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55 チンピラを尋問しよう

前話のあらすじ:チンピラをこらしめた。

 三人の男たちが無様に倒れると、ガルヴとミルカが駆け寄ってきた。


「だ、大丈夫かい? ロックさん」

「がうがう!」

「大丈夫だぞ、俺は冒険者でもあるんだ。Fランク戦士だがな」

「すげーな!」


 ミルカは感心したようだった。

 きっとランクシステムもわかっていないに違いない。

 ガルヴは顔を舐めてきたので、とりあえず撫でておいた。


 一方そのころ、セルリスとルッチラが追いついた。

 セルリスはすぐに状況を把握すると、てきぱきとチンピラ三人を縛りあげる。

 ルッチラは周囲を注意深く見まわしている。


「ロックさん。こいつらは官憲に引き渡すの?」

「ぼくが呼んできましょうか?」

「そうだなー。最終的には官憲に引き渡すつもりだが……」


 俺はミルカに尋ねる。


「こいつらが家を取り上げたとかいう借金取りか?」

「そうなんだよ。家を全部持っていかれて、そうぞくほうき? とかいうのでおれは自由の身になったってきいたんだけど……」


 借金しかないなら、相続権を放棄したほうがいい。

 そうすれば、祖父の借金を支払う義務がなくなる。


 つまり、ミルカがこいつらに金を要求される筋合いはないのだ。

 それでも、ミルカが財産を持っているなら、話は変わってくる。

 裏社会のチンピラめいた借金取りは、法に反してでも取り立てようとするかもしれない。


 だが、ミルカは見るからに金を持っていない子供だ。

 俺が渡した掃除用具購入代金だって、子供のお小遣い程度。

 本職の借金取りが、法を犯すリスクをとってまで、奪い取ろうとするには少額すぎる。

 明らかに怪しい。


 俺は周囲を見回す。裏路地だけあって、周囲に人影はほぼない。

 だが念には念を入れて、近くの廃屋にチンピラたちを連れ込んだ。


「ちょっと、官憲に引き渡す前に、事情を聞いてみるか」

「どうするんだい?」

「こうするんだ」


 俺はルッチラからラーニングした幻術を使う。

 チンピラたちは、魔力の低い素人なので、かかりやすくて良い。


 チンピラたちに見せる幻はものすごく屈強な男たち五人だ。

 肉体のイメージのもとにしたのはゴランである。ゴランが一番強そうだからだ。

 顔は、俺が生まれてから今まで見た中で、一番人相が悪かった男をもとにした。

 五人それぞれを、個性的にするのが難しいが頑張った。


 チンピラが目を覚ましたら、早速幻での脅迫を開始する。


「おい、てめえら! うちのシマで好き勝手やってくれたようだな」

「ひぃ」


 人相の悪い屈強な男たちに囲まれて、チンピラたちは怯え切っている。


「どう落とし前つけるんだ? あぁ?」

「兄貴、こいつら、最近調子に乗ってる例の奴らですよ」

「そうにちげーねえ。指を一本ずつ切り取って奴らのアジトに届けさせましょうや」

「ああ、そいつはいいな。ちょうどいい警告になる」


 敵対組織の人間だと誤解されているとチンピラたちに思わせるのだ。


「ち、ちがう。話を聞いてくれ」

「あぁ?」

「俺たちは三番街で金貸しをしているカビーノさんの部下なんだ」


 チンピラは必死に弁解する。おかげでどこの手の者かわかった。

 だが、俺は幻でまだ脅す。


「適当なこと言ってんじゃねーぞ! なんでカビーノの子分がこんなところにいるんだ!」

「やっぱり、こいつら俺たちのこと舐めてますよ」

「兄貴。立場分からせるために、とりあえず、腕の一本ぐらい落としときましょうや」

「それも、そうだな」


 兄貴と呼ばれている特に屈強な幻に短めの剣を抜かせた。

 チンピラたちは冷汗をだらだら流す。


「ほんとなんだ、嘘なんてついてねえ」

「俺たちは死んだ爺の借金を回収するために、孫娘を探していたんだ」


 屈強な幻にすごませる。


「適当なこと言ってるんじゃねーぞ。孫娘とやらは、まだガキじゃねーか」

「言いたいことはわかる。ガキでも騙せば金になるんだ!」

「ガキを騙したところで、たかが知れてるだろうが。適当なこと言ってんじゃねーぞ、ごら!」

「ガキに支払わせるわけじゃない、売り払うんだよ。そうすれば、秘密のルートで高めにさばける」

「ほう。こういうことは、よくやってるのか?」

「言いたいことはわかる。聞いたことないって言うんだろう? カビーノさんがこれから始めようというシノギだからな。聞いたことなくても当然だ」

「これから? じゃあ、まだ騙した子供はいないんだな?」

「ああ、これからだ。騙す予定の子供たちはたくさんいる。あんたたちにも、うまい仕事を回せるかもしれない」


 どうしようもないクズだった。カビーノごとつぶさなければなるまい。

 これから始めるということは、騙された子供がいないであろうことだけが救いだ。


 幻のチンピラにこん棒を出させる。


「やっぱりお前らは生かしておけねーわ」

「え?」


 驚くチンピラどもを幻のこん棒で叩きまくる。


「ぐあっ」「ぐえぇっ」「ごふぅ」


 幻だから外傷は増えない。だが痛みは感じている。

 しばらくボコボコにすると、痛みだけでチンピラどもは気絶した。


「さて……こいつらを官憲に引き渡すか」

「カビーノってのを倒さなくていいの?」

「それは官憲に任せた方がいいかもしれないな。ミルカはどう思う?」

「え? ああ。おれはそれでいいけど……。いったいこいつらはどうしたんだい?」


 幻はチンピラだけに見えるようにしておいた。

 だから、ミルカにはチンピラがペラペラしゃべり始めたように見えたのだろう。

 それどころか急に痛がって気絶したのだ。驚いても仕方がない。


「やばい薬でもやってたんだろう」

「そうなんだ、怖い」

 ミルカは納得したようだった。


 それから、俺とセルリス、ガルヴが一人ずつ背負って官憲のもとへと運ぶ。

 官憲への説明は、モートン卿のお嬢さんであるセルリスにお任せだ。


 セルリスはカビーノの企みまで、きちんと説明してくれたので大丈夫だろう。

 そう思ったのだが、官憲たちは少し困ったような表情をしていた。

官憲にも何か事情がありそうです。

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