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62話

 ふぅ。そういえばウサギからの角はドロップ率が低いとかそういうのあったな。すでにだいぶ昔な気がしてしまう。昔はこの角とか使ってNPCに武器を作ってもらおうとしていたのに、今となっては使い道がわからないアイテムになってしまうとは。


 今でも持てるならマックスまで持ちたい心には変わりがないけれど、成長してしまったな。インベントリの圧迫とかクランハウスの倉庫とかのことを考えてしまうと少しいらない気がしてしまう。


 まぁ勿体ないから集めておくんですけど。ウサギ肉は半分くらいハナミさんに渡して半分ローステンさんにあげようか。


 四十匹ほど狩ったところでこちらを眺める小さい影に気づく。以前はその眺めている影がハナミさんとミヅキさんで……なんてことがあったな。でも今回は完全に初心者プレイヤーが物珍しそうに見ているだけだろう。装備が明らかに初心者向けのやつだし。


 こちらのレベルが高いからかウサギの群れも積極的な逃亡だ。しかも草食動物特有の一匹が襲われても群れ全体は生き残ろうとする健気な奴。一匹が囮になろうと僕を角で貫こうとしてくる。装備が強くなったとはいえVITは一切成長していない僕からしたらこんな攻撃でもダメージを負ってしまうのだろう。


≪スラッシュ≫≪スラッシュ≫≪スラッシュ≫≪スラッシュ≫≪スラッシュ≫


 まぁいくら囮を立てて逃げようとしたところで、AGIに関しては前までの比でもないし、一撃なことには変わりないので追いついて切るだけなんだけど。


 さて、次に見えているウサギたちが最後の群れだ。たぶん五十匹達成で二本角、そしてそれも倒せば電気ウサギ……なんだよね。そうだろうとは思うけどローステンさんに聞いておけばよかった。


 ただこちらを観察している影はだんだん近づいてきている気がする。確かに僕の装備は物珍しいかもしれないけれどそこまで近づかれると怖いな……


 そして最後の群れに追いついてウサギたちの真ん中に降り立ち、回し蹴りを放つように足に展開した刃で切り裂き、逃げまどおうとするウサギたちに止めをさしていく。よし……


 と二本角を探そうとして視線をあげると目の前に迫るのは盾?

 いきなり攻撃してくるかもしれないプレイヤーは想定が付くがその中で盾を持っているプレイヤーには思い至らなかった。


 しいて言うならハナミさんだろうが、あの人はお酒とおつまみを与えておけば静かな人だし、今日もたぶんお酒を飲んでいると思うので……


 まぁこんなゆっくり考えている時間があるほど盾の攻撃には迫力も早さも足りていない。正面からぶつかるように突き出されている盾は、少し横に歩を刻むだけで簡単に避けられる。


 さて、こんなことをした犯人は……さっきからずっと見ていた初心者プレイヤー?


 盾を簡単にかわしたが、衝動に任せて振ったのか力の行き場をなくした盾を引き戻そうと体勢を崩している。まぁ一回ならまだ誤射かもしれないし。と思って様子を見て立っているとまた盾での殴打、今度は横から殴りつけるようにして。


「Why me」


 驚きのあまりなんか英語が出ちゃった。まぁ当たることはないがやられっぱなしなのも困るので一回一回全力で振っているため、避けられて踏ん張りがきかなそうな

 脚に蹴りを入れる。当然刃は展開せずに。すると押し出す力と引く力の均衡を崩した足は見事に宙へ浮き、そのまま崩れ落ちる。さて、下手人の正体は。

 うん、やっぱり知らないプレイヤーだ。ハナミさんよりは小さいけどわりと大きめの女性だ。まぁアバターの背丈なんてあてにならないだろうけど。


「で、何の用でしょうか。PKなら僕より詳しい先輩いるんで紹介しましょうか?」


 でもたぶんあの人身内に優しいから僕がPKされかかったと聞いたら一回殺されるかもしれないですけど。

 転ばされた少女は盾をこちらに向けながら顔を赤く染めながら大きな声で叫ぶ。


「ウサギをいじめるのはよくないと思うんっすよ!」


 今時こういう子もいるんだなぁ。


 ……と、言われましても。この後出てくるモンスターに用があるわけなので。それにウサギと言ってもモンスターで、なんか設定的に人を襲うのではなかったですか。低レベルの時は襲われたし。今さらだけどなんで襲われるんだ、肉食ではないだろうし。今度ドリさんに聞いてみよ。


 おっと頭の中でまた話がそれた。いじめるのはよくないか、そうか。確かに。


「確かにそうですね」


 彼女の期待通りの言葉だったのか顔を喜色に染め立ち上がる。盾を持ったまま片手で僕の手を掴みぶんぶんと縦に振る。


「いやー、わかってくれて嬉しいっすよ」


「そうですね、ははは」


 この人思ったよりちょろいかもしれない。


 ◇


「自己紹介するっす、【シバ・ヒッチハイク】っす。シバと呼んでほしいっす」


 っすっすうるさいっす。それ素?という言葉は飲み込んで笑顔で挨拶をする。


「コマイヌです」


「イヌ仲間っすね!柴犬と、コマイヌで!」


「そうっすね」


 すごい、絡み方がこれまで会ってきたどの人よりも早い。神速で肩組んでくる勢いだ。なんというか、ハナミさんとは別のめんどくささを感じさせる。


「このゲームを買ったはよかったっすけど受験とか部活とか……とにかく全部終わらせてからじゃないとやれないと思ってたんすよ。なんとか全部終わらせて噂のゲームをプレイしてみたらまさに噂通り、いや噂以上じゃないっすか。それでいてもたってもいられなくて街の外に出てみたら、可愛いウサギさんがお出迎えてくれたんすよ!最初のコンタクトは失敗に終わってデスしちゃったっすけど今度こそもふもふしようとしてたらコマイヌさんがウサギさんいじめてて!でもコマイヌさんは」


「いや長い長い長い。まとめてお願いしていいですか?」


「フレンドになって教えてくださいっす!」


 この人は人を疑うとか嫌われるって想像したことないんだろうか。今僕が右腕を振り上げれば、デスペナルティ中の初心者なんてたぶん一発でリスポーン地点送りだけど。まぁステ振り次第かな。盾なんて持ってるしある程度VIT振ってるかもだけど。


 そんな会話というには怪しい、一方的な言葉のドッヂボールをしていると遠くから体格の大きなウサギが近づいてくるのがわかる。あちらはまだこちらに気づいていないようだが、遠目からでも識別できた。お目当ての二本角だ。


「ちょっと失礼しますね」


「ん?どうしたっすか……ってああ!またウサギさんを!」


 仮にAGI極振りの初心者だろうが止めることはできない。二本角へ一歩で半分程へ距離を縮め、二歩で肉薄。二本角が気づいた時にはすでにスキルエフェクトがつき、システムログにスキル名が表示されていた。≪一閃≫、最初に君に相対した時には覚えてもいなかったし、使えもしなかっただろうスキルだよ二本角。


 おそらく一撃でほとんどのHPが吹き飛ばし、空いている手で残ったHPを吹き消すように切り刻む。≪突進≫なんて甘いもの発動する隙すら与えずに二本角と、その群れを討伐した。


 全部やり終わったくらいに先ほどまでいた位置から全力でシバさんが走ってきていた。息を切らせながらも僕に言いたいことがあるようだ。


「はー……はー……なんでウサギさんを……はぁ……」


「この後に出るモンスターに用事があるので」


「だからって…はぁ。ふぅ。だからっていじめるのはよくないと思うんすよ!」


 この人動物系のモンスターが出た場合これからどう戦うんだろう。言い争うように視線を外した時、警戒が薄れてしまっていた。その時を狙っていたようにシステムログが流れ出す。


『CAUTION!ボスエリアに侵入しました!ボスが接近中!』


「え、なんすかこのメッセージ」


「あー、とりあえず逃げたほうがいいかと」


 準備をせずに戦う羽目になってしまったがまぁいいか。

 さて、何日ぶりかな。


【紫電纏う至高の二槍】

  称号 アヴェンジャー

  LV:??


 リヴェンジャーからのアヴェンジャーだったっけ。今回は僕がリベンジさせてもらうけどね。




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