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8 中立の森


 ハティに乗って目指すのは、『中立の森』。


 4つの国に接しているのにどこの国にも属していない大きな森だ。


 中立の森は、各国の政治的な手出しや人の侵入が禁止されている。隠れるならうってつけの場所なのだ。

 ということで、ほとぼりがさめるまでこの森に潜伏する。


 中立の森までは馬車で2日はかかるはずなのに、風のようなハティの走りのおかげで夜になる前には到着してしまった。


 水辺には魔物や肉食獣が集まる恐れがあるから、川から少し離れたところにある開けた場所を潜伏拠点とすることに決めた。


 コーネットの屋敷から頂戴してきた大きな絨毯を草原の上に出し、天蓋付きのベッドとオイルランプも出す。するとメルヘンな素敵空間の出来上がり。


「わ~! おうちみたい!」


 ウィルがはしゃぐ。

 

 私達はベッドにダイブして遊んだ。お母様のキングサイズのベッドは大きなハティが乗ってもまだスペースに余裕がある。


「今日からしばらくここが我が家になります。ベッドもあるし、食べ物もたーっくさんあります。心ゆくまで食べて、遊んで、眠って過ごすの。どう、素敵でしょ?」


 私の演説をベッドに寝転がりながら聞くウィルが拍手する。ハティも嬉しそうに鳴いた。


 そのとき、遠くの茂みが揺れた。現れたのは一角ウサギだ。ハティが勢いを付けて飛びかかっていく。こんども瞬殺だ。


「つよいね、ハティ! きしみたい!」


 ウィルが緑の瞳を輝かせて、戻ってきたハティに抱きつく。


 騎士か。たしかに、ハティは私とウィルを守るナイトだね。


 私は『収納』からお母様のネックレスを取り出してハティの首にかけた。チェーンが長いから、ハティの太い首でもつけることができた。大きなエメラルドの宝石が首元で光る。艷やかな銀の毛に反射してすごくきれい。


「ハティ、あなたを私達の護衛騎士に命じます。『なんじ、常に我らと共にあり、我らにあだなす者を噛み砕き、邪悪なる魔物を倒さん』」


 騎士の誓いの言葉って、いつか言ってみたい言葉ナンバーワンだったんだよね。中二病心が刺激されるよ。


 ハティは私の求めに応じるようにひと鳴きした。まかせて!とでも言ってるのかな。

 

 夜ご飯は、ソーセージと果物とパンと果汁ジュース。お腹いっぱい食べました。こんなに豪華な食事、私もウィルもはじめてだ。いつもは残り物しか回ってこないんだもん。かわりにお母様たちがひもじい思いをしてるかと思うと、少しざまぁ見ろって思っちゃう。


 キングサイズのベッドで、ハティのあったかい体に埋もれながら眠りにつく。腕の中で眠るウィルはとても幸せそうだ。


 ふぅ、と息をつく。


 家からは逃げ出せた。御者もまいた。友と再会し、思いがけず、有用な移動手段と護衛を得た。


 追手も、まさか私達が一日でこんなに遠くまで来てるなんて思わないよね。彼らがここまで到達するには、まだまだ時間がかかるってことだ。


 とりあえずは、一安心かな。



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