プロローグ
プロローグ
20××/10/07 22:00
23:30。
彼女は毎日決まって布団に潜る。
高層マンションから綺麗な夜景が見えるその部屋で、就寝の準備をしていた。
その日の仕事やあったことを簡易的に手帳のウィークリー欄に適当に殴り書くことが彼女のルーティンライフとなっている。その後は瞑想をしたり、趣味であり仕事道具であるタロットカードを触ったり、動画配信サイトでぼーっと動画を見ることが日課だ。
彼女が声に出さず何かしらを呟いた途端、一陣の風が78枚のタロットカードを舞い上がらせて3枚のカードがテーブルの上に並ぶ。当然のように余ったカードもしっかりと箱に収まっている。
彼女はゆったりとソファに掛け、表情をあまり変えずにその展開を眺めている。
さらに、別のデッキを取り出しカラフルなカードを同じように風に舞い上がらせて1枚だけテーブルの上に落とした。もちろんカラフルなカードたちは元あった箱に収まっている。
まるで魔法--……そう、これは魔法だ。
彼女が特別なのではない、この世界では皆何かしらの魔法を使う。
ここは日本……ではない。
平行世界の『ニホン』だ。
文明の発展などはほぼ同程度。科学技術などについても同程度だが、電力や石油の代わりに魔術が使われている平行世界の『ニホン』と言うよりも『チキュウ』。
だからと言って昔のような封建制度や貴族制度があるわけではない。
各国の首相や大統領も『チキュウ』と同じ。
ただ一つ違うのは魔法を統括する組織同士が各国の省庁にあり、またそれを統括する組織が『G7』や『G20』『WHO』のような形でいくつも散見されているのだ。
彼女のスマートフォンがやる気のないアラーム音を鳴らした。
画面には日本語で何かが書かれていた。
「今日は早いな、まだ22時半にもなってないのに」
そう言いながら、テーブルの上の瓶に手を伸ばす。
ミントタブレットのようなものを彼女は口に含み、そのままベッドへと直行した。