52話
前々回に休むと言っておきながら更新しました。嘘つきましたね。
「ふむ、私も見たが……相変わらず意味がわからないな」
僕の動画を再生して、上から僕を降らせようとか、いやいや鎖を使ってアメリカのヒーローみたいに木から木へと飛び移らせて出現させようというハナミさんとリーシュ君。それを横から見ていたリーシャさんからも、理解を得られなかった。
「そういえばシャーは前から変だーって言ってたね」
「当然だろう。コマイヌの挙動は明らかに健康で健全な人類のそれではない」
確かに健康な人類ではないのだけれど。それがゲームの操作と関係あるのだろうか。
「僕現実世界だと体弱くて、ほとんど寝たきりみたいなもんだからですかね」
何気なく発すると三人ともこちらを見て沈黙している。あれ、何か変なこと言っただろうか……個人情報とか?まぁ確かにネットリテラシーがなかったかもしれないけどおそらく自分の家、僕の部屋は子煩悩天才の父さんが魔改造している部屋の一つなので、現実世界で存在する個人宅の中でも最高レベルの防衛力を持っているからリア凸は警戒しないでもいいというところがある。それでも不特定多数から家にピザが届きまくったりしたら嫌だけど。
三人は僕から遠ざかるとこそこそと話し始める。どうしたんだろう。
「なんかシャーのせいで地雷ふんじゃったじゃん!どうするの!」
「ウチも体弱いんは聞いてたけどそこまでとは思ってへんかったな。リアルが学徒っぽいんにログイン時間がえぐいからおかしい思っとったけど……」
「正直私も困ってる、ここまであけすけに重い話をされると……なんか申し訳なくなった」
僕に聞こえないように話していた三人はこちらを向くとリーシャさんが頭を下げ僕にごめんとだけ告げた。何が?
◇
何故か少しだけ視線が柔らかくなった、というか明らかに優しくなった三人と共に歩いている。今までハナミさんとミヅキ先輩、ボタンさんとドリさんと、歩いたことはあったけど、よくよく考えたらリーシャさんとリーシュ君が外を歩いているのを見るのは初めてだ。
まぁドリさんもダンジョンへ行くまでは正直クランハウスに住み着く座敷童的存在かと思っていたので、案外プレイヤーは外へ出るということはわかっている。
「他所のクランやと完全引きこもり生産職はおるらしいけどな」
「シャーとか割とそれに近いけどね、市場に出すのも部屋にそれ用の設備つけてるでしょ」
「私の場合はやっているゲームのジャンルが違うと思っているので……今回の討伐も直接的には参加しないので悪しからず」
確かにリーシャさんは一人だけ経済シミュレーターとかやってる気がする。いずれ土地とか投資にまで手が出そうだ、このゲームにそういう要素があるのかは知らないけれど。でもNPCショップに出資みたいなことができるらしいしありそうだなぁ。楽しそう。
楽しそうだけれど僕には無理だな。そこまで頭がよくないし一人で突っ込んでいる方が性に合っている。
街を歩いて数分、今回の僕らの連合の集合場所であるどこかのクランが経営する喫茶店へ来た。すでに僕ら以外のメンバーはだいたい集まっているようで、賑わいを見せている。盛り上がりすぎて喫茶店ってかなんか居酒屋みたいな雰囲気だな。実際に入ったことないけど。
こういう時僕は少し物怖じしてしまうけれどハナミさんとリーシャさんの両名はズカズカと入っていき、その後ろを僕とリーシュ君がついて行く。リーシャさんは代表に挨拶があるらしく、奥の方へ進む。リーシャさんの向かった先に【暴風】さんとオネーチャンさんがいるのを見つける。
そういえばミヅキ先輩とPKクランを討伐した後に来た時のクランの組み合わせか。懐かしいな。その組み合わせなら……と思い店の中を見渡すと、端の方の席に目当てのプレイヤー……僕が洞窟内で通り魔してしまったプレイヤーがいた。
軽く頭を下げるとあちらもこちらに気づき、何故か怯えたような仕草で頭を下げ返してくれた。なぜ怯えられているんだ。
顔見知りだし挨拶しないのもな、と僕も【暴風】さんがいる席へ向かう。ハナミさんとリーシュ君は適当な席に着くとさっそく酒盛りを始め、それにつられた酒飲みプレイヤーたちが集まってきた。
もっとリーシュ君はワイワイ騒ぐタイプかと思っていたけれど体を小さくしながらうつむいていた。大人数は緊張するタイプなのか。
「よぉ!コマイヌの坊主!」
「なんか混ざってます……まぁいいですけど」
「呼び方が定まんねぇんだ!んなこたぁいい。まずはダンジョン制覇おめでとう!」
「ああ、ありがとうございます」
おめでとうと言いながらこちらに歩み寄り、僕の肩をバンバンと叩く。だから強いんですって、街中じゃなかったら確実にダメージエフェクト出てますからね。
「そういえばお二人はお知り合いでしたね。クラン『十二支』で生産職をさせていただいているリーシャです。噂はかねがね」
「おう、今回は無理言ったってのに了承してくれて感謝してるぜ!」
無理言ったんだ。いや求心のペンダント数個とかそりゃ無理ゲーだけど。いくら何でも市場や露店にほとんど出回ってないか超高額で出てるやつばっかりだろうに。
「コマイヌの坊主たちのおかげでめでたくダンジョンが解放されて、しかもクエストがコンテンツ解放のカギになってるってことまでわかった。これに関しちゃぁwikiんとこも予想立ててたみたいだけどな」
「先を越されちゃいましたね~」
そう言って後ろからすっと現れお茶を僕たちへ渡してくれるオネーチャンさん。この人たぶんクラン内で結構偉い立場なのにいつもお茶出してるな。
「まぁ重要NPCやらメインクエストに関わってるだろうって予測は立てれたからそこら辺を重点的にwikiの奴らが洗い出してるとこだけどな」
「興味深いですね、私もコマイヌが王族NPCと偶発的に知り合うまで見たことも聞いたこともないほどでしたが、第一の街か第三の街で重要NPCでも発見できましたか?」
「第三はまだだな。あそこはドワーフたちの街だから少しばかりめんどくせぇ。第一の街は一応騎士団のクエスト関係から派生するってのがわかった段階だ」
「第一の街は人間種だからか通常NPCも多くてサブクエストは多いんですけどね~、人間模様の設定がどろどろしすぎて私たちのシミュレーションゲーム勢も困ってる感じですよ~」
いや、エルフたちも結構どろどろしてたみたいですよ?あの偉そうなエルフ、豪エル。なんかこの国の貴族っぽくて女王制度を撤廃しようとしてたとかなんとか聞きましたし。
やはり最初に運、そして最後には暴力がすべてを解決してくれる。
「今回のレイドバトルはそれをやっているときに見つかったものなのですか」
「そうだな。まず一般NPCのお使いクエストからそのNPCの家族の下級騎士の大量発生したモンスターの討伐をお手伝い、んで次にそれらを複数こなすと団長とお会いしての少しばかり強いクエストボスを討伐。で、最後にボロボロになった騎士団長と貴族様からの依頼で今回のレイドバトルだ」
「第一の街の騎士団長は~、結構顔がカッコよかったから人気出そうだったんですけどね~」
うわめんどくさい。よく見つけたなそんな条件。僕の場合ほとんど運が絡んで見つけられたダンジョンだったのに探す人はよくやるな。
「んじゃ、そろそろ時間だな。オネーチャン、説明よろしく頼む」
「いやいや~、有名プレイヤーと言えば【暴風】さんですよ~。お願いします~。あ、リーシャさんでもいいですよ~」
「まさか。私は参加させていただいた側の人間ですから。お二人に任せますよ」
何故か笑顔で牽制を始める代表者三人。いや、誰でもいいのでは……?と思いながら貰ったお茶を飲む。あ、これ美味しい。
明日こそ休むかもしれないです。いや明後日こそ?わかんねぇや。




