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9 シチュー


 目が覚めると、ウィルとハティはとっくに起きていて、草原で遊んでいた。太陽の光がウィルの金髪とハティの銀の毛並みに反射してきらきらしてる。

 きゃっきゃといい笑顔ではしゃぐウィルは天使だわ。

 ベッドでまどろみながら見る、幸せすぎる光景。


 こんな毎日がずうっと続いたらいいな。

 

 よし、私も起きて朝ごはん作ろうっと。


 朝ごはんはスープにします! 材料も調味料もたーっくさんあるから贅沢なスープにするつもり!


 まずは火を起こさないとね。


 火の起こし方なんて知らないけど、こんなときのために本がある。

 コーネットの屋敷から持ってきた本の中に『野営時に活躍する知識』って指南書があったので、これを使う。野営する兵士に向けて書かれた本らしく、火の起こし方から食べられるきのこやら、果物やら、図解つきで細かく解説されている。まさに手とり足取りってかんじ。


 こんなの楽勝だな!


 ………って火起こしを始めたはいいけど、火、いっこうにつきません。


 あれー? おかしいな。ちゃんと解説通りにやってるのに。集めた木が悪いのか?


「なにしてるの、姉さま」


 きょとんとウィルが首を傾げる。ぐぅかわ。

 隣にいるハティさん、なんか昨日よりでかくなってませんか。どういう体の仕組みなんだ?


「火を起こしてるんだけど、なかなかうまくいかなくて」


 ハティがバウと鳴いて、集めた小枝の山に進み出た。ふうっと息を吹きかけると───


「…………」


 なんということでしょう。火が着きました。


「すごいね、ハティ! えらいえらい」


 ウィルは簡単に受け入れちゃってるけど、普通『犬』は火起こしなんてできないんだよ。ていうか、ハティは犬じゃなくて『フェンリル』だっけ。愛犬が謎生物すぎる。


「今の魔法? ハティは魔法を使えるの?」


 バウ、とハティが鳴く。すごいだろう、と言わんばかりだ。


 魔物には魔法を使える個体がいるって本で読んだ。ハティはやっぱり魔物なのかなぁ。……あんまり深く考えないようにしよっと。ハティが何者でも、大切な仲間であることに変わりはないしね。うん。


 ともかく、火はついた。

 よーし、美味しいスープを作るぞ!

 牛乳は日持ちしないからすぐ消費しなきゃだし、小麦粉とバターもあるから、シチューを作ろうかな。レシピはもちろん、前世の記憶から引き出します。


 前世の実家はレストランだったから、小さい頃からよく手伝いをさせられた。おかげで料理はけっこう得意なのだ。


 川の水はちょっと不安だから、屋敷でたっぷり『収納』してきた綺麗な井戸水を使う。


 手伝いたいとウィルがごねるから、きのこを手でちぎって鍋に投入する係に任命したら嬉々としてやってた。ちょっと手付きが慎重すぎて可笑しかった。


 『収納』から取り出したテーブルに、クロスをかけて、小花を一輪挿しの花瓶に飾って可愛く整える。出来上がったシチューとパンを並べて、さぁ、朝ごはんだ!


 ウィルは初めてのシチューにすごく感動していた。濃厚な味付けがお気に入りだったみたい。きらきらした目で「おいしい!」って何回もおかわりしてた。


 ハティにもおすそ分け。居間に飾ってあった大皿を『収納』から出して、それをお皿にしました。ウン百万する飾り用の皿? 知らないよ、そんなの。本来、皿は料理を盛るもんなんだからさ。この皿もきっと喜んでるって。


 ハティもシチューが気に入ったみたい。


 夜ご飯まで保たせようと思って、キッチンから頂戴した大鍋で大量に作ったのに、ぜんぶ無くなっちゃった。


 しょうがない。お昼はパンケーキでも作るか。夜は………


「シチューがいい!」

 

「えー、飽きない?」


「ううん、ぜんぜん!」


 ということなので、夜もまたシチューになりそうです。

 チーズがあるから、グラタン風にアレンジしてみるのもいいな。火のついた枝でチーズを炙ればそれっぽいのができそう。

 


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