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2.ブレンダも見てほしい

 

「ブレンダさんや、俺は思ったことがある」

「はあ、今回は何?モリス君」


  前回の失敗は、やはりギルド内と言う閉鎖されたフィールドを舞台にしたからだ。

  少なくとも、モリスはそう感じていた。


「技名…」

「まさか技名叫んで攻撃するつもり?」

「…ご名答。なんで、わかったの?」


  モリスとブレンダは、そこそこ付き合いが長い。知名度は低いが、実力は本物であることは冒険者ギルド内では有名だ。


  しかし、いくらギルド内で有名とはいえ、冒険者内では無名も良いところである。


「技名叫んで攻撃は、デメリットしかないわ。『今から攻撃します』って言ってから攻撃なんて、有り得ないわね」

「ぐっ、まぁ、確かになぁ。でもさ、カッコイイと思わない?」

「それについては、思わないわ。寧ろ、ダサいとすら思えるわね」

「技名…いいと思うんだけどなぁ」


  いつもの酒場で二人は、いつものくだらない話をしているが、モリスは真面目に言っているのを感じたブレンダは、溜息をつく。


「じゃあ、仮に私の魔法名を言うとしたら、『収納』よ?モリス君に至っては、『袈裟斬り』とか、『振り下ろし』じゃない?」

「うーん、確かに。技って技は俺らには無いからね」

「剣技とか習っていたなら技もあるかもしれないけど、私達は殆ど独学だから、仕方ないわ」


  モリスもブレンダもあくまで冒険者である。冒険者などは正規の仕事より雑用や、怪しい仕事が大半である。そうなると、自然と来るもの拒まずのギルドになり、荒くれ者も多くなる。


「この間会った冒険者がさ、叫んでたから真似したくて」

「あぁ、まだ若い子だったわね」

「そうそう!でさ、ここぞって時に叫ぶと」

「却下。あれは若い子だから許されるのであって、私たちみたいな20代には痛いだけよ」

「いいと思ったんだけどなぁ」

「その話は置いておいて、依頼取ってきたから、こなしましょうか」

「今回は何?随分、急だね」

「野盗退治ね。30人規模の野盗が廃村に住み着いてしまったから、皆殺しかリーダーの生け捕りが目的ね」

「物騒だねぇ、じゃ、野盗なら夜からやろうか。場所は?」

「西へ暫く行った所の廃村。片道5時間って所ね」

「了解。じゃ、準備したらボチボチ行きますかね」


 

 現地に着くかなり前から警戒し、野盗に備える。

 その際にブレンダの魔法が役に立つ。魔法名は『ソナー』と言って、探査の魔法だが、本来は地形を大まかに把握する魔法だが、ブレンダはオリジナルのアレンジをしており、生物のみに反応するようにしている。

 生物のみの把握となれば、それはレーダーに近い魔法となり、おかげでモリスとブレンダは奇襲に強い。


「15時方向、距離1200、6人ね。多分、野盗」

「さすがだね。こっちに気付いてる?」

「…気付いてないわね。この動きは。円を組んでるから人間で間違いないし、中心は焚き火かしら。となると時間的に昼食ね」


 ブレンダのこの魔法には欠点があり、生物に反応するため、膨大な反応を感じ取ってしまう。森ならば全ての虫や獣に、街ならば人間、ペット問わず、文字通り全ての生物に反応してしまう。


 ソナーの魔法は、どこまでも飛ばせるが、ブレンダの処理能力では2kmが限界だ。


 どうやって判断するかは、状況と目標、時間と動きで推測していく他ない。しかし、ブレンダはこの判断能力が凄まじく、予知にも似た芸当ができる。


 まあ、だからこそイレギュラーには弱いのだが。そこはブレンダ自信が自覚している。


「うーん。こっちから仕掛けても良いけど、廃村までまだ距離があるし、警戒部隊って感じだからやめとこうか」

「そうね。このまま距離を取って尾けたまま、集めて一網打尽にしましょう」

「そ、それだと俺が集め役じゃん」

「…もしかして、技名言いたいの?」

「言いたいの。練習にさ」

「なら、集め役の初めにやって、叫んで集めてね」

「えー?最後のボスとじゃないのー?」

「ダメ。これは譲らない」


 ブレンダとモリスは顔を付き合わせて会話しているが、ブレンダの目線は分からない。

 それでも尚、ブレンダから圧がかかっているのを感じたモリスは渋々だが了承した。


 それから6人の野盗らしき反応を尾行し、アジトである廃村付近に着く。


 ソナーの反応は30人規模と言う話だが、判断不能を合わせて50人くらいの規模を、ブレンダは感じ取る。


「…囚われ、かしら?」

「廃村内の反応は凡そで500、内445は虫か鼠みたいな小刻みに動く何か、確定で野盗は35、囚われ6、不明が14、あと別に動かない反応も何点かあるわね」

「確定と不確定合わせて50以上だね。あー。やっぱ今回は俺の出番ないかな」

「たまには私も目立ちたいの」

「そういうことなら、ブレンダさんに任せるよ」


 その後、最終打ち合わせを行い、モリスは廃村へ駆けて行き、ブレンダは廃村を見渡せる高所を探しに走る。


 手頃な大木を見つけたブレンダは、スルスルと木登りをして廃村を見渡す。


「…モリス君はまだ着いてないわね」


 つい、いつもの調子で話すが、相手がいないので独り言になってしまう。


 万が一先にモリスが廃村に着いていたら、と内心焦りを秘めていたブレンダは、ほっと胸を撫で下ろす。


(いけない。気を引き締めないと。)


 モリスは目立ちたがり屋だ。ブレンダは十分にその気質を知っている。

 だからこそ、ブレンダは彼が無茶をしないか、いつも心配している。


 ブレーキ役として、いつも意識している。


 そうなるとブレンダだってストレスが溜まるのだ。

『私はモリス君を見てるのに、モリス君は私を見ているのか』と。


 要するに、ブレンダはモリスに見てほしいのだ。純粋に褒めてくるモリスに見てもらって、褒められたいのだ。


 廃村を見下ろしていると、土煙が上がってきた。


 モリスが到着して暴れだしているのだろう。


 ブレンダは、魔法を発動する。目に魔力を通し、瞬間的に視力を上げる魔法だが、魔法名は無い。


 この魔法は、ブレンダが気付けば習得していた魔法だ。


 せめて、私がモリス君を見ていようと無意識でしていたことが、意識的に出来るようになっただけだが、遠見の魔法はブレンダの中で完成していた。


 欠陥があり、モリスの周囲のみ遠見できるものだ。


 それでもモリスは、この欠陥魔法を褒めちぎった。


 土煙が収束する頃、野盗らしき者達がモリスの周囲を囲っているのが見えた。


 モリスは、天に向かって鏑矢を放つ。


 ぴぃーと言う音は、打ち合わせ時にした合図だ。


『全員もしくは戦力であろうものが集まった』


 ブレンダはすぐさま、魔法を発動する。


 彼女の最強で最弱の魔法。


『収納』


 本来『収納』魔法は対象の全てを収納する魔法だが、ブレンダの『収納』は部分的に収納出来る。


 それが人のどこだろうと。


 瞬間、野盗全員が倒れ込む。


 収納しておくと魔力を消費するので、すぐさま木の根元にボトボトと収納したものを落としていく。


 心臓。


 静まり返る廃村には、モリスだけが立っている。


 見えて無いはずなのに、ブレンダと目が合って、親指を立てる。


 唇の動きから、ブレンダは何を言ったか分かった。


『さすがおれのあいぼう』


 普通なら恐怖の対象になる魔法運用だが、モリスは最初から恐れなかった。


 その時の事を思い出してしまい、ブレンダは顔を赤くしてしまうが、即座に最強の魔法を発動した。


 発動した魔法は収納。


 対象は自分の、その感情。


 仲間でいるため。


 困らせないため。


 今の関係を壊さないため。


 あなたの横に在りたいがために。


 彼女は自分の最強たらしめる感情を収納し、最弱となる。


 聞こえないと分かっていても、返す言葉はいつも一緒。


「あなたの相棒だもの、ね」


 なんだか冷たくなった

 その感情も、収納した。

なんでもいいから感想ほしー!

コメディーなのに、切ない感じすいません!

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