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83 セオとビビの絆

本作『転生令嬢は逃げ出した森の中、スキルを駆使して潜伏生活を満喫する』

ツギクルブックス様より9月10日書籍発売です!

いよいよ迫ってきました〜!

ウィル視点のショートストーリーも収録しているので、ぜひチェックしてみてください☆

現在Amazonで予約受付中です(・∀・)


投稿が遅れてすみません!

今後は更新スピードアップ(週2回投稿)していきますので、引き続きお付き合いよろしくお願いします。


▷前回のあらすじ

セオに新たなスキル『絶対把握レベルMAX』が覚醒。だけど、セオは元々『盾術』スキルを持っていた事実すら知らなくて…?



「すごい、ぜんぜん当たらないよ!」


「ははっ、俺はまだまだ余裕だぞ。未来の勇者の力はこんなもんか? ほらっ!」


「わっ」


 盾と剣で打ち合うセオとウィル。

 すごいスピード。

 出会った当時、セオを『鑑定』するとスキル『盾術』はレベル5だった。つまりセオは『盾術』を持っていると知らないままにレベリングに成功していたというわけ。たぐいまれな戦闘センスのなせる技だ。そこへイヴ作の盾が与えられ、スキル所持の告知をしてあげればこのとおり。

 フォーク一本でジャイアントベアーを倒しちゃうウィルの戦闘能力を凌駕する、最強戦士の出来上がり。

 セオの盾が宙をえぐるように繰り出され、ウィルの剣が飛んだ。ブンブンと回る剣は例のごとくアロンのすぐ隣に刺さって着地。スキル『水牢レベルMAX』の練習をしていたアロンが真っ青になって飛び上がった。


「あ、すまん」


「お前ぜったいわざとだろ!!」


「アロンはどうにも武器に好かれるなぁ。いや、これはすごい才能だぞ」


「よし、そこになおれ。私の『水牢』の練習台にしてあげよう」


「こい、俺の盾で受け止めてみせる!」

 

 ビビを守らなきゃっていつも緊張してる様子だったセオだけど、最近はずいぶん雰囲気が柔らかくなった。口調も、くだけてきてる。私達のこと、信用してくれてるんだ。そう思えて嬉しい。


 青空のもと、巨大な水球が盾に当たって弾けた。無数のしぶきが上がり、その下でウィルがはしゃぐ。姉さまー!と呼ばれたので手をふって応える。水滴を口でキャッチして遊ぶウィル、んもう、可愛すぎて姉さま困っちゃう。

 心のシャッターを切るのに忙しい私の隣で、ビビが少し沈んだ調子で言った。


「すごいな、セオの『盾術』は」

 

 7歳のとき教会で受ける『判定式』

 そこで判明するのは、『称号(スキル)』の有無と魔力量。この世界に生きる人々は、国・性別・身分関係なく、7歳で自分の能力を把握する。はずなのだけど……

 7歳のとき『判定式』を受けたはずのセオは自分が『称号(スキル)』持ちだということを知らなかった。

 なぜか。

 教会が教えてくれなかったからだ。

 どうして教会は、セオの能力を黙ってたのか。

 私のせいだ、とビビは言う。


「セオは私が拾った、孤児だったんだ」


 6歳のビビはある日城を抜け出して城下町に出た。そこで柄の悪い少年たちに絡まれ、「気持ち悪い」と黒髪をナイフで切られそうになったそうだ。そこへ助けに入ってくれたのが当時7歳になったばかりのセオ。彼は体格の何倍も大きい少年たちを相手にボロボロになりながらも戦い、最後には勝った。セオはビビの黒髪を「気持ち悪い」なんて言わなかった。セオの亡き母も黒髪だったから。

 ビビとセオは仲良くなって、ビビは城を抜け出してはセオと遊んだ。そしてセオが孤児であることを知る。それならばと、ビビはセオを自分の従者として雇い入れることにした。父たる皇帝も、兄弟も反対しなかった。お前には孤児の従者が似合いだと、そう言わんばかり。でも、それでよかった。ビビとセオは誰にも咎められることなくいつも一緒にいられるようになるのだから。

 そうして間もなくやってきたセオの『判定式』。そこで彼は"無能"の烙印を押された。本当は、『盾術』という『称号(スキル)』があるにもかかわらず。


「私の従者が称号持ちだと面倒だって、父上たちはきっとそんなふうに考えたんだ。従者が活躍すれば、その主人の評価が上がる。皇家の汚点である黒髪の皇女には目立ってほしくないのに、これは困った事態だって。だから、教会と結託してセオの能力を隠したんだ」


 笑える、と言ったビビはそのくせ泣きそうな顔で続けた。


「私がセオを従者になんかしなければ『判定式』後、国に登用されてしかるべき地位につけただろうに。私と一緒に国を追われ、野垂れ死にの憂き目に遭うこともなかっただろうに。一緒にいたいって、私が願ったせいで。セオの輝かしい未来を、私が奪ったんだ。セオはきっと私を恨んでるよ。私、どうすれば」


 うーむ、これは相当こじらせてるな。

 私の『鑑定』によりセオのスキルが判明してからというもの、ビビはずっとふさぎ込んでいた。

 でも、私に言わせればビビの悩みは杞憂っていうか、まったく無意味に感じられる。

 だって、ビビがセオの輝かしい未来を奪ったなんて、セオはぜんぜん考えてないはずだもん。恨んでるなんて、もってのほか。


「輝かしい未来って、ビビがいない未来? それって、本当に『輝かしい』のかな」


「え?」


「セオはさ、ビビの側にいるのが一番幸せで、一番輝かしいって思ってる気がするけど」


「その通りっすね」


 いつの間にかそばに来ていたセオが、コツンとビビの額を叩いた。水色の瞳をうるませたビビがセオを見上げる。


「何をぐちゃぐちゃ言ってんですか、ビビ様」


「だって」


「俺は『盾術』持ちの肩書がなくたって、騎士団のナンバー2まで登り詰めたんですよ。それなりに輝かしい地位にあった。それでもビビ様と共に逃げたのは、そんな地位よりビビ様のほうが大事だったから。なんでそれが、わかんないんです?」


「でもでも、『盾術』の称号ってすっごく珍しいんだぞ? 本来であれば『盾の勇者セオ様』とか呼ばれてチヤホヤされてたかも」


「だから興味ねぇんだって!」


 セオがビビの両頬を包み、ぐっと顔を近づけた。


「俺の願いはただ、あんたの側にいることなんだよ」


「セ、セオ?」


「そりゃ『盾術』の称号持ちって知ったのは嬉しかった。でも、それだって、あんたをもっとしっかり守れるようになるって思ったからで。昔にわかっていれば有名人になれたのにとか、これっぽっちも思ってないからな!」


 感情豊かで泣き虫なビビが、セオの感動スピーチに耐えられるわけがなかった。

 うわーんと子どものように泣きじゃくりだしたビビは、セオの足にひしと抱きつく。それからドームいっぱいに響くような大声で言った。


「私、私、セオのこと、責任持って幸せにするからな!」


「それプロポーズですか」


 からかうように笑ったセオだったけど、うん、イヴの恋愛講座のおかげで桃色センサーが敏感になった私にはわかる。

 ビビは本気だ。

 

「そう受け取ってくれてもかまわない!」


 顔を耳まで真っ赤にして叫ぶビビ。その顔をのぞきこんだセオは不意打ちをくらい、さっと横を向く。その頬も真っ赤に染まっていた。


 ひゅー。人の恋愛を観察するのってたーのしい! それが大好きな二人ならなおさら。幸せな気持ちになる。無性に誰かを抱きしめたくなるっていうか。


「騒々しいな」


 珍しく狼姿で眠っていたハティが起き出した。私とビビはハティのお腹を枕に、3人で日向ぼっこしていたのだった。

 言わずもがな、イヴはクーラーがないのになぜか涼しいログハウスに引きこもっております。


「ビビがね、セオにプロポーズしたの」


「……ほう?」


 未だビビに足を拘束されたままドギマギするセオを、ハティは目を細めて見る。


「メスから言わせるとは、情けない男だ」


「お、俺だっていずれはと……!」


「君のそれもプロポーズっていうか、告白? セオは『従者が主人に恋するなんて許されない』とか考えて自己完結する空回りタイプだと思ってたんだけど、どうやら私の思い違いのようだね」


 アロンにまでからかわれて、セオはいよいよ顔を赤くした。


「さっき飛ばした剣の仕返しか」


「私は根に持つタイプなんだ」


 アロンはにんまり笑う。さすがです。


 ちなみに、セオの足にしがみついたビビは目をぎゅっと閉じてこちらの話なんてまるで聞こえていない様子。自分のトンデモ発言を反芻して身悶えているのだろう。うむ、私にも経験があるのでよくわかる。ハティに自分からキスした日には夜も眠れなかった。自分の行動力に、自分でびっくりしちゃうんだよね。

 「恋は人を大胆にするのよ」なんて、イヴは当たり前のように言うけど、やっぱり、戸惑う。自分の知らなかった自分に出会うと。

 ………て、なんか忘れてる気がするんだけど、なんだっけ。

 ウィルを胸の中に捕まえて頬をむにゅむにゅしながら考える。ウィルを離せー! と足元をちょこまかしてる小動物たちは無視だ、無視。

 唯一、私が森で仲間に引き入れた一角うさぎのアメちゃんだけは仲間たちをおろおろと止めてくれている。ここに混じってる魔物たちは私の『植物創造レベルMAX』で作った作物を食べて私の眷属になったはずなのに、私に対してどうも当たりが強いんだよね。なんというか、ライバル視されてるかんじ。ウィルをめぐる、私達は恋敵なのだ。

 『植物創造レベルMAX』に備わったこの"きび団子"的な能力、もっとうまく使いこなせたらいいんだけど。森で襲ってこようとする魔物の口に、たとえば『りんご』を投げ入れたら、ひょっとすると攻撃をやめてくれたりして。まぁ、仲良くはなれなくても。……ん? 能力?


「……あ!」


 私の声に、みんなが注目した。


「そういえば、セオの『絶対把握レベルMAX』ってどんな能力なの?」


 そうそう、これを聞きたかったのだ。

 字面からいくと、『何かを絶対に把握する』ってことなんだろうけど。何を?

 もしかして、ウィルの『真実の目』と似たような能力なのかな? 人や動物の心がわかるとか……


「ああ、なんか──」


 そういえば、と思考を巡らす私たちに、セオはけろっとした調子で言った。


「相手の攻撃を、ぜんぶ見切れる。なんつーか、相手が次にどんな攻撃を仕掛けてくるのか、どこに打ち込んでくるのか、感覚的にわかるんだよな」


 なんだそれ! めちゃくちゃチートじゃないか!!!



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 ・ララ・コーネット

 ・14歳

 ・スキル:『鑑定レベル5』『収納レベル5』『安寧の地レベル7』『体力∞』『植物創造レベルMAX』『怪力レベルMAX』

 ・眷属:ピッピ他(一角獣×10)、アオ(ブルーサファイア)、モカ他(火鼠×15)、スゥ(トルネードスネイク)、キキ他(居眠りアナグマ×4)、他多数。

 ・称号:神々に愛されし者


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 ・ウィル・コーネット

 ・6歳

 ・スキル:『剣聖レベル2』『体力∞』『真実の目レベルMAX』『駿足レベルMAX』

 ・眷属:ピッピ他(一角獣×10)、アオ(ブルーサファイア)、モカ他(火鼠×15)、スゥ(トルネードスネイク)、キキ他(居眠りアナグマ×4)、他多数。

 ・称号:天使


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 ・アーソロン・ノヴァ

 ・22歳

 ・魔法属性:水

 ・スキル:『水牢レベルMAX』

 ・称号:抗う者


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 ・ビビアン・トランスバール

 ・17歳

 ・魔法属性:風

 ・スキル:『剣術レベル7』『疾風レベルMAX』

 ・称号:トランスバール帝国第一皇女。冒険者。


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 ・セオ

 ・19歳

 ・スキル:『盾術レベル5』『絶対把握レベルMAX』

 ・称号:皇女の盾。冒険者。

 ・補足:近衛騎士団、元・副隊長

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