漫才「弟と妹」
漫才16作品目になります。どうぞよろしくお願いいたします。
再会した兄貴分と弟分。
「兄貴、お久しぶりです」
「おう」
「探したんですよ。出所してから四年間も、いったいどこに行っていたんですか?」
「ちょっと国外にな」
「国外? なんでまた」
「考古学者になるためさ」
「なるほど、今度は古物商に強盗に入るっていう寸法ですね」
「違うんだよ」
「じゃあなんで?」
「俺が刑務所に入っている間に、弟と妹が出来ていてさ」
「はあ」
「長男の俺は、国外で考古学の研究をして、偉い学者さんになっているすごいお兄ちゃんなんだって、つい言ってしまったんだとさ。まったくうちの親ときたら・・・」
「そんな勝手なこと、無視すりゃよかったのに」
「それじゃあ財産が貰えなくなる」
「はあ?」
「俺はもうひとりっこではなくなっちまったんだ。言うことを聞かないならお前の取り分はないと思えって」
「脅しですか? ひどい親だなあ」
「とにかく国外に飛んで、必死で勉強してきたよ」
「お疲れ様でした。で、いつ取り掛かります? 早く兄貴と一緒に悪いことをやりたいなあ」
「ところが、そうもいかないんだよ」
「え? どうしてなんです?」
「国外に行っていた四年の間に、次の課題ができちゃっていたんだ」
「今度はなんだったんです?」
「俺は、ジェット機と戦艦と戦車の操縦ができる、スーパーお兄ちゃんなんだって言っちゃったんだとさ」
「兄貴って、自転車も乗れませんでしたよね?」
「そうなんだよ」
「出来ないままだとどうなるんです?」
「財産どろこじゃない、勘当だって」
「それはひどい」
「帰る場所がなくなっちまう」
「まさに鬼親ですね」
「これで事態が解っただろ。操縦出来るようになるしかないんだよ」
「でも、いったいどうやって?」
「航空自衛隊、海上自衛隊、陸上自衛隊、三つとも渡り歩くことにした」
「それじゃあ当分の間、悪いことは出来ないってこと?」
「そういうことになるな」
「兄貴と一緒だったから悪いことが出来たんですよ。おいら一人では出来ないんですよ」
「俺だって同じだよ」
「捕まるのはいつも兄貴だけだったけど」
「そうだったな」
「しかたありません。家の手伝いをしながら兄貴の帰りを待ってますよ」
「苦労を掛けるなあ」
読んでいただき、どうもありがとうございます。