14 自身の『鑑定』
《ララ・コーネット。スキル:『鑑定レベル2』『収納レベル2』『安寧の地レベル1』『体力∞』》
自分を『鑑定』してみた結果だ。そして、
《ウィル・コーネット。スキル『剣聖』『体力∞』》
ウィルを『鑑定』した結果がこれ。
有名な『称号』である『剣聖』が、私の『鑑定』では『スキル』として表示されている。それでわかった。
7歳のときに教会の『判定式』で与えられる『称号』とは『スキル』のことだ。
『判定式』を受けなければ、『称号』は得られない。そう、教会は説いている。
でもそれ、嘘ってことだよね。ウィルは『判定式』を受けていないけど、『称号』を持ってるんだから。
おそらく、教会の『判定式』では、『鑑定』を行っている。誰か『鑑定』のスキルを持った者によって行われるんだろう。
教会はただ、『鑑定』で出たスキルを『称号』として対象者に伝えてるだけ。なのに、あたかも教会が力を与えたように振る舞っている。
なんでそんなことをするのか。決まってる。教会の地位と権力を高めるためだ。
信心深い者にはより良い『称号』が与えられる。入信せよ、教会を信じよ、そうやって教会は信者を集める。
うちの子に良い『称号』をお与えくださいって、貴族やお金持ちからの寄付もがっぽりいただけるだろう。
まったく、いい商売だよね。
というか、ウィル。やっぱり『剣聖』持ってたか。
これでコーネットに戻れば跡継ぎ確定だけど……
「やだ! かえらない! 姉さまとハティとここにいる」
ウィルは相変わらずコーネットに帰る気はないらしい。コーネット伯爵家から『剣聖』の血筋が途絶えるかもね。ウィルをないがしろにした報いだ。『剣聖』がいないせいでコーネット家の政治的な発言力が弱まろうと知ったことじゃない。
今日も朝ごはんのあと、森に入って食材を採取する。
ハティはいつにも増して周囲を警戒しているようだった。私に怪我をさせてしまったことを、かなり後悔してるみたい。ハティのせいじゃないのに。
それから、『鑑定』さんがレベル2になったことで、毒キノコの見分けがつくようになりました!
《カエンタケ。3グラムで致死量に至る毒キノコ》
きのこの名前までわかっちゃう。すごいぞ、『鑑定』さん!
しかし、カエンタケ。たった3グラムで致死量とか恐ろしすぎ。
《ヒラタケ。珍味として有名な食用可能キノコ》
《タマゴテングダケ。『毒キノコ御三家』と呼ばれる強力な毒キノコ》
《オオイチョウタケ。無味無臭だが食用可能なキノコ》
『鑑定』さんのおかげで、採取作業がはかどる、はかどる!
たった一時間でかごがいっぱいになりました。
《グミの実。熟せば美味しく食べられる》も発見!
赤くて細長いさくらんぼみたいな実。この世界にもあるんだ。懐かしいなぁ。前世では小さい頃、近所のグミの木に登って実を摘んで食べたっけ。
木に登ろうとしたけど……無理でした。
体力が∞になっても、筋力がまだ追いついていない。がっくり。
ウィルはすいすい登ってグミの実を採取してた。さすが、将来の『剣聖』であるウィルのポテンシャルは高い。
木の上から落としたグミの実を、ハティが口でキャッチしてもしゃもしゃ食べてる。
楽しそうなハティを見ていると、ふとあることに思い至った。
「ねぇ、ハティ。『ハティ』っていう名前、私が勝手につけて呼んでるわけだけど、それでいいの? 本当の名前が別にあるんじゃない?」
「ああ、別にいい」
うむ、今日も無駄に重低音イケボだな。ハティを擬人化したらきっとワイルドな超絶美形だろう。そんな気がする。
「昔の名前は忘れてしまった。元々、名前で呼ばれること自体が少なかったからな。皆、俺のことは『フェンリル』や『神獣』と呼ぶ」
「ハティ、おっきいのとれたー!」
木の上からウィルが手を振る。ああ、とハティが稲穂のようなしっぽを振って応える。
「ちなみに、『ハティ』の由来はなんだ?」
「絵本に出てくる、月を食べる狼の名前なの」
「月を食べる狼、か。おもしろい」
内輪のジョークを楽しむようにハティが含み笑う。
この世界の月は常に欠けている。
もしかして、月を食べる狼の伝説はハティが作ったものだったりするのかも。なんたって、悠久の時を生きる神様なんだから。
「『ハティ』の名は気に入ってる。今後もそう呼べ」





