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【web版】ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。  作者: えぞぎんぎつね
六章

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259 冒険者友達

 屋敷に戻る途中、俺は冒険者ギルドに寄ることにした。


「ケーテ、タマとガルヴを連れて先に戻ってくれ」

「む?」

「冒険者ギルドに寄ってどんな依頼が出ているか見ておきたい」

「我も……。いや、戻るとするのである。タマ、ガルヴ、ついて来るのだ」


 ケーテも冒険者ギルドに顔を出したかったのかもしれない。

 だが、タマが疲れているようだったので戻ることにしてくれたようだ。


「ケーテ、ありがとう。すぐ戻る」

「うむ」


 ケーテが歩き出すと、タマはついていく。

 だが、ガルヴは俺の横を離れようとしない。


「がうー?」

「ガルヴはロックと一緒にいたいのであるか?」

「がう」


 ガルヴはまだ体力に余裕はありそうだ。


「じゃあ、ガルヴは俺と一緒に来なさい」

「がう!」

「タマは我と一緒に来るとよいのである!」

「わふぅわふ」

「何か食べて帰るとするのである!」

「わふう!」


 ケーテとタマは楽しそうに帰っていった。

 どうやら何か買い食いして帰るらしい。


 ガルヴとゲルベルガさまは、ケーテの言葉に反応した。

「がぅ」「こ」

 じっとこちらを見ている。


 ケーテと一緒にいた方がいいことがあると思われるのは避けたい。

「……ガルヴとゲルベルガさまも何か食べて帰ろうな」

「がう!」「ここぅ!」

 ガルヴもゲルベルガさまも嬉しそうだ。


 ゲルベルガさまは懐から顔を出して、俺の顎辺りにやさしくトサカをこすりつける。

 俺はお返しに頭をやさしく撫でておいた。トサカは柔らかくて気持ちがいい。


 そして、俺は冒険者ギルドの中へと入った。

 時刻は昼前。混雑のピークは過ぎている。冒険者の数はまばらだった。


「ロック、久しぶりだな」

「あ、ロックさん!」


 アリオとジニーの兄妹がこちらに向かってかけて来た。

 とても久しぶりな気がする。

 最後に一緒に冒険したのは、魔鼠退治だろうか。


「二人とも、この時間にギルドにいるとは珍しいな。今日はいい依頼がなかったのか?」

「いや、そうじゃないんだ。今日は夜明け直後から薬草採取をやって帰ってきたところなんだ」


 薬草の中には太陽が昇ってしばらくすると、花が咲いて薬としては使えなくなるものがある。

 そういう薬草を採取したのだろう。

 時間限定の採取は面倒なので報酬は高めだ。

 それでいて危険は少ない。初心者冒険者にはおすすめのクエストだ。


「ほう、薬草採取か。うまく採取できたのか?」

「はい! ばっちりです」


 ジニーの表情は明るい。薬草採取クエストがとてもうまくいったようだ。


「それはよかった」

「がう」


 ガルヴはアリオとジニーに会えてうれしいのか、尻尾を振っていた。

 両前足をほんの少しだけ同時に上げるようにして、ぴょんぴょんしている。

 きっと飛びつきたいに違いない。


 俺とケーテ以外には飛びつくなと言ったことをしっかり守っているのだ。

 とても偉いので、頭を撫でてやる。


「最近、シアの故郷の方に遊びに行っていてな。冒険者ギルドに来るのも久しぶりなんだ」

「そうなんですね。しばらくお見掛けしないと思っていました!」

「シアさんの故郷って、どんなところだった?」


 立ち話もなんなので、ギルド内の軽食をとれるスペースへ移動する。

 そこで軽くお菓子をつまみながら、お話を始める。


 もちろん、ゲルベルガさまとガルヴ向けのおやつもたくさん買った。

 ゲルベルガさまは俺の隣に座らせて、ひざの上に置いたお皿からおやつを食べてもらう。

 ガルヴ用のおやつは椅子の上に置いたお皿に入れておいた。

 ゲルベルガさまもガルヴもすごく嬉しそうなので、何よりだ。


「シアさんの故郷って、やっぱりニアちゃんみたいなかわいい子が沢山いるのですか?」

「ああ、狼の獣人族の集落だからな」

「そうなんですね。私も行ってみたいです」


 ジニーは獣人の子供が好きなのかもしれない。

 よく動く獣耳と元気に揺れる尻尾は愛らしいので、気持ちはわかる。

 軽くシアたちの集落の様子などを話した後、俺は尋ねてみた。


「最近のクエストはどうだ? ゴブリンとか増えてないか? あと魔鼠の大発生とか」


 ゴブリンはヴァンパイアが使役することもある昏き者どもの最下級魔物だ。

 魔鼠は以前、邪神像のかけらの影響で大発生したこともあった。


「幸いなことに、両方とも全然ないですね」

「おかげで最近は薬草採取ばっかりだよ」

「魔鼠退治に行っても、多くても五匹程度、いつもはニ、三匹と遭遇する程度です」

「それは、なによりだな」

「もちろん、それはそうなんだが、少し物足りないというのもある」

「お兄ちゃん。そんなこと言ったらだめ」

「そ、そうだな。すまない」


 アリオはジニーにたしなめられて、ばつが悪そうだ。

 だが、俺にはアリオの気持ちはよくわかる。

 冒険者として、人助けして感謝されたり、強敵を倒したりしたいのは当然ではある。

 ちょうどその時、ギルドの受付から職員が出て来て、一枚のクエスト依頼票を張り始めた。

 その様子を見ていたジニーが言った。


「お兄ちゃん、ゴブリン退治の依頼が出たみたい」

「なんだって!」


 アリオは勢いよく椅子から立ち上がった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読ませてもらってます! ゲルベルガさんなど、しっかりレギュラー化していて、キャラが捨てキャラにならない所が特に大好きです! [気になる点] あの…冒険者の片割れってジョッシュ…
[気になる点] ・・・嵐の前の静けさ?
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