結婚詐欺師グループが中年女性をターゲットに定めて公園を舞台に展開するドタバタ劇。
だだっ広い、野球のグランドが2つは入るのではないかと思われる大きさで、名はつつじヶ丘公園で、短い芝生が敷き詰められている。その中年女性、木原モモコはバツイチ、子なしの54才で、朝起きて、軽い朝食を済ませ、掃除や洗濯を終えて、近所で所定の店で買い物を済ませ、毎日のように10時からお昼までの2時間あまりをつつじヶ丘公園で暇を潰していた。公園の大きさの為か、幼児を遊ばせている母親達が大半で、また折からのペットブームで、犬の散歩も多かった。この時間帯は生意気な小学生も居ず、静かだった。いつものようにモモコはベンチでスマホの電子書籍を読んでいた。
いつものように黄色のワンピースを着ていた。
モモコが19才の時、その日も同様の黄色のワンピースを着ていた。モモコにとって人生で一番その日は輝いた日だった。
取り引き先の部長と経理社員が、父親の自営会社に尋ねて来たので在るが、得意なものがあまり無いモモコは、高校卒業後、進学せず家事手伝いをしていた。それで自然来客にお茶を出したのだが、同行していた経理社員と目が合ったのだが、彼の方が視線を外さず、モモコもそれを嫌だと思わなかった。
モモコには何かしら予感があった。
数日後それは的中した。その社員からプロポーズがあったのだ。
その社員に会ったのは二度目だったが、その時はモモコはまだ高校生で、父親の影に隠れて、言葉も交わさなかった。
無論母親は反対した。料理も何も出来ませんからというのが言い訳だったが、本音でもあった。
それでも強いてといわれたし、モモコも内心乗り気だったので、話がトントン拍子に進んで、19才で結婚することになった。
相手は倉持剛で資材会社の支店に勤めていて、最初から地味なカンジだったが、ひと回り上の31才だった。
モモコの父親は最初は中堅何処の官公庁からも発注が来る建設会社に勤めていた。定年まで居れば老後は悠々自適で安定していたが、資格も無いのに、プライドが高く、自立して工務店を始めたので在る。
経理も分からず困っていたので、その資材会社が発注する代わりに偶々経理を指導する事になった。
倉持は元来真面目で、いかにも経理社員らしく、そのせいで異性との接触も少なく、30才過ぎても独身だった。
田舎に母親だけが居る、母ひとり子ひとりで、結婚をせっつかれていたが、縁遠く、又都会の本社勤務を願い出ていたが、妻帯者が条件で叶いそうになかった。
そこで倉持はモモコに一目惚れし、結婚を申し込んだのである。
結句倉持は本社勤務になった。
しかしモモコの両親は心配が絶えないのである。
当初新婚家庭は賃貸マンションだったが、両親が持家を念願し、頭金として100万円無理矢理押し付け、仕方なく新築マンションを購入した。それは値上がりし結果的には成功した。又両親はモモコに肩身の狭い思いをさせないように、サイズは分かっているので、洋服等を可成り送った。
モモコの出来料理は、目玉焼きとルーで出来るカレーとシチューだけだったが、それは当初から言ってあったので、新婚当初は円満だったが、数年たっても成長の後は無かった。又モモコは対人スキルが低かった。会社の上司を自宅に招いたが、オズオズとして要領を得ず、高卒の新入社員のモモコより年下の彼にさえ、奥さんは考え過ぎじゃないかと言われる始末。
数年を経て、モモコは二人の中にすきま風が吹いているのは実感していた。昼間はショッピングなどに出掛けていたが、それは全て倉持と一緒に行った店ばかりだったが、靴屋で倉持が若い見知らぬ女性とふたり連れで買い物をしているのを観た。どういう訳か妻の方が身を隠した。