異世界転移者/不死者について
加納広海はなろうテンプレ的な召喚を受けた人。
筆者は召喚理由を細かく設定していないが、追い詰められた小規模組織が起死回生を狙って失敗した的な理由で適当に。
召喚は取り敢えず時空間に穴開けてどんな場所かも分からない異世界から何かを引き寄せると言う理屈で、使った人物も何故発動するのか分かっていない。
方法自体は相当昔から大凡確立されており、その結果この世界には異世界転移者はそこそこ居る。
召喚の実態としては、魔法自体はただ時空間に穴を開けるだけでその先は精霊が忖度して手を貸してくれているだけ。
大体の転移者は歴史の底に埋もれてしまい、大きな影響を与えたのは加納広海とリダダガマスボとタナカくらい。
加納広海とリダダガマスボは同郷。タナカはまた別の世界からの召喚。
転移者の中でも加納広海は特異な状況に置かれている。
転移は魔力不足(生贄の人数不足)が原因で限り無く失敗に近く、その結果は肉体の損失、存在の中途半端な顕現と言った症状となって現れる。
その結果加納広海は酷く不安定な実体として召喚され、自己の分裂と融合と消滅を数秒間の間で何万回と繰り返し、精神体に適した人格のみが淘汰統合され残存した。
これにより加納広海は自己の連続性と同一性に対して無頓着な性格となり、これが安易な自己複製と自己死を可能とさせる。
複製した自我を他者に上書きする事で肉体を乗っ取ることが可能だが、実は成功率がとても低い。
大抵は相手の自我に蹴散らされてしまうが、加納広海はこれを短時間で何万回も連続して行いゴリ押しで自分を上書きしている。
しかし、複製された自我は同一性を保てない為、不要と判断した方は自死を選択する。
これは同一性の保持を理由とした行動では無く、ある種の同族嫌悪と種の保存本能が中途半端に妥協されて発現しただけである。
加納広海が悠久の時を経ても死への渇望が湧かないのは、死を手軽かつ頻繁に体験出来るために特別視出来ないからである。
因みに、加納広海はこの自己複製の技術を森の人(エルフの雛型となる民族)相手に実験を繰り返して汎用化させ、不死を望んだハルとリダダガマスボに施すが、二人はその異常性に耐え切れず精神を病み、やがて自死を選択した。
二人のこの感情を加納広海は理解出来ず、ただ狂って死んだとか生きる事に飽きたとしか認識していない。
ジルにはこの様な後天的な精神変容は無く、元々不死に適した思考形式を持っていた。
その思考形式は光竜や精霊に近い。