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21 潜伏生活開始から2週間

 

 潜伏生活も、今日で2週間が過ぎる。


 生活拠点と、もしもの時の治療薬と、食糧問題の解決の目処は立った。ただし、食糧問題に関しては果物と野菜だけなんだけど。

 

 『植物創造』では、きのこを創造することはできなかった。菌類は植物のカテゴリーには含まれないんだね。

 これまで通り、きのこは森へ採りに行かなきゃだな。『鑑定』さんのおかげで毒きのこの見分けは簡単につくから、特に苦にならない。


 あとは、お肉も生えないかなーって念じてみたけど無理だった。そりゃそうか。植物じゃないもんね。がっくり。松阪牛、食べたかった……


 干し肉も飽きてきたしってことで、生肉を手に入れるため、お肉の解体、一応頑張ってみたんだよ。


 ……でも、私にはできなかった。ハティが捕ってきてくれたウサギで練習してみたけど、吐いた。そんでもって、気絶した。


 3回は試したけど、ぜんぶそんなかんじで断念。


 生肉がほしい。それと、牛乳と、卵と、バターと、チーズと、柔らかいパン……


 私には、ウィルを大きく育てるという使命がある。

 超絶可愛い天使なウィルの顔面偏差値の高さをなめてはいけない。将来は確実に、可愛い系のイケメンに成長する。あの素材をきちんと育てなきゃ、せっかく麗しい容姿をくれた創造神(?)に怒られちゃうよ!


 奇麗な花を咲かせようと思ったら、良い水と十分な太陽光と肥料が必要でしょ?

 ウィルにはバランスの取れた食事が必要なんだ。

 なのに、いま手に入る食材で調理しても栄養が偏ってしまう。 


 ということで、この森の近くにある町へ食材を買い込みに行こうと思います。


 と、その前にまずはお金を稼がなきゃね。


 今の私は銅貨一枚すら持っていない。宝石を売ってお金を得ようとも考えたけど、そこからアシがつく可能性を考えるとどうしても躊躇してしまう。余計な事をして、私達の居場所がバレるのが一番怖い。


 しかし! 私には『植物創造レベルMAX』で作った薬草がある!


 荷馬車も持たない小娘が果物や野菜を大量に売っていると不審がられるだろうけど、薬草は森で採れるしかさばらないからいっぱい売っても怪しまれないはず。


 薬草売りはオイシイ商売だ。

 なんせ、商品の薬草は片っ端から『創造』しまくれば手に入るのだから、薬草を探して森の中を永遠に彷徨う~なんて労力はゼロ。もちろん原価もゼロ。売れば売るだけお金になる。大儲けだよ!

 ふふ、ふふふ……これでたくさん食材を買える。


 だけど私、売り子にはたぶん向かないんだよね……黒髪黒目の、"死を運ぶ鳥の君"だもん。きっと、みんな怖がって逃げちゃうよ……


 変装しなきゃだな。


 髪と目を隠せるものといえば、嫁入りの衣装としてもらったレースつきのミニハットと、あとはローブくらい? どちらも色は黒。

 

 いつも着ている黒ワンピの上から、ミニハットとローブを身に着けてみる。


 うーん、髪と目は隠せたけど、なんか見た目怖すぎない?

 全身真っ黒で、死神か、占い師みたいだよ。水晶がよく似合いそう。

 白雪姫に出てくる魔女みたいでもある。


 ………まぁ、しかたないか。服、これしか持ってないし。髪と目が隠せただけよしとしよう。



「ウィル、イヴ、お留守番よろしくね」


 森外れにあるいちばん近くの町までは、ハティに乗せてもらうことにした。薬草はすでにたくさん収穫して、『収納』してある。到着したらカゴに移し替える予定だ。


「やだよ、姉さま。ぼくもいきたい」


「ウィル……」


 ……く。涙目で震えないで。連れて行ってあげたくなるじゃん。


 でも、だめ。コーネットの捜索網をかいくぐるためには、二人でいる所はなるべく見られないようにした方がいい。

 それに、初めて行く町がどんな所かわからないのに、幼いウィルを連れて行くのは危険すぎる。今回は、町の様子見も兼ねているのだ。

 もし何かあっても、私一人ならハティに乗って素早く逃げられる。


 説得を続けても、ウィルはなかなか折れない。仕方なく「次」の約束を取り付ける。


「今度はいっしょに行こう。ね?」


「やくそくだよ」


「うん、約束」



「イヴ、ウィルをお願いします」


「安心なさいな。わたしに勝てる生物なんて、ほとんどいやしないんだから」


 頼もしい。果物食べながら片手間に言わなければもっと頼もしいのにな。


 イヴもいるし、『安寧の地』のドーム内にいる限り、危険はない。大丈夫、大丈夫。


 ウィルをハグしてお別れを言ってから、ハティにまたがる。ハティの毛並みは高級絨毯よりもふもふで気持ちがいい。


「やっと俺の出番だな」


 ハティは頼られて嬉しそうだ。イヴがくれたスキルばっかり褒めたせいで、拗ねてたもんね。元気になってなによりだ。


「飛ばすぞ。目は瞑っていろ」


 びゅん、と一陣の風が吹き、すべるように森へと吸い込まれる。



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