16 肉の燻製
今日は朝からお肉の燻製を作ります!
屋敷から持ってきた生肉はまだまだあるけど、そろそろヤバそうだから保存のきく燻製肉にジョブチェンジさせる。
まず、取り出したるはこちら!
昨日の晩に塩漬けしておいたお肉。ちゃんとハーブも使って漬けてたから水分といっしょに臭みも抜けてるはず。
この肉を持って川に行く。流水に浸けて塩抜きするのだ。
ウィルは川遊びができると聞いて大喜び。ハティにまたがって、ずんずん森の中を進んでいく。私はその後ろを歩く。筋力つけなきゃいけないから、なるべく運動量を増やすようにしてるんだ。とはいえお肉は重いから『収納』の中です。
より綺麗な水源を求めて上流へ向かうと……めちゃくちゃ綺麗な場所に出た。
わぁ、滝もあるし、マイナスイオンがすごい!
水の透明度が高くて、川の底がはっきり見て取れるほど。
《川の水。水質良好》
うん、ここなら塩抜きにぴったりだね。
塩抜きには4、5時間ほどかかる。お昼過ぎまでかかるから、お弁当を作って『収納』してきた。今日は川辺でピクニックだ。
木陰に腰掛け、川遊びするウィルを眺める。水は浅いから一人で遊ばせても安心。
ここまで歩いてきて汗もかいたし、私もあとで水浴びしようかな。そうだ、『収納』に入れてある汚れ物のお洗濯もしよう。
さっきまでウィルといっしょに遊んでたハティは、私の隣で休憩してる。
「何を作っているのだ?」
ハティが聞く。
「花冠」
私は手持ち無沙汰で、側にたくさん生えてた《ナツメ草》で花冠を作ってるところだった。
前世では小さい頃妹によく作ってあげていた。……そっか、私には妹がいたんだったな。元気かな、あの子。
「ララは時々、寂しそうな顔をするな」
「そう?」
「魂に残る記憶ゆえか」
え───?
ドキリとした。
「私に前世の記憶があるって、知ってるの?」
「俺も神の一柱だ。それくらい、魂を見ればわかる」
「そう、なんだ……」
なんだか落ち着かない。嘘がバレた時みたいな、罪悪感がこみ上げてくる。
「気にすることはない。たまにあることだ」
「───私、どうしてこの世界に生まれ変わったのかな」
ずっと胸にくすぶっていた疑問。私は特に、神様に使命をもたされてこの世界にきたわけじゃない、と思う。神様に会って何か頼まれた記憶なんてないし。特別な能力はなにもない、"死の鳥"と、ただ疎まれるだけの女の子として生を受けた。……今現在、謎スキルのおかげで特別な能力が付加されてはいるけれど。それだって、たまたまで。
「ララはこの世界が嫌いか?」
「ううん、好きだよ。珍しいものがたくさんあって楽しい」
「ならば良いではないか。俺はララがこの世界に来てくれて嬉しい。お前の側にいると楽しいからな」
素直か。照れる。
「あはは、なんか不思議だなぁ。私が元いた世界では、神様と人の距離はこんなに近くなかったんだよ」
「そうか。それはつまらんな」
「うん」
ぽす、とハティのお腹に抱きつく。白銀の毛並みはふわふわで、温かくて眠たくなる。
「ハティ、大好き。ハティが人間の男の人だったら、ぜったい結婚を申し込んでたよ」
「俺が人間の男だと、嫁に来てくれるのか」
「うん、私、ハティのお嫁さんに……なる、よ……」
眠気が限界に達して、私はすやすや眠りに落ちていった。
ハッと目が覚め、体を起こすと何かが頭の上から落ちた。花冠だ。私が作ったものじゃない。色とりどりの花で作られた冠。
「姉さまおきた!」
「ウィル。これ、ウィルが作ってくれたの?」
「うん! 姉さま、おひめさまみたいできれいだったよ」
きれい、か。真っ黒な色彩を持つ私のことをそんなふうに言ってくれるのはウィルくらいだね。
それにしても、この花冠よくできてるな。作り方を教えた覚えはないけど、私が作った花冠を参考にしたのかな。
ウィルの器用さには、最近よく驚かされる。何をやっても、上手にそつなくこなすのだ。勉強の覚えも早いし、ハティに乗るのも、木登りも上手。贔屓目を抜きにしても、よく出来る子なのがわかる。
「そうだ、お弁当! ごめんね、私が寝てたから。お腹空いたでしょ」
「ううん、ハティがきのみくれたからだいじょうぶだったよ!」
「ありがとう、ハティ。お弁当みんなで食べよう」
「わー!サンドイッチだ!」
「ちゃんとおてて洗ってからね」
「はーい」
「俺が川に連れて行こう」
「お願い、ハティ」
慌ただしくお昼ごはんを並べる。ハティに話を聞いてもらったからかな、すごくスッキリしてるし、心が軽い。
私のことをちゃんと知ってくれてる人がいると、気持ちがぜんぜん違うんだね。





