42 眷属? レベルアップ〜『鑑定』レベル4
作り終えた昼食をすべて『収納』し、時間を持て余した私は、ウィルと遊ぶことにした。
ツリーハウスと周辺の庭を使って鬼ごっこをする。
現在の鬼はアロン。
ウィルはツリーハウスにすいすい登って逃げ、私もあとに続いた。
最近、筋力もだいぶついてきて、木登りも楽にできるようになった。
『体力∞』の恩恵で全く疲れないから、筋力さえ追い付けば際限なく動き続けられる。
「君達、おかしいって。どうしてそんな余裕なわけ」
荒く息をしながら、アロンが追いかけてくる。
遊び始めてそんなに時間も経ってないのに、もうへろへろだ。
汗びっしょりで、眼鏡はずれ、結んだ灰色の髪は乱れまくり、なんだか10歳くらい老けたように見える。
「忘れたの、アロン。私達はハティがくれたスキル『体力∞』があるんだよ。簡単に捕まるわけないじゃん」
「不公平だ……」
「オトナの男から逃げるんだから、正当なハンデだと思うけど」
「んなわけあるか」
おや、口調が荒くなっておる。そんなに余裕がないのか。
私とウィルはぜんぜんへっちゃらなのに。元気が有り余ってるくらい。
あ、近くに青い小鳥が止まった。
ウィルのお友達ね。
綺麗な色だなぁ。こんな鮮やかな青、見たことないよ。何て種類の鳥だろう。
『鑑定』っと。
《レベルアップ!『鑑定』レベルが4になりました。説明文が一文追加されます。説明文が4行になりました》
あ、レベルアップ。いつもながら、急なタイミングだなぁ。
説明文1行追加、4行になるのか。
《ブルーサファイア。癒やしの魔法を使用できる魔物。現在絶滅の危機に瀕している。ララ・コーネットとウィル・コーネットの眷属》
ブルーサファイア。宝石の名前が付いてるんだ。こんなに綺麗なんだもん、納得。
ていうか、普通の小鳥に見えるのに、魔物なんだ!? 魔物は凶暴だって聞くけど、ぜんぜんそんなふうに見えないな。
………ん?
『ララ・コーネットとウィル・コーネットの"眷属"』?
………とはなんぞ?
「捕まえた!」
ガシッ、と足を掴まれる。
「あ!?」
『鑑定』に夢中になってて警戒を疎かにしていた。
「ハァ……やっとだ」
アロンはツリーハウスをおりて、へろへろと原っぱに倒れ込んだ。
あちゃぁ、鬼になっちゃった。
アロンにタッチし返すのは可哀想か。となるとウィルだけど……ウィルも疲れ知らずだから、捕まえるのは大変なんだよね。
「おにさんこっちだ。てのなるほぉえっ」
ウィルがツリーハウスの小窓から顔を出して挑発してくる。満面の笑み。もう、可愛いなぁ。
「ふっ。すぐに捕らえてやるぞ。待て~!!」
「きゃ~っ!!」
1時間奮闘してやっとウィルを捕獲。
こ、ここまで時間がかかるとは……
『体力∞』を持っているとはいっても大変だった。
ウィルは元々運動神経も反射神経もいい。それに加え『体力∞』スキルがあるのだから、もう動きが人間じゃない。
猫のように走って飛び跳ねて、なかなか捕まらないのだ。
たぶん、最後に捕まえることができたのは、ウィルが手加減してくれたからだね。
汗びっしょりのアロンにシャワーを浴びるように伝えて、お風呂場に案内した。
うん、予想通り腰を抜かしてました。簡易的なシャワーでも、この国にはない技術力が詰まってるもんね。
最後には悟ったような目になって、
「もう何が来ても、君のことだからってことで驚かないようにするよ……」
なんて言っていた。
驚くのもそろそろ疲れたみたい。
さて、お昼ごはんにしよう。
5人がけテーブルにみんなを呼び、『収納』しておいた料理を取り出す。
一瞬にして、出来たて熱々の料理が目の前に並んだ。
献立はこちら。
・白身魚のフライ、トマト&クリームソース
・オニオンスープ
・胡桃とベーコンと彩り野菜のサラダ
・柔らかい白パン
・桃のコンポート
サラダのドレッシングは、塩コショウとオリーブオイルとレモン汁を混ぜ合わせたドレッシングと、マヨネーズを用意した。
桃のコンポートは、お父様のブランデーと砂糖を使って漬け込んだ甘いデザートだ。
「いいにおい~! はやくはやく~!」
ご馳走を前に、みんなゴクリとつばを飲み込んでる。
「では、手を合わせてください」
「「「「はい!」」」」
「いただきます!」
「「「「いただきますっ!」」」」
がつがつ、がつがつ、ウィルもアロンもすごい勢いで食べていく。
いっぱい走り回ってお腹空いてたもんね。
イヴは桃のコンポートをほおばってる。
それ、デザートなんだけど……最後に食べようよ……
ハティは私の隣の床で、大きいお皿に載せた料理をゆっくり味わっている。
狼の姿だけど、ハティがいちばん上品に食べているように見えるのはなぜだろう。
食後のコーヒー(ウィルはりんごジュース)をみんなに振る舞って、腹ごなし。
まもなくイヴはソファで爆睡し、ウィルはアロンを連れて再びツリーハウスで遊びに出ていった。
絨毯の上に座って、ハティのブラッシングをする。
この豚毛のブラシはお母様が使ってた上等なもの。
ハティはこのブラシをいたく気に入っているから、こうしてよくブラッシングをしてあげている。
気持ち良さそうに伸びをする姿は、体が大きくなっても昔と変わらない。
そうだ、あの『鑑定』の結果のこと聞かなくちゃ。
「ねぇ、ハティ。さっきね、ツリーハウスにいる青い鳥を『鑑定』したら、『ララ・コーネットとウィル・コーネットの眷属』って出てたの。"眷属"って、配下って意味だよね。私、あの鳥を配下にした覚えはないんだけど、ハティが何かしたの?」
「いや。ララとウィルを害するなとは命じたが、眷属になれとまでは命じていないぞ」
「そうなの? じゃあ、どういうことだろう……」
「まぁ、良いではないか。眷属は主を絶対に害せなくなるのはもちろん、主の命令にも絶対服従になる。それだけ、ララとウィルの味方が増えるということだ。問題は何もない」
「うーん。よくわかんないけど、問題ないならいっか」
私が眷属化の原因を突き止めるのは、まだ少し先のことになる。まさか、アレにそんな作用があったなんて……





