を挟み、夕食の時間になるまで話し合った。


----


夕食後は、どうしてもその日のうちに決めておきたいことがない限りは軍に関わることはせず、今日から"エリス配下の軍事専門の侍女"となったマグノーリエ、バルザミーネ、クラウディアは、侍女たちの部屋が並ぶ区域の中で空き部屋になっていた3人部屋に入居した。

といっても、必要なものは私物を含めてすでに朝の"儀式"を行うまでに搬入されていたので、すぐにベッドに倒れこんで眠ることもできる状態になっていた。


「クラウディアさんとまた"同じ職場"になるとは思いませんでしたし、こんなかわいらしい姿になっているなんて…」

「同感です…あの…クラウディアさん…ぎゅってしていいですか?」

「いいですよ…私も、陛下やイルミナ様の配下に選ばれるほど優秀なあなたたちと、エリス様の下で一緒に働くことになるとは思わなかったわ…」

マグノーリエとバルザミーネはリリスやイルミナの配下になる前はそれぞれクラウディアと一緒に仕事をしたことがあり、先輩であるクラウディアにいろいろと教えてもらった。

リリスやイルミナの配下になった後も仕事中に何度かすれ違ったことがあり、ただ面識があるだけでなく、2人はクラウディアを尊敬している。

そんな先輩が愛らしい姿になったことでバルザミーネは我慢できず、クラウディアの小柄な身体をぎゅっと抱きしめた。


マグノーリエはバルザミーネがイルミナの配下になってからパンゲーアの中で働き始めたので、今日が事実上の初対面だったが、"小さくなったクラウディアさんかわいい"などの共通認識を通じて少しづつ仲良くなった。


----


翌日の朝食後、エリスと専属侍女3人はパンゲーアの屋上でひなたぼっこ。

右にエルステのメイ、左にドリッテのアンネ、後ろにはツヴァイテのクロエを侍らせ、椅子に座った3人は気持ちよさそう。

「ドライヴァイゼンも正式に任命して、後は"フィアーテ"だけですね」

「いいえ、私はそれだけでは足りないと思っているわ。

 フィーア・テュヒティヒステンやドライヴァイゼンはノクスお姉ちゃんの"ヘーア"、イルミナお姉ちゃんの"マリーネ"と共通した役職として、軍を組織するために必要だけど、私が独断で決めた"お気に入りの子たち"の集団も必要だと思っているし、イルミナお姉ちゃんがそういうものを持っていることは把握しているわ。

 もちろん私のそれにはフィーア・テュヒティヒステンの4人を全員含めるけど、それ以外に2人手をつけていて、8人のうち5人は決まっているわ」

「もしかして…レニとクラウディアですか?」

「ええ…その通りよ、メイ。

 レニは"フィーア"、ディアは"フュンフ"…あなたたちも専属侍女にした順に"アインス"・"ツヴァイ"・"ドライ"として、名前を出せないような場面での識別にはその数字を使うことになるわ」

「ということは、エリはフィアーテだけでなく"お気に入りの子たち"の"ジーベン"と"アハト"も探すのですね…」

「でも、一番大好きな子はメイ…あなたよ…」

エリスは"百合ハーレム要員"をフィアーテと合わせて3人増やそうとしていることでメイが嫉妬する前に、彼女の唇を奪う。


「えへへ…エリ…」

「それに、メイも…私の"親衛隊"という名目で何人か…私やアンネに似た子を囲ってもいいのよ…」

「ふぁい…わたくし…エリの"親衛隊"…つくりましゅ…アンネと一緒でも…いいれすか?」

「いいわよ…」

「えへへ…アンネもメイねーさまといっしょにエリスさまのための"親衛隊"つくりたいです…」

アンネがメイの右側に移動してきて、メイはエリスとアンネに挟まれる形となった。

当初はエリス一筋だったメイだが、自分のことを"メイねーさま"と呼んで慕ってくれるアンネを気に入り、エリスのそばにいながら2人でイチャイチャすることも増えてきた。

エリスは大好きな姉たちやメイたち専属侍女とのイチャイチャも好きだが、自分が好きな女性たちのイチャイチャを見ることも好きなので、侍女同士の仲が深まることを好ましく思っている。

でも、やっぱり1番は自分でいてほしいので、エリスはすでにメロメロになっているメイにもう1度口づけをする。

大好きな子たちに挟まれ、一番大好きなエリスにもう1度キスをされたメイは、目をぐるぐる回したまま気絶してしまった。

パンゲーア(女帝リリスと第1皇女ノクス、第3皇女エリスが暮らす皇宮)とアビュスス(第2皇女イルミナの本拠地)で働く侍女には"専属侍女"と"配下の侍女"がいて紛らわしいですが、前者は死ぬまで完全に主を1人しか持たず、後者は諸々の事情で主を変えることがあります(マグノーリエはリリス配下の侍女、バルザミーネはイルミナ配下の侍女でしたが、エリスのドライヴァイゼンに就任するため主をエリスに変えています)。

<2022/ 7/13修正>"お気に入りの子たち"の集団について、下記の通り修正しました。

修正前「ノクスお姉ちゃんもイルミナお姉ちゃんもそういうものを持っていることは把握しているわ。」

→修正後「イルミナお姉ちゃんがそういうものを持っていることは把握しているわ。」

※後の話でノクスはそういう集団を持っていないと明言しており、内容に矛盾が生じているため。

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