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39話

 前回のあらすじ。なんか花を引き抜いたらモンスターが出てきた。いや、明らかに特徴のあるマップ内オブジェクトに触ったら何か起こるかなぁと思って。何かはあったのだけれど、これ明らかにハズレですよね?


 花を引き抜いたら出てきたモンスターは絡まった蔦が巨人のような姿を模した、人型の植物モンスターとでもいうべきだろうか、人であったら目にあたる部分には花が咲いていて、引き抜いた花と同じ色だ。それが頭の上にも咲いていてなんだか愛嬌がある。


 それにしてもモンスター名が【カラミツタ】って……普通だな。なんかそのまんまだなって思ったけどよく考えたらこのゲームほとんどそんな感じだった。進化するとだんだん個性豊かな名前になるんだろうけど。


「ボタンさんー、とりあえず何すればいいですかー」


「ドリちゃんは事前の作戦通りデバフ!私は魔法打ちながら牽制!」


「僕は何をすれば」


「突撃!」


 了解です。


「てーい」


【 Action Skill : 《 土塊アースショット》 】


 気の抜けた声と共にワンダードリームさんの持つ枕から土の塊が……枕?なんか今枕から魔法が出てませんでしたか?いや妙にその枕持ち歩いてるなーって思っていたけど、それ武器なんだ。


 いやどう考えても武器にする必要性ないですよね。枕。


 ワンダードリームさんが放った土塊は人の顔を模した場所へ当たる。ナイスコントロール、と言いたいところだが余り効いているようには見えなかった。


 まぁ、人の姿してるとはいえ植物だからね。頭とかいう概念はないのかな。蔦巨人は煩わしそうに土を払うと、それを放ったワンダードリームさん目掛けて腕を振り下ろす。前衛は僕だけだしカバーに入りたいところだが耐久が紙なので威力を知りたいところだが。

 というかあんな動きの遅い攻撃当たらないのでは……


 と予想しているとワンダードリームさんは頭を抱えてその場にうずくまった。この人本当にβテストしてた人?


 急いで走り、ワンダードリームさんを背に庇うように立ち両腕に展開した刃で受け止める。貫通ダメージというか衝撃が来るが防御しているのでそこまでのダメージはないけど。手首に当たる部分を切り払う。複雑に絡まっているとはいえ植物、あっさりと切り取れるがまた伸びてきた蔦により再生される。再生持ちかぁ、めんどくさ。


 ワンダードリームさんは衝撃が来なかったからかゆっくりと閉じていた目を開けると僕が立っていることを確認し小さく拍手する。


「おおー、ナイスカバーですよー」


「ドリちゃん!いつも言ってるけどしゃがまない!眼を閉じない!」


「食らっても平気かなーって思ったんですよー」


 いやいや、いくら僕よりレベルの高いプレイヤーとはいえ攻撃を直撃したら痛いのでは。


「夢のパジャマは今取れる中で一番いい素材だと思うのでー、たぶんこのくらいのモンスターの攻撃ならほとんど食らわないかなー、とー」


 え、そのパジャマ?薄っぺらい明らかに寝心地を意識したパジャマで?という確認を取るようにボタンさんの方を向くと力なくうなずいていた。マジかよ、このパジャマが。


「しかも多少のダメージはボタンさんがすぐ回復するのでー、レッツ突撃ー」


【 Action Skill : 《泥沼マッドプール》 】


 というと今度は地面、相手の足に当たる部分の地面をぬかるみに変える。装備などない植物モンスターとはいえ、ぬかるみでは動きづらいらしく両手を振り回し暴れる。


 突撃かー。まぁボタンさんも言ってたしいいか。スキルを使わずに近づく、蔦巨人は近づいてきたことに気付いていないようでもがき続けている。しかし振り回すより僕の足の方が早いので遠慮せず近づく。


【 Action Skill : 《スラッシュ》 】


 振り回している右腕の肩に当たる部分を切り裂く。簡単に根元から外れるが、また蔦が伸びてきて再生する。腕を切り落とした僕にヘイトが移ったようで再生中の右腕ではなく、左腕で叩き潰そうとしてくる。


【 Action Skill-chain : 《スラッシュ》 】


 それなら僕も左腕で切り裂く。と言っても確かに切り落とせるがまた再生される。


「ボタンさん、どうしますこれ。再生するんですけど」


「うーん、回復にリソース使ってるタイプかなー。でも星の力で再生してるとかいうタイプかー……」


「よくわからないんで攻撃しておきますね」


 右腕の再生が完了する、スラッシュ。右足がぬかるみから抜け出そうとする。スラッシュ。バランスを崩した蔦巨人の胴体を半分にするように。


【 Action Skill : 《クロスカット》 】


 交差点を中央にしハサミのように真ん中で切る。しかし胴体部分は強度が高いらしく、半分にすることができない。部位破壊できるってことは意味があるってことだとは思うんだけど。やはりリソースが尽きるまで切り続けるのが一番だろうか。


「いっぱい切ってますけどだめそうです」


「映像で見てたり噂に聞いてたけど意味わかんない挙動ですねー」


「うん……どうなってるのそれ……」


 あれ?植物モンスターより僕の行動に疑問を抱いてらっしゃる?いやー、どうと言われてもこんな風に


【 Action Skill-chain : 《スラッシュ》 】


 スラッシュしよーって気分で振るだけなのだが。僕からしたら魔法のほうがよくわからない。詠唱とかあれ覚えてるのだろうか。しかしまだ序盤の敵だからだろうか。再生能力はやっかいだけれどはっきり言って弱い。


 スラッシュスラッシュスラッシュ~


 起き上がろうとするたびに足を切り、殴ろうとするたびに腕を切る。首を飛ばしてみようとするも太い蔦が多い胴体と首は硬い。連続で切りつければ切れるかと思ったけど一息に行かないとすぐに再生してしまう。


「うーん……とりあえず露骨に弱点っぽいし、頭のお花狙う?」


「やっぱりそうですよねー、夢も狙ってみますー」


 二人もちびちびと攻撃していたようだが一向に倒れる気配はなかったので各部位を当てることにしてみた。頭の花を切り落とすように剣を振るうも、腕で防御される。おお、露骨に防御し始めた。


 しかし防御も遅いので簡単に後ろに回り込む、こちらへ向きなおうとするもワンダードリームさんとボタンさんに妨害され、逸らされる。


【 Action Skill : 《スラッシュ》 】


 花を切り落とすと蔦がうごめき始め、目の部分についていた花の色が赤に変わる。発狂モード?

 先ほどよりも早い速度で空中にいる僕を叩き落とす。両腕に構えた刃で防御するも威力も前より上がっている。痛い。


「効いてるっぽいですけど、めっちゃ痛いです」


「回復しまーす」


【 Action Skill : 《ヒール》 】


 すかさずボタンさんから回復が飛んでくる。回復行為により一気にボタンさんへヘイトが向かうが、ワンダードリームさんの援護魔法によりヘイトが分散される。


「あと弱点っぽいところどこですかねー?」


「目の花が変わったし、目じゃないかな。目の色変えるってやつ?」


 状況は文字通りの意味ですけど、文字通りの意味ではないですよね。

 やることないし突撃。


【 Action Skill : 《泥沼マッドプール》 】


「すぐ抜け出されちゃいますねー、頑張ってくださいです」


 ワンダードリームさんからまたぬかるみへ変える魔法を放った。しかしすぐに抜け出し、魔法で牽制するワンダードリームさんへと突進する。そしてまたうずくまる。


 一瞬でもヘイトがそれるとシンプルに攻撃が通しやすくて楽しい。そうだよね、パーティーとの戦いってこういうものだよね。ミヅキ先輩とやったのは一対一対一対……って感じだ。


 後ろから切りつけようとするも前に回り込まなければいけないので肩に着地、肩に止まった虫をはたくように腕をあげる蔦巨人の目の前に跳び出す。そして目の前で≪シャドウアサルト≫を起動、一瞬だけ透明になることでモンスターのヘイトは消える。そして再度出現するときには両腕に刃を長めに展開する。右腕の刃で≪ピアス≫を発動。右目の花部分を貫く。するとまた蔦が蠢きヘルメットのようになり、今度はもう一つの花をすっぽりと埋もれさせる。


≪飛燕≫を発動、再度上昇し高度を得る。≪バッシュ≫を発動。ここを起点に≪ステップ≫を刻む。攻撃を反射するように叩いた部分が盛り上がり、鋭い槍のようにこちらを貫く。しかし間髪入れずにボタンさんの回復が飛んでくる。


 ステップで跳んだことにより背後へ回り《スラッシュ》で切りつける。それに反応してまた蔦が飛び出してくるがそれに右足を、そして右腕で顔面を切るように≪クロスカット≫で挟み込む。


 頭の蔦は有限のようで、頭の後ろで反射している場合顔面のほうの防御は薄くなるらしい。交差地点は頭の真ん中になるが、右腕の刃が最後の花を捉える。


「やっぱりよくわかんない動きしてるね」


「今回使わなかったですけどまたスキル取ったんでたぶん変な動き増えますよ」


「うわぁー、そろそろ≪二刀流≫弱体化とか来るんじゃないですかー?」


 それを一番危惧してるんだよなぁ。二刀流を弱体化する場合は4本以上装備できないとか、三本目以降でスキルチェインした時にもっとダメージ量下げるとかかな。スラッシュ連打してるだけで十分強いからな、【血兎】と二刀流。


 着地したのちに削れた体力をボタンさんが全回復してくれる。そして蔦巨人が倒れ、分かれ道の一つが蔦で封鎖される。おおー、道が切り開かれた。

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