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70 魔鼠の大群

前話のあらすじ:大きな魔鼠がたくさんいた。

 さらにカンテラで周囲を照らすと、大量の魔鼠が見えた。

 どれもとても大きな個体だ。

 セルリスが剣を抜きながら言う。


「大きいネズミね。しかも大量だわ」

「確かにこの数は二人だときついな」


 俺がそういうと、アリオがうなずく。


「ああ、慌てて逃げ出したんだ」

「ネズミに生きながら食われるなんてぞっとします」

 ジョッシュの言うとおりだ。最悪の死に方の一つだろう。


「アリオ。ファイアーボールを頼む。同時に俺が突っ込む」

「了解だ」

「ジョッシュは弓で援護してくれ」

「わかりました」

「セルリスは漏れたのを頼む」

「任せて」


 そして、俺が魔神王の剣を抜くと、

「がう?」

 ガルヴが「どうして僕には指示をくれないの?」と言いたげな眼でこっちを見ていた。


「ガルヴは、ねずみが逃げ出してからが本番だ。今はセルリスと同じように漏れた奴を叩いてくれ」

「ガウッ!」

 ガルヴは張り切って胸を張る。尻尾をビュンビュンと揺らしていた。


「アリオ。頼む」

「了解!」


 アリオのファイアーボールが飛んでいく。

 魔鼠の群、その真ん中で炸裂した。


「「「KIKIKIKIKIIIIIIIIIIII」」」


 魔鼠の絶叫が響く。

 ファイアーボールの直撃を食らった十匹以上が絶命した。


 混乱する魔鼠の群に俺は突っ込む。

 力任せに魔神王の剣を振りぬいた。五匹の魔鼠を斬り倒す。


「「「「KIKKIKIIIIIIIIIIIII」」」」

 けたたましく鳴きながら、一斉に魔鼠がとびかかってくる。

 それをすべて切り落とす。


 逃げる奴が多いと思っていたのだが、ほとんどが俺にとびかかってきた。

 生存本能より、捕食本能の方が強いのだろう。


 俺が斬り殺した魔鼠にも、魔鼠たちが群がっている。

 魔鼠たちにとっては、同種の魔物であっても、死んだのならば肉に過ぎないのだろう。

 群れを覆う、強烈な飢えを感じる。


 俺は恐ろしく感じた。

 もし、この魔鼠たちが下水道から出たらどうなるだろう。

 人を捕食しようと一斉に襲い掛かるに違いない。


 ネズミといっても、中型犬ぐらいはある巨大なネズミだ。

 大人ならば、一匹ぐらいは倒せるかもしれない。

 それでも二匹、三匹は相手にできない。子供なら一匹でも戦えないだろう。


「全滅させるぞ!」

「おう!」


 アリオが大きな声で返事をした。

 ジョッシュは矢を放って、魔鼠を一匹一匹倒している。


「アリオ。魔法は温存気味で頼むぞ」

「わかってる!」

 魔導士の魔力は無尽蔵ではない。使いどころが肝要なのだ。


 俺は一匹も逃さぬつもりで剣をふるっている。

 だが、数があまりにも多い。

 その上、四方八方から、こちら側に突っ込んでくる。

 すべてを倒すのは、魔法でも使わない限り不可能だ。


「こっちは任せて」

「ガウッ!」

 漏れた魔鼠はセルリスとガルヴが倒してくれる。


「助かる」

 しばらく剣をふるう。

 周囲に、百匹以上の魔鼠の死体が転がるころ、やっと襲撃が終わる。


「ひとまず、これで、終わりかしら?」

「いや、奥には、まだいると思うぞ」

「そうなのね」

 セルリスは深刻な顔でそう言った。


「ガルヴ。周囲を警戒してくれ」

「ガウ!」

「縄張りを主張してもいいぞ」

「ガウガウ!」


 ガルヴに警戒を依頼して、俺たちは魔鼠から魔石を取り出す。

 とても質の悪い小さな魔石だ。

 それでも、通常の魔鼠の魔石よりは大きい。


「セルリス。俺の手元を見ておきなさい」

「はい」


 真剣な目でセルリスは、解体する俺の手元を見ていた。

 その後、セルリスにもやらせる。

 冒険者となるなら、魔石を取り出すのは必須技能だ。


 魔鼠は臭いし、汚い。普通なら触るのも嫌だ。

 それでも、セルリスは嫌な顔せずに魔石を取り出していく。


 一方、ガルヴは周囲の臭いをしきりに嗅ぐ。

 そして、ところどころで、しゃがんでおしっこをしていた。

 狼、それも霊獣の狼の尿だ。普通の魔鼠なら恐れて近づかないだろう。


 魔石を取り出した後、死骸をまとめた。

 そして、セルリスに説明する。


「放置したらアンデッドになったり、腐敗したりするからな。処理は必須だ」

「そうなのね」

 戦闘能力は高いが、冒険経験の少ないセルリスは真面目な顔で聞いている。


「屋外なら燃やすんだがな、下水道の中だからな。とりあえずは魔法の鞄の中に入れておこう」

「魔法の鞄がないときはどうすればよいのかしら?」

「我慢して燃やすか……何回かに分けて、外に持ちだして燃やすかだな」


 俺がそういうと、アリオがうなずく。


「そうだな。ロックと俺たちがゴブリンと戦った時も数十体のゴブリンの死体を手分けして外まで運んだんだぞ」

「そうでしたね。結構、重労働でした」

「面倒だが、やらないわけにはいかないからな」

「大変なのね」

 セルリスは真剣に聞いている。

 その横ではガルヴがふんふんとうなずいていた。


 そして俺はアリオたちに尋ねる。


「いつもはどうしてたんだ?」

「普段の魔鼠退治は精々数匹だからな。外に持ちだして焼却だ」

「なるほど。そうなのね」


 セルリスはうんうんと頷いている。

 一方、ジョッシュは俺の魔法の鞄に興味を示した。


「それにしても、ロックさん。さすがですね。魔法の鞄なんて」

「屋敷もでかかったしな。ロックは相当金持ちだと見たぞ!」

「まあ、多少はな」


 それから俺は全員に言う。


「恐らく、まだいるだろう」

「ロックの言うとおりだと思うぞ」

「はい。私もその可能性が高いと思います。発生源をつぶさないと駄目かもしれません」


 深刻そうな表情だ。

 そして、俺たちはさらに下水道の奥へと進んでいった。

まだ奥に居そうです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 下水道で炎系は危険だな中世の下水だとメタンガスが 溜まって爆発の恐れ大だしね!剣に氷を付与して戦った方がいいかも?魔法も氷を主体に使ったほうが正解でしょう?
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