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4 根こそぎ『収納』


 屋敷の廊下を歩きながら色々な物に『鑑定』をかけていく。

 得られる情報は大したことないけど、視界の端に躍るポップな文字を見るのは面白い。


 《壺》


 《鎧》


 《窓》


 《ドア》

 

 《シャンデリア》

 

 《ギド・コーネット》


 うえ、はずみで嫌な奴『鑑定』しちゃった。ギド・コーネット。私の2つ上の兄だ。


 ギドは意地悪そうな口元をニヤニヤさせながら歩いてくる。なんだか、機嫌が良さそうね。


「おはよう、"死を運ぶ鳥の君(ララ)"よ。結婚が決まったそうじゃないか。おめでとう」


 私が黙っていると、ギドは哀れむように眉を下げた。


「おや、まだ聞いていなかったのかな? お相手はボルドー侯爵だそうだよ。出世じゃないか。ああ……だけど彼は少し変わった趣味をお持ちだと聞く。変わったものを集めては、壊して捨てるそうだ。先日もオモチャの一つが壊れ、侯爵は悲しんでおられる。よくお慰めするのだよ、ララ」


 ニヤニヤと、気持ち悪い。吐き気がする。


「ええ、お兄さま。侯爵さまの言うことをよく聞いて良い子にいたしますわ」


 グーパンのひとつでもお見舞いしてやりたいとこだけど、我慢する。今はまだ大人しい、いつものララでいなくちゃならない。逃げ出す心づもりであることは悟られてはならないのだ。


 ギドが引き継ぐはずのコーネットの聖剣、あれを『収納』して盗んだら、ギドはどんな顔をするかな。ギドの絶望した顔を直接見られないのは残念だ。


 お父様から、ボルドー侯爵との結婚を命じられ、私はもちろん快諾する。


 侯爵に嫁ぐのは3日後。私は部屋で一人、荷造りだ。とはいっても、私の荷物なんてほとんどない。下着と、服を数着革かばんに入れて終わり。


 私が持つ洋服はすべて、黒。


 『あんたなんて、葬式用の服がお似合いよ』


 お母様からそう言われて、黒い服しか与えてもらえなかったのだ。


 黒は好きだし、別にいいけど。全身真っ黒でカラスみたいだ。


 そういえば、私の名前の由来になった"死を運ぶ鳥"『ララーシュア』の実物は見たことがないけど、もしかしたらカラスと似た鳥なのかもしれない。


 と、表向きの荷造りはこれで終了。


 お次は、屋敷中の金目のものを『収納』の中に放り込んでいく。目立つものを盗むとバレるから、各部屋からちょこっとずつ調度品や宝石を頂戴する。


 お母様の部屋からも、ドレスやアクセサリーをいくつか頂戴した。溢れかえるほど持ってるんだから、ちょっと盗ったくらいじゃわかんないよね。


 視界の端に表示されたリストには、びっしりと品物名が明記されている。


 もうけっこうな量を『収納』したはずだけど、まだまだ入りそうだ。

 これ、どれくらい入るんだろう。大きさも、重さも、制限はないのかな。


 あらかた『収納』が終わって、部屋に戻る。試しにベッドを『収納』してみたら、なんとちゃんと収納できた。


 よし、当日はベッドも『収納』していこう。これで、森の中、どろどろの地面で眠る心配もなくなった。


 私が家を出たあと、空っぽになった私の部屋を見て驚愕する家族や使用人のことは考えないことにする。


 ベッドもどうせなら、お母様の部屋にある天蓋付きの上等なやつを『収納』して行こうっと。

 さすがに今やったら騒ぎになるから、屋敷を出る当日の朝にでも……


 だけど、『収納』の有用性は計り知れないね。

 初代様が魔法をかけて厳重に保管してたのも頷けるよ。



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