にこちゃん、にこにこがいっぱい
「にこちゃんは5さい。すきなことばは、きらい」にいただいた素敵なレビューや感想に触発されて書いた続編です。このお話だけでも、完結しております。
にこちゃんは5さいです。
いもうとのなまえは、みこちゃんです。
おかあさんのなまえは、いっこさんです。
いち、に、さん、で
いっこ、にこ、みこ、なんです。
すてきでしょう?
それなのに、にこちゃんなんだか、ごきげんななめです。
「あら、にこちゃん、どうしたの?」
おかあさんが、ふしぎそうにたずねます。
「にこちゃんも、にこちゃんじゃなくて、いっこがよかったな」
にこちゃん、くちびるをとんがらして、こたえます。
「だって、いっこは、1でしょ。1って、1とうしょうの1でしょ。にこちゃんも、2ばんじゃなくて、1とうしょうが、いいなあ」
おかあさん、こまってしまいました。
にこちゃんは、おかあさんとおとうさんがうんと考えて、このなまえが1とうしょう!と思ったから、にこちゃんになったんです。
いち、に、さん、で
いっこ、にこ、みこ。
「ねーね、にこ」
いもうとのみこちゃんが、にこちゃんを見上げていいました。
するとにこちゃん、こんなことを言いだしました。
「にこちゃんも、にこちゃんじゃなくて、みこちゃんがよかったな」
「あら、どうして」
「だってみこちゃんは、3でしょ。3って、2よりいっぱいでしょ。にこちゃんも2こじゃなくて、3こがいいなあ」
にこちゃんのだいすきないちごだって、2こより3このほうが、うれしいもの。
いっぱい、いっぱい、ほしいもの。
「こまったにこちゃんねえ。そういうの、となりの芝生は青く見えるっていうのよ」
おかあさんが、あきれがおで、むずかしいことを言いました。
「あおい、しばふ?」
にこちゃんの目がかがやきます。
にこちゃんのだいすきな色は、ブルーなんです。
あおいしばふでおひるねしたら、
まるで、ひろいうみの上。
まるで、晴れたそらの中。
なんてすてきでしょう。
にこちゃん、うれしくなってにこにこします。
「ねーね、にこにこ」
みこちゃんが、にこにこしている、にこちゃんをゆびさして、わらいます。
「あ、そうか!」
にこちゃん、いいことを思いつきました。
「にこちゃん、にこを、いっぱいにすれば、いいんだ」
にこにこ。
にこにこにこ。
にこにこにこにこ。
にこがいっぱいで、にこちゃん、えがおのいっとうしょう。
にこちゃんがにこにこすると、
いもうとのみこちゃんも、にこにこ。
おかあさんのいっこさんも、にこにこ。
「にこちゃんったら、にこにこして。どんな夢をみているのかしら」
いつのまにかねむってしまったにこちゃんのおなかに、おかあさんがやさしくタオルケットをかけます。
◇◇◇
でもほんとはね。
にこちゃんが、いっこがいいなって思うのは、おかあさんのいっこさんのことが、だいすきだからなんです。
にこちゃんが、みこがいいなって思うのは、いもうとのみこちゃんのことが、だいすきだからなんです。
にこちゃんがそれを見つけるのは、もうすこし、さきのことです。