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76 ミルカの特技

前話のあらすじ:ミルカが何かに気づいたようだ。


もう一つの拙著「最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる」の2巻が10月に発売になります。よろしくお願いいたします。

 ミルカはかけらを上からじっと見る。

 それから臭いにも構わず、顔を近づけたり、遠ざけたりし始めた。

 その表情は真剣そのものだ。


「ミルカ、どうした?」

「これとこれだろ? そしてこれとこれがくっついて、これとこれだから、これとこれで……」


 ミルカはあっという間にかけらを組み立てていった。

 いくつか、足りないかけらがあるようだ。多少かけている。

 だが、八割がた復元できたと言っていいだろう。


「……すごい」

「ミルカやるわね!」

「ここここ」

 ルッチラとセルリスが感心している。

 ゲルベルガも少し離れたところで、鳴いていた。きっとほめているのだろう。


「へへ。大したことじゃないさ!」

「いや、本当に凄いぞ。ミルカにこんな特技があったとはな」

「照れるぜ」


 ミルカはすごく照れている。顔を真っ赤にしていた。

 ひとしきり、ミルカを称賛した後、組み立てられたものの検証に入る。

 組み立て終わった物体は、成人男性の手のひら大だ。


「なにかしら。これ。おぞましい形ね。呪いのアイテムかしら」

「呪いの力は感じないな」

「そうなのね」


 ヴァンパイアロードのメダルに素材が似ているのでそれを最初に警戒した。

 だが、どうやら呪いが溜まっているというわけではなさそうだ。

 その点はひとまず安心である。


「うーん。タコかしら。でも違うわよね」

「うーん。セルリスさんはこれを足だと考えているんですね? それならタコっぽくはありますけど……」

「これが足なら、こっちが上半身なのかい? おれには、さっぱりわからないぜ」


 セルリス、ルッチラ、そして組み立てたミルカにもわからないようだ。

 セルリスがタコかもと判断したのは、タコ足のようなものがあるからだ。

 だが、タコ足のようなものは八本以上ある。


「うーむ。足の数でもかぞえてみようか」

「十七本だぞ」


 俺が数え始めようとすると、ミルカが教えてくれた。

 実際に数えてみると、本当に十七本あった。


「ミルカ、すごいな。ぱっと見でわかるのか?」

「百超えたらしんどいけどな! 野菜販売店とかで小分けにする仕事とか昔やってたんだぞ」

「ミルカ、すごいわ! 天才ね」

「照れるぜ」


 ミルカには意外な才能があったようだ。頭がものすごくいいのかもしれない。

 照れ隠しするように、ミルカは言う。


「で、でも、上半身、これなんだい? 人間でもなさそうだし。こういう生き物っているのか?」


 上半身は比較的人型に近い。ただし、腕が合計七本ある。

 その上、コウモリの羽っぽいものまでついていた。


「しかも、これ頭部がないわよね」

「うん。砕けた形跡はあるから、何かがついていたんだとは思うんだ」


 セルリスとミルカは真剣な表情で話し合っていた。

 ルッチラが言う。


「ロックさんでも、こういう魔物知らないですか?」

「俺も見たことないな」

「ロックさんでも知らないとなると、こういう魔物は存在しないのかもですね」

「うーん、どうだろうか」


 そのときセルリスが言う。


「金属なのに砕けるって珍しいわね」

「まあ、曲がる金属の方が多いよな」


 もろくて硬い金属なのだろう。

 剣が曲がらずに折れることがあるように、砕ける金属がないわけではない。


「とりあえず、臭いから洗うかい?」

「そうだな」

「じゃあ、おれが洗ってくるぜ」

「いや、ミルカは机を綺麗にしておいてくれ」

「了解だ!」


 仕方がないとはいえ、机に汚いものを乗せてしまった。

 きれいにしないと気持ちが悪い。


 俺は台所に変な像を持っていく。

 そして、ごしごしとあらった。血とかそういうのをとっていく。

 しばらく洗って、臭いがとれた。


 それでも、汚い気がするので、木箱に入れる。

 これで、机などに直接触れさせなくても済む。


「机綺麗にしたぞー」

「ミルカありがとう」

 そして、俺とミルカは手を洗った。


「手が臭くなったからな!」

「手洗いは大切だな」


 俺とミルカが手を洗っていると、ガルヴが見てくる。


「どうだ、ガルヴ?」

「……がう」

 まだ臭いようだ。さらに念入りに洗った。


「ガルヴ、どうかな?」

「がうっ!」

 ガルヴから臭くないというお墨付きをもらって、手洗いを終える。


 像の臭いもガルヴに嗅いでもらった。

 どうやら、臭いは落ちたようだ。


 臭いの落ちた謎の像を木箱に入れたまま、居間へと運ぶ。

 居間ではルッチラとセルリス、ゲルベルガが待っていた。

 ゲルベルガはセルリスのひざの上に座っている。


「ゲルベルガさまは可愛いわねー」

「ここぅ」


 セルリスがゲルベルガを優しく撫でている。

 ゲルベルガはとても満足そうに眼を閉じて、小さな声で鳴いていた。

 ルッチラも満足そうにうなずいていた。


「ゲルベルガさまは、威厳にあふれているだけでなく、可愛いのですよ」

「ゲルベルガさまは、可愛いよな!」

 ミルカも撫でる。


 一方、俺は机の上に謎の像を入れた木箱を置いた。

 それを見た、ルッチラが言う。


「宮廷錬金術士の方々に鑑定をお願いするしかないでしょうか?」

「うーむ。だが、こんな怪しい物体を王宮にもっていくのもな」

「確かにそうね……」

 セルリスが真剣な表情でうなずいた。


 ヴァンパイアを王宮に侵入させた召喚魔法陣。それと同種のものである可能性がある。

 また、神の加護を緩和するアイテムである可能性も捨てきれない。

 王宮にもっていくには、危険すぎる。


 そんなことを俺が考えていると、玄関の方からシアの声が聞こえた。

シアが帰宅しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] ミルカとゲルベロス様エンカウント事件以降ロックも ノックをしてトイレに入るようになりましたとさ! じゃないと2人に睨まれるから!
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