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秋葉原ヲタク白書65 メイドVtuberを撃て

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第65話です。


今回は、Vtuberコラボカフェでオーナーが失踪、メイド達のバイト代の不払いが発生します。


コンビが調べる内に、カフェには隠し部屋があり、ソコでオーナーはVtuberとして香港マフィアと手を組んで…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 Vtuberと秘密の部屋


Vtuberも身近になったモノだw


Vtuberって架空キャラを使って動画投稿する人のコトだが、どっか遠くの人のコトかと…

で、そのVtuberが、何とメイドさんのバイト代を踏み倒してモメてるょwどんな奴だょ?


「奴じゃなくて、女子ですぅ!ウチの御屋敷(メイドカフェ)のメイド長なのん!」

「えっ?カフェなの?君達がそんなカッコだから、てっきり"幼稚園児(ショコ・ロリ)バー"かと思った」

「だ・か・ら!"よーち園コちゃん"のコラボカフェです。"私立アキバよーち園"なのん!テリィたんも是非ご帰園プリーズ」


ココは、僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務めるアキバの御屋敷(メイドバー)

太陽より小さいが生命の可能性に富むコトに準え"赤色矮星(レッドドワーフ)バー"と呼ばれる。


で、御帰宅して来たのは"ゆるカル▼"のJKトリオでお揃いの"登園用スモック"着用w

幼稚園児の設定らしいケド、確かに性格は幼めナンだが長身だし…園児は英語を使うな←


残念ながら痛いw


まとめると彼女達の御屋敷(メイドカフェ)は、バーチャル園児?の"よーち園コちゃん"の世界観に因む飲食を提供する1種のコラボカフェらしい。


"よーち園コちゃん"は"電脳幼稚園児"を標榜するロリコンキャラ。

カフェでは給食フードと幼稚園を模した内装でヲタ女子心を掴む作戦w


ん?幼稚園って給食だっけ?


…との懸念をヨソに見事、聖地巡礼のついでに寄る"ついで需要"を呼び込み大ヒット、メイド(園児?)達は大忙し!だったのだが…


「数日前から、メイド長のヒカル先生が姿を消したのん」

「いよいよ明日が給料日なのに、このママだとバイト代が支払われないカモ」

「で、転ばぬ先の杖で御帰宅しました!ミユリ姉様!ココは"秋葉原メイドの駆け込み寺"ナンですょね?テリィたんが、キット解決してくれますょね?」


ココで"ゆるカル▼"一同が横に並び僕に頭を下げるが、何だか場末のコスキャバのお見送りみたいでイマイチ盛り上がりに欠けるw


ダメなんだょ園児w萌えないンだょな(ヤタラと萌えても困るでしょ?)w

やはりメイドさんはメイド服だ!最低でもカチューシャはしてないと←


「ん?コチラのメイド長さん、抗不安剤と心臓病の薬を服用してますね。この2種類の薬を併用する場合は、量を慎重に決める必要があるンです」


園児wのリンナに店内の写メを見せられ、プロの知見で口を挟むのは常連のマコィさん。

彼は、実はドルヲタ(アイドルおたく)なんだけど、リアルでは2年目の研修医で…ミユリさんに気がアル←


早目に目を摘まねば!


「そりゃタイヘンだ!マコィさん、ありがとう!後は僕に任せてくれ!」

「おおっ!テリィたんに任せれば、もう安心ですね。で、写メに写ってる薬には、精神科医の処方箋が必要です。あ、今は心療内科と逝うのか。テリィたん、近くの心療内科を探せば、行方不明のメイド長さんの手掛かりが見つかるカモしれません!僕も御一緒しましょうか?」

「心・配・御・無・用!後は"僕とミユリさん"でやります。じゃ御機嫌よう、ドクター」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


1番近くの精神科は"アキバ医院"だ。

翌日の昼下がり、ミユリさんと出撃。


名前からして最初はテッキリ萌え系かと思ったが、市場があった頃からの町医者なんだ。

精神科から心療内科に看板変え(中身は不変)した時に院名も変えたらヲタ客倍増らしいw


ヲタクって、みんな心を病んでるからな。

で、僕は女医のトバミ院長に貸しがアル。


「院長!儲かってるみたいですね!」

「まぁ、テリィたん。元気そうで何よりだわ!では、お帰りはアチラ」

「組織犯罪の女を追っています。現場に残された薬瓶からセンセの名が出ました。万世橋(アキバポリス)と出直しましょうか?」


白衣のトバミ院長は、長い長い溜息をつく。

インターホンで、予約は待たせて、と指示。


「今度は、どのヲタ客(おたくのきゃく)のコトかしら?この前は確か麻薬系鎮痛剤(オキシコドン)の密売ルートを探ってたわょね?アッチは片付いたの?」

「迷宮入りです」←

「そう。とっくにテリィたんはシンジケートに消されちゃったのかと思ったわ。じゃあ、型通りだけでも診察するからズボンを脱いで、私の膝の上に横になって」

「トバミ先生!」

「冗談ょ、ミユリさん。相変わらず仲が良いのね。で、念のために釘刺しとくケド、医者には、患者のプライバシーに対して守秘義務がアルって知ってるわょね?」

「犯罪行為が疑われる時には、医師には、その守秘義務を放棄する義務があるってコトまで知ってます」

「チャンと予習してて感心ね。そろそろ貴方達より100倍以上大切な予約の患者さんを診なきゃだわ。その現場に残されてたとか逝う薬瓶にある患者さんの御名前は?」

「ヒカル。メイド…と逝うか園児w」

「知らないわ」

「センセ。ソレはナイっしょ」

「ホントに知らないわ。で、ココから先は、"例えば"の話だけどOK?」

「良いとも!」

「じゃ、あくまで"例えば"の話だけど、私はね。ホントは診たくなかったの。でも"彼"は、ある日突然やって来て、何者か気づいた時には怖くて断れなくなってた。非常に用心深い"男"で、仕事の話は一切しなかった。でも、ある1人の名前を何度か口にしてたの。多分メイドさんのネーム。"彼"のいわゆる右腕なのね。ソレが"ヒカル"だった…全部"例えば"の話だけど」

「ありがとう、ドクター」

「ソレからね、テリィたん。ウチは、お薬の瓶に処方医の記名なんかしナイから。私相手に勝負なんかしナイで。テリィたんの"運"は大事に次にとっておきなさい。アキバのために」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その足で"ゆるカル▼"トリオが務める御屋敷?"私立アキバよーち園"へ逝く。

トリオに教えられたアドレスに逝くと…見覚えのある高架下の雑居ビルの3Fだ。


ん?ココは…


「そぉなのん。"終末カフェ ノストラダムスのたまご"が潰れた後にオープンしたのん」

「わーい!ミユリ姉様にテリィたんだ!」

「お姉ちゃん!お兄ちゃん!おかえりー!」


しかし、終末カフェから幼稚園カフェへ"居抜き"って少し安直過ぎナイかなw

幼女カフェお約束の挨拶もヤタラ自然で節操無さマックス…ソレに呼ぶ順が逆←


しかもコロナ禍か店内外で人の気配皆無なのに3人もメイドがいて大丈夫?

イソイソと御給仕?の準備を始めるトリオの後姿にも一抹の不安を感じる…


と、ソコへ!


「こんにちわ!私は税務調査官のゼーム。今から"ノワル・インターナショナル"の税務調査を行う。な、何だ?幼稚園児しかいないのか?責任者は…園長?」←

「え?え?お兄ちゃん達は何者?オカエリナサイマセじゃナイの?」

「本件調査は、税務調査であり犯行調査では無いコトから、貴殿らには受忍義務があり、黙秘権は認められナイ。良いか?」


2人組の調査官を何とか入口で食い止めてる"ゆるカル▼"トリオが一斉に僕を見る。

すると、一目瞭然で何かを勘違いしたゼーム調査官まで僕を睨むンだけど…参ったなw


やれやれw仕方なく立ち上がる←


「税務署の方なら身分証明書の提示をお願いします。出来れば名刺もください。ソレからキチンと話しますから、鉄板入りの靴をドアに挟むのもヤメて。器物損壊で訴えるの面倒臭いンで」

「うっ。普通、名刺までは渡さないンだが」

「何と逝ってもアキバはコスプレの街なんで是非お願いします。税務署員を装った強盗が幼稚園児をホールドアップなんてアキバじゃ日常茶飯事だ(ウソです)」


彼は渋々名刺を出すが、もう1人は難色。

公務員に無駄な抵抗ヤメロと逝う快感←


「コレは強制調査ですか?ソレとも任意?もしや、査察なら裁判所の令状を拝見したいのですが」

「そんなモノはナイ!任意調査だ。香港人にしちゃ日本の税務署に詳しいようだから言っておくが、我々は料調だ」

「え?資料調査課ですか?ソレにしちゃヤタラとコジンマリした調査ですね?ますます怪しいな。あと、念のために逝っときますが、私は3代目の江戸っ子ですょ。山の手だけど」


しまった、と逝う顔をするゼーム氏。


「君は"ノワル・インターナショナル"の代表者ではナイのだな?代理人か?」

「いいえ。てっきり私個人への税務調査かと思い対応しました。貴官が私への確認を怠ったので。で、御覧のとおり、コチラは今日は園児ばかりでセンセも保護者もいないよーですょ?任意調査なら日程はリスケが筋では?」

「おととい来やがれ!」


最後はヤタラ古風な捨てゼリフを残して引き上げるゼーム氏。

実は昔気質で熱心な国税徴収官なのかもしれないなとも思う。


階段を降りて消えるまでゼーム氏を見送ると"ゆるカル▼"JKトリオの大歓待を受ける。


「ありがとー!テリィたん、神!」

「どーなるコトかと思ったん!」

「手っ取り早く御屋敷が炭疽菌に汚染されてると脅す手もあったけど…マァ当たり前のコトをしたまで…ってかナデシ!巨乳を押しつけるな(ミユリさんの前では)!」


で、僕は、キャピキャピするJK達の頭越しに壁際の本棚に向かって声をかける。


「税務署は帰ったょ。出ておいで」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


以前は"絶滅予言集"とか並んでた壁際の本棚は、今は"イソップ物語"に置き換わってるが、ソレが本棚ごとズズッと横スライドw


本棚の裏は細長い隠し部屋になっており、手前から撮影スペースや録音ブースが横一列に並び、その間をギッシリ機材が埋め尽くす。


バーチャルアイドルの制作現場か?

すると、移動イスに座る園児wは…


「ヒカル先生!」

「ええっ?行方不明に見せかけズッとココにいたん?」

「で、何してたの?ココで」


"ゆるカル▼"トリオが口々に叫ぶ。

ソレには一切応えず立ち上がる園児。


「メイド長と作家のコンビって貴方達?」

「違う。でも、作家とメイド長のコンビなら僕達だ」

「どっちでも良いわ」


良くねぇ!


セミロングのモーブな暗髪メイドは、見た目は知的なんだが、受け応えが残念←

で、177cmの僕の前に立つが、コレがホボ同じ背丈で絶望的に園児に見えないw


あ、ヒールかwでも園児ナンだろ?

しかも、ヤタラと無機質な口ぶり。


「何で隠し部屋がわかったの?」

「目からX線が出るンだ」

「アンタ、ばかぁ?」


わぉ可愛げねぇ!


ミユリさんを振り返ると、肩を震わせクスクス笑っている。

床の本棚がズレる跡でわかったンだけどマァ今は黙っとこw


急に、何だか全てが虚しくなり"ゆるカル▼"トリオに暗髪園児を指差し「とにかくセンセは見つけたから」と告げ帰ろうとスルと…


「お待ち!」


おい!園児だろ?悪の女幹部やソバ屋の出前じゃあるまいしソノ呼び掛けアウトでしょw


「IT株で失敗した。国税庁と証券取引委員会から調べられてて、警備会社にも教えてない隠し部屋に身を潜めてた。だから…助けて、テリィたん」


だから、そーゆー逝い方もヤメなょ?

もっと元気で天真爛漫に幼児らしく!


第2章 サイボーグ園児の登場と退場


でも、良く見れば大きな瞳がお願いモードで濡れた、最近流行りの"マスク映え"系だ。

フト、マスクをさせたくなった僕は変態か?とにかく!完璧に無機質なサイボーグ園児w


「助けて欲しいなら、先ず名を名乗れょ。メイドネームは?」

「当園ではメイドは園児だ。因みに客は御主人様ではなく保護者様だ」

「ん?さっきお兄ちゃんとか呼ばれたような気もスルが…ま、いいや。じゃパパとママに御名前を逝って御覧?」←

「ヒカル。ただし、私は教諭だから注意しろ」


可愛くねぇ!


ツンデレとも違う。

全く無機質なンだ。


「で、センセは追われてるみたいだけど、容疑は何かな?脱税?」

「その前に、国税を追い払ってくれた御礼をしよう。はい、コレ」

「コインロッカーのキー?(秋葉原)駅の?」


うーん。ますます怪しい展開だ。


前に似たシチュエーションで貰ったキーでロッカーを開けに逝ったら警視庁公安部外事二課(ソトニ)に駅ホームで組み伏せられた経験があるw


ソレに、この隠し部屋はバーチャル園児"よーち園コちゃん"の制作スタジオなんだが…

どうやら国税に目をつけられた"ノワル・インターナショナル"のオフィスも兼ねてる?


ヒカル先生の供述も曖昧だしサイバー屋のスピアを呼びPCを調べてもらおう。

あ、スピアは僕の"元カノ会長"を自称してるケド彼女には色々と貸しがアル。


いつゼーム氏が逆襲して来るかも知れズ、とりあえず今日は閉店にして、締め切った御屋敷のそのまた奥の隠し部屋で作業を始める。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一心不乱な解析作業は約2時間で終わる。

スピアはトレードマークの赤ジャージ。


で、その下はコレまたトレードマークの…

ま、とりあえずスピアのブリーフィング←


「コチラは、カフェの運営会社だけど、実態は香港の信託銀行を隠れ蓑にしたペーパーカンパニー。株取引で失敗したトコロにコロナショックで傷口が全開、帳簿上は約1千万香港ドルの借金がアル。マァ破産直前って感じ?」

「ん?投資会社なの?」

「いいえ。メインのビジネスは資金洗浄(マネーロンダリング)ね。この幼稚園カフェ以外の、あらゆる萌え系ビジネス、つまり、カフェやクラブや居酒屋やレストラン、あと、帳簿に意味不明なコードがいくつかアルから、恐らく麻薬と売春だと思うけど、多分、香港系資本の秋葉原ビジネス全般の儲けを一手に資金洗浄してる。こりゃ、国税が目をつけるハズだわ」

「ナルホド、ココを抑えれば、香港経由の地下経済が一気に明るみに出るワケだ」

「で、手数料でソコソコ儲けてたンだけど、多分カモフラージュでイキナリ巨額の借金を計上したから、逆に目立っちゃったのね。恐らく香港の誰かの借金を肩代わりしてンだと思う。貴女、香港の人?」


スピアに尋ねられ首を横に振るヒカル。


「でも、貴女も凄腕のサイバー屋さんなのね。貴女自身も、マルウェアの売買、ボットネットの時間貸し、スパム送信サービス、サプライチェーン攻撃、個人情報やクレジットカード情報やアカウントの売買、銀行口座やキャッシュカードの売買、あぁ国籍まで売り買いしてるw頭が下がるわ。貴女って、意外に働き者なのね」

「この短時間に、よく調べたな。あと、個人サイトの乗っ取りビジネスも儲かってイル。ソレと最近になって、やっと違法扱いになったゲームのバックアップデバイスの売買も。裏基盤と裏ロムの売買、ヲタク殺しのデジタルアイテム偽造、シリアルキーも偽造してる。バグを利用したキージェネレータの売買も得意だ。あ、未だ余力アルから良いお仕事あったら回して欲しい」

「私に営業しないでwしかし、貴女がスゴいと思うのは、コレだけ手広くやっていながら、記録上は、貴女には財産もなく、何処にも住んでいないコトになってる…会社の帳簿はアレだけ派手なのに」


ヒカルは鼻先でフフンと笑う。


「お子ちゃまなヲタクに話すコトなんか何もナイ。私はね。貴女(スピア)くらいの背の時、ある国の収容所にいた。アソコに比べれば、アキバはお花畑みたいな街。ココでは、メイド、耳かき、リフレ、洗体。全部ひと通りやった。でも、サイバー屋が1番儲かると最後に気がついた」


ココまで一気に話したヒカルは、急に僕の方を向き直るや、イキナリ口調を変えて来るw


「でもカワイイ。テリィたん、貴方ゲイでしょ?でも、私だって、貴方の推し(ミユリさん)より若くて見た目も悪くない。ねぇ。私を抱きしめて。誰かに抱きしめてもらいたいの」


見事な豹変ブリだょw節操NASA過ぎ!


でも出来れば、そーしてあげたかったが…

残念だけど、ソレは出来ない相談となるw


ピッキングして来た目出し帽まで全身黒の男が拳銃(グロック19)を振りかざして叫ぶからw


「全員、両手を頭の後ろで組んで床に(ひざまず)け!ヒカルは…俺が預かる!」


第3章 Vtuberの正体


国税の次は強盗かょ?ヒカル教諭には、ホント"推し"が多いな。人気抜群だょトホホ。

果たして、ヒカルを拉致してから10分後、誘拐犯から秘匿性の高いテレグラムでメール。


万世橋(アキバポリス)に通報したらヒカルの命は無い。アレはあるか?"


直ちに返信。


"アレはナイ。しかし、在処(ありか)を知っている"

"教えろ"

"会ってヒカルと交換で教える"

"今から10分後。中央通り交差点。旧ヤマギワ電機側。テリィ1人で"

"ROG"


「うーん。誘拐した奴は、確かに武装した悪人だけど、個人営業臭いな。ヤリトリに香港マフィア的なネットワークを感じない」

「そんなコトより!テリィたん、眠そうだけどチャンと起きてる?お紅茶は?」

「no thank you。バッチリだょ」

「気をつけて!テリィたん!私達のバイト代がかかってるん!」

「駆け引きは無用です。やることだけやってすぐその場を離れてください」

「わかってるょ、ママ(ミユリさん)


最後にスピアから作戦指示。


「でも、もし出来れば電話番号か何かがわかれば…ソレさえわかれば、色々と調べられるので」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


交差点に逝くと6.8(とおりまじけん)の花束が路上に置かれてあり、テレグラムに従い中のメモを読んで旧サトー無線脇の路地に入ると…奴がいる。


背後に立ち、目立たない位置で背中に多分拳銃(グロック19)をつきつけて耳元で囁く。


「俺をハメたら殺す。ダイヤを出せ」

「テレグラムでも話した通り、ダイヤは在処を知ってるだけで、持ってるワケじゃない。ヒカルは?生きてルンだろーな?」

「俺は、マフィアじゃない。こんなコトしたいと思うか。しょうがなくてやってる。あんなサイボーグ娘でもセックスは上手いし、殺すには可哀想だ」

「事情を聞こう」

「大学時代に萌え系DJをやってから、卒業後あらゆる秋葉原ビジネスに乗り出し…自然と麻薬取引と売春にも手を染め、今ではソレが本業になっちまった。女を風呂に沈める時のモットーは"愛と優しさ"だ」

「哲学だな」

(つまず)きは、ウチのカフェで働いてた、あの無機質なサイボーグ娘だ。アイツの脳内には、守銭奴プログラムが走ってる。アイツが俺の人生をぶち壊した」

「僕を信用しろ。悪いようにはしない」

「さっさとダイヤを渡せ」

「何度も逝わせるな。持ってない。在処を知ってるだけだ。ヒカルを返せ」

「俺がダイヤを手に入れたとメールすればサイボーグ娘は返す。でも、ホントに在処を知っているのか?」

「ほら見ろ。秋葉原駅のロッカーキーだ。見たコトあるか?」


すると、奴は左手にスマホ、右手に拳銃だったが、両方とも地面に置いて、ロッカーキーを日に透かしたりしては頭をヒネっている。


僕は、右手で拳銃を拾って奴に向け、コレでアッサリと形勢逆転だw


「大人しく手を上げろ」

「あ、ソレ、モデルガンだから」←

「やっぱり?でも、僕が欲しいのはコッチの方なんだ」


僕は、左手で奴のスマホを拾い、最後に奴がかけた電話番号をスピアに送信する。


「俺を…ハメたのか?」

「えっ?僕をハメてルンじゃナイのか?」

「で、どーする?俺を万世橋(アキバポリス)に突き出すか?」

「何で?僕達にモデルガンを見せびらかした罪か?好きにしろょ。ダイヤが待ってルンだろ?」

「そ、そーなんだ。じゃ行くょテリィたん。借りが出来たな。サイボーグ娘は"アキバよーち園"に帰しておくから」


ダイヤ?を目指してイソイソと人混みに消える誘拐犯。

"クラブ ガセ"の角を曲がる時に手を振られ振り返す←


ヤタラとフレンドリーな幕切れだw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


電話番号から特定したスマホの信号がアイドル通りの高層マンションから出ている。

とりあえず、無事に解放?されたヒカルとミユリさんとスピアと僕とで現場に急行。


宅急便と一緒にオートロックを抜け目指すは最上階。

何とワンフロアをブチ抜きだwアラブの大富豪かょ?


迷わずピンポン。


「こんにちわ!政府から新型コロナ用のマスクをお届けに上がりました!」

「えっ?もう来たの?未だ閣議決定の前なのに…」

「高額納税者だけの優先・先行配布です!」


あらそーなの、とか逝いながら、ガウンを引っ掛けたおばさんがドアを開ける。


ヒカルが叫ぶ。


「ママ!」


第4章 遥かなる大団円


「なぜ、お前がココにいるの?誘拐されたンじゃナイの?」

「解放されたのょ、ママ」

「こんなに早く?」

「私はね。ママより腕の良いヲタクとヤッてるの」


ヒカルは恋人気取りで僕と腕を組むw

マンザラでもナイが、何なんだコレ?


「男はね。ヤッた女には弱いのょ。ママが教えてくれたじゃない?」

「ヒカル。アンタは小さい頃に収容所で苦労したからヒネくれてる。アンタを見ていると可哀想になるわ」

「可哀想なのはママょ」


ヒカルはママ?を指差したママ、部屋にズンズン入り、僕達もゾロゾロと後に続く。

窓の下には、聖地アキバを睥睨する素晴らしい景色が広がる。地平線が丸く見える。


「幼稚園カフェも、他のリフレやクラブもみんなママの経営なの。で、私は前から、あの幼稚園カフェに隠し部屋があるコトは知っていた。でも、ママは隠し部屋の暗証番号を教えてくれなかった。その時にようやく気づいた。これが私たちの親子関係だと」

「違うわ。ヒカルを巻き込みたくなかっただけ!貴女を、あの忌まわしい香港の連中に触らせたくなかったの」

「ソレこそ違うわ。ママは、いつでも出し惜しんだ。私が欲しがるモノは、どんなモノでも決して与えようとしなかった。そうでしょ?ママ!」


コレは…親子ゲンカなのか?ヒカルが感情を露わにして突っかかって逝く。

無機質なサイボーグが、初めて露わにスル感情は、母への愛の渇望なのか?


「あの部屋はね。香港マフィアが築いた日本進出のための拠点なの。そして、あの部屋の主ヴィバは、香港マフィアが日本経済に送り込んだ刺客。彼は、自分の素性を隠して私に近づいたけど、私は、知っていてソレを許した」

「ヴィバ?あのママの共同経営者の?どうせ稼ぎのないヒモ野郎だと思ってたケド」

「ヴィバは、香港地下経済が生んだバケモノょ。そして、ママの愛人…だった。でも、ヴィバは、私の方の懺悔は、許してくれなかった。ママは、若い頃お金が必要で映画に出たの。ヒカルとの生活費を稼ぐために。ヴィバの香港の友達がソレを見つけて、ソレで…」


アジアでは日本のAV(アダルトビデオ)ってスゴい人気らしくて、実は"cool Japan"の隠れた尖兵なんだけど、そのコトの弊害ががこんなトコロにもw


「ある日、ヴィバから別れ話を切り出されたわ。今まで2人、力を合わせて秋葉原ビジネスを成功させて来たのに。今更そんな。私は骨折り損なの?嫌よ」

「ソレでヴィバを…売ったのか?」

「YES。ヴィバは、秋葉原ビジネスの儲けから着服横領を繰り返してた。香港マフィアは、賞金付きでヴィバを追ってた。だから、どの道ヴィバは終わりだったの。で、私がヴィバの居所を教えた。香港の連中に」


ココでヒカルが色めき立つw


「待って!私とヴィバは結婚の約束をしてたのょ!もう付き合って2月になる。一緒に逃げようって、彼が私に買ったくれた1千万ドルのダイヤ。先月2人で買った。見せてもらったけど、とても綺麗だった」

「えっ?もしかして、ヒカルはヴィバとか逝うオッサンをママンから略奪したってコトか?」

「彼の方から来た。彼がママのトコロから逃げて来て、自分から私の胸に逃げ込んで来たのょ。アキバにいたらお仕舞いだ、と逝ってたわ。刑務所に行くか、香港からの殺し屋に消されるか、そのドッチかだと逝ってたわ」


今度は、ママンが色めき立つ番だw


「ヴィバは、私を捨てて娘と逃げようとしてた。ダイヤと共に。私には一切残さズにょ?娘が、実の母親である私よりも、私の愛人を愛した。ねぇ。私がどんな気持ちになると思う?」

「お辛いでしょうね…しかし、母娘で名セリフの応酬だな。ホント、ソレゾレ女優賞モノだ」

「ママの知らないヴィバの居場所を教えるから、ねぇ私と約束して。先ず、私を万世橋(アキバポリス)に起訴させないコト。証言の類も一切お断り。それで良いなら教えてあげる。私は、彼の命の綱である(ドラッグ)を握ってる。彼は、私から離れられないの」


そう逝って胸を張るヒカル。


彼女は、誰に対して胸を張るのか?僕達?ソレとも愛人を略奪した実母か?

いずれにせよ、僕はココで母娘に対し、話しておかなきゃイケナイコトが…


「その、ヴィバ氏に…どうやら間違った鍵を渡しちゃったみたいなんだ。いや、ホント。申し訳ナイ。ワザとじゃナイから」

「え?どーゆーコト?」

「秋葉原駅のコインロッカーって、色んな人が色んな目的で使うだろ?その中に、いわゆる"セイフティボックス"と呼ばれるロッカーもあって、ソレが何故だか、我が国のその筋の人達には知られちゃってルンだょね。で、その筋の人達は、そのロッカーを誰が開けに来るのか常時見張ってるンだけど、そーとは知らない人が迂闊にロッカーを開けに来ると、たちまちアチコチから色んな人が飛び掛かって来て、まぁ俗に逝う逮捕をされちゃうワケらしい」


いや。ホントの話だ。前に僕とミユリさんもホームに叩きつけられたコトがある。

その時、ミユリさんは仲直りデート用の清楚系ワンピだったのに大乱闘になって…


「で、駅構内のソバ屋でバイトしてるサマーって友人から、さっき連絡があって、何でもさっき、例のコインロッカーの辺りでスンゴい捕物があったンだってw」

「…私達、母と娘と双方に相手がダイヤを持っていると思わせるなんて。アキバのヲタクって意外と賢いのね」

「ママンのような名優に褒められるとは光栄だね」

「私達が秋葉原で稼いだお金がダイヤになっている、というのもハッタリなの?」

「まさか。ダイヤはあるでしょ」

「では、在処を教えて。ずっと私達母娘を弄んでいたんでしょう」

「振り回されてたのは僕達の方ですょ」


ラチがあかないとママンは困り果てる。

ココでサイボーグ娘にバトンタッチだ。


「テリィたんとなら、ズッと気持ちが通じ合うと思ってたのに」

「通じ合立てる…ょ?」

「こんなコトをスルつもりはなかったの。ヴィバにやらされた。計画したのは全部ヴィバ。私達母娘は、奴に利用されたバカな女なの」

「うーん。難しいトコロだけど、多分ヴィバ氏…あ、もう逮捕されてるだろうからヴィバ容疑者かな?…はやらせてるつもりで、実は貴女達母娘に操られてたンじゃナイかな?見事に母娘で遺伝してる、その大きな瞳と唇が武器だ。加えて、その素晴らしい演技力だょ。僕達もスッカリ騙された」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日早朝、万世橋(アキバポリス)は香港マフィアの一斉摘発に踏み切る。

関係者だけでかなりの数に上るらしいけど、全貌は不明。


ま、ソレ以上に不明なのは、その他に何人潜伏しているのかだ。

とりあえず、香港の地下経済の尖兵達は一時的だけど姿を消す。


そして、他にも姿を消した人達がいる。

ヴィバと…ママンのおふたりナンだが…


ヴィバは、確かに秋葉原駅構内で公安に身柄を拘束されたが、その後一切の消息を絶つ。

気がつくとママンも姿を消し、その後姿を見た者はいない。実の娘のヒカルも知らないw


ヴィバは、もともと社会病質人格だから、死亡説とかも囁かれてる。

まぁ名誉の殉職とは逝かナイまでも、そんな線もアリかもしれない。


でも"証人保護プログラム"に似た"何か"により名前を変え、香港マフィアから身を隠して別の人生を楽しんでるような気もする。


と逝うのも、アレから何度かバーチャル園児"よーち園コちゃん"の新しい動画が配信されて、コラボカフェは繁盛してイルからだ。


僕としては、もし許されるなら、あの2人が夫婦となり添い遂げたコトを祈りたい。

ヒカルには悪いが、何故か無罪放免となった彼女はまた新たな夢を追えば良いのだ。


このアキバで。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


え?ヒカルから預かったロッカーキー?

ソレが…どうも落としたみたいナンだw


いや。ホントに面目ナイな。

万世橋(アキバポリス)の近くなんだけどね←


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「テリィたんって、今回の件で、サイボーグ園児に異様に甘くなかった?」

「えっ?だって"マスク映え美女"が悲しんでたンだゼ?誰だって甘くなるダロ?ヲタクなら」

「ソレに私は、お金は御主人様方を驚かせるためにだけ使おうと思っていたの!」

「その"ぶりっ子路線"はヤメて、ヒカル。痛いの。全然似合わないから。どーせ現金(キャッシュ)をタンマリ持って海外へ高飛びする気だったンでしょ?」

「まぁヒドい。あんまりだわ。プンプン」←

「その新しいキャラ、呆れるを通り越して激しい脱力感が新型コロナ級だわ。でも、ヒカルは自分の気配を消すのは得意なのに、貴女のママンは、正反対の性格みたいね?」

「えっ?どーゆーコト?ママがどーかしたの?」

「ヒカルのママンだけど。先月まで施設に入ってたクセして、最近になって外車を乗り回すわ、高層マンションは買うわで、軒並みSNSで自慢しまくりょ?このわかりやすい性格、ヒカルも少しは遺伝プリーズ。ってか、新キャラはコッチでどう?地で逝けルンじゃナイ?しかし、悪人って、みんな最後は生まれ故郷へ帰りたがるってホントね。分かりやすいお手本 thank you」

「…貴方達、いつから私の存在を疑ってたの?テリィたんは?」

「初めて"私立アキバよーち園"に御帰宅して隠し部屋で逢った時」

「ウソょ」

「ヒカルが…ヒカリ輝いて見えた。金が消えて店長も消えたと逝うのに。君は、星が萌え尽きる最後の瞬間のように眩しかった」

「私を誰が先に口説き落とすかで、御屋敷のみんなで賭けをしたんでしょ?」

「賭けにも勝ちたかったケド、ソッチは無理だった。賭けには弱いがヲタクのアドバイスは、やっぱり聞いといた方が良いと思うょ。何たって、ココはアキバだからね」


ソコへ、常連だけど、腕利き刑事の新橋鮫が御帰宅して来る。

カウンターの中のミユリさんが人差し指をソッと唇に当てる。


「おかえりさないませ、御主人様!」

「テリィ、何の話をしてた?」

「別に」



おしまい

今回は最近ドラマでよくモチーフになる"Vtuber"をネタに、実は香港地下経済の尖兵であるVtuber、そのVtuberを愛してしまったメイド母娘、地下経済を追う国税庁の役人などが登場しました。


海外ドラマで見かけるNYの都市風景を秋葉原に当てはめて展開しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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