20 レベルアップ〜『安寧の地』レベル2
スキルが増えて、どんどんできる事が増えるのは良い。そのぶん、ウィルをしっかり守れるようになるし。でもさ、
スキルって、みんないくつも持ってるものなのかな?
知らないうちに私、人外並みの力を手に入れちゃったりしてないよね…?
如何せん、この世間の常識を学ばせてもらえなかった私にはわからない。
「それにしても、スキル『植物創造レベルMAX』素晴らしい!!」
スキル『安寧の地』で作ったドームの中、掘っ立て小屋の脇に小さな庭園を作った。
スキル『植物創造レベルMAX』の使い方はかんたん。土に向かって、創造したい植物を念じるだけ!
「『スイカ』!」
緑の蔦がにょきにょき生えてきて、小さな緑の実をつける。その実はみるみる膨らんで、顔よりも大きなスイカを実らせる。ここまでわずか10秒です。
このスキル、なにがすごいかって、この世界にない食べ物を前世の記憶を頼りに作り出すことができるのだ!
たとえばこの『スイカ』。この世界にはないらしい。
『鑑定』さんによれば、《スイカ。この世界にはない、地球の果物》と出たので間違いない。
すごくない? すごいよね。
これで、地球産の品種改良されまくった美味しい野菜や果物をウィルに食べさせてあげることができる。感動で涙がでそうだよ。
物言いたげに、ハティがじっとり睨んでくる。
……いや、うん、ハティがくれたスキル『体力∞』も役立ってるよ。おかげで畑仕事をしても、まったく疲れないし。
もうひとつ、スキル『植物創造レベルMAX』は私に恩恵をもたらした。
なんと、図鑑の絵をもとに、『薬草』が創造できるようになったのだ。
風邪薬から腰痛に効く薬や麻酔薬の材料になる薬草、さらに……
手足が千切れても一瞬で治せる『ハイポーション』っていう薬の材料になる薬草まで!
この世界、魔法があって、魔物がいて、神様もいて、ファンタジーだなぁとは常々思ってたけど、まさかこんな薬まで作れちゃうなんて!
『ポーションの作り方』っていう指南書を見つけたから、レシピに従って作ってみてもいいかも。失敗したって、薬草はスキルで作り放題だし。
ハイポーションをたくさん作っておけば、またジャイアントベアーに傷を負わされても安心だ。なんたって、手足が千切れても元通りだもんね!
ウィルとドライアドのお姉さんは、地球産の果物にいたく感動してる。お姉さんなんて、むせび泣いてるもん。
「ララに力を分け与えてよかったわ……その選択をした昨日の私を褒めてあげたい……グッジョブよ……」
しみじみってかんじでつぶやいてる。
「ぼく、これすき。すっぱいのに、とってもあまいよ」
ウィルが食べてるのはパイナップルだ。信じられないくらい甘くてみずみずしいって有名な沖縄県産、ゴールドバレル(黄金の樽)っていう品種です。
「おいしー!」
うんうん、美味しいよね。口いっぱいに詰め込んでもぐもぐしてるウィルたん可愛すぎ。
「わたしはこれ。とろっとろ~~~っ」
お姉さんのお気に入りはマンゴーか。マンゴーは"世界3大美果"と呼ばれている、高貴な果物なのだ。植物の王様であり植物の神様であるお姉さんへの貢物としてはぴったりだね。
宮崎県産の完熟マンゴーは、果肉の分厚さとジューシーさが特徴の高級マンゴーだ。ひとつ2万円近くするやつ。
こっそりつまみにやってきたハティも、マンゴーがお気に入りみたい。頬がふにゃけてる。
「そういえばドライアドのお姉さん、名前なんていうの?」
いつまでもドライアドのお姉さんじゃ、呼びにくいからね。
「そうねぇ、私の名前は人間には発音しにくいのよね。あ、そうだわ、『ハティ』みたいにわたしにも何か名前をくれる?」
「そんなに簡単に、いいの?」
「ええ」
名前っていうのはその人を形作るアイデンティティなのに、こんなに簡単に人に名付けさせるなんて。ちょっと面食らう。
地球でも、神様の名前って一柱に対してたくさんあったし、色々な名前で呼ばれるのは慣れてるのかな?
うーん、そうだなぁ、そういえば、前世に木の精霊を描いた画家さんがいたな。たしか、イヴリンなんとかっていう。
「イヴは?」
「イヴ。いいわ、イヴね」
その時、頭の中で例の声が響いた。
《レベルアップ!『安寧の地』レベルが2になりました。『掘っ立て小屋』が、『簡易ログハウス』に変更されます》
ドームの中、掘っ立て小屋がきらきらと輝き、立派なログハウスへと姿を変えた。
現れたログハウスは『簡易』と付くだけあって、なんの仕切りもない12畳ほどの空間になっていた。とはいえ、掘っ立て小屋に比べたら構造もしっかりしてるし、だいぶ「家」っぽい。
レベルが上がれば、この建物は進化するんだね。
そのうち、キッチンやトイレやお風呂もできたりしてね。そうだといいなぁ。
特にトイレは真っ先に解決したい問題なんだよね。
いまはどうしてるかって? 妖艶系美少女になんてこと聞くの! 森で穴ほってしてるに決まってるじゃん!
……そろそろ乙女としての尊厳が死にそうです。
ま、いまは切り替えて、お部屋の模様替えをしよう!
お部屋の大きさが12畳程になったおかげで、天蓋付きのキングサイズのベッドもすんなり入る。
高級絨毯を敷いて、ベッドを出して、窓にはカーテンを。それから、ミニテーブルと椅子2つを出してクロスをかけて可愛くセッティング。ソファも出して、オイルランプを隅に2つ置けば……
高級感あふれるお部屋に様変わり!
ただ、ベッドがだいぶ幅を取るから若干窮屈かなぁ。
さっそくくつろぐ皆を見ていると、心がほっとした。
思いがけず手に入れたログハウスは、心休まる我が家になった。
ドームに覆われた小さなログハウス。
ここは『安寧の地』。この場所へ逃げ込みさえすれば、もう誰も私達を害せない。
本作のジャンルタグが、一時「ホラー」を選択された状態になるという事故が発生致しました。正しくは「異世界恋愛」のタグです。どうやら私の手が知らぬ間に変なところを押してしまっていたようです。お騒がせしました。ごめんなさい。
また変なタグになっていたら教えてくださいね……
【☆お知らせ☆】
このたび、小説家になろうにて投稿しておりました短編純文学『猫の目で見る世界』がネット小説大賞第2弾短編企画賞の『受賞』に選ばれました。今後とも、読者の皆様の心に残る作品を描くことを目標に頑張ります。
以下、受賞発表サイトのページです。
https://www.cg-con.com/topics/10981/





