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244 強そうなヴァンパイアとの戦い

前回のおはなし:強そうなヴァンパイアの挑発に成功した。


ついに! ついに2巻が5月に発売になります!よろしくお願いします。

コミカライズも決まりました。


「ひざに矢」3巻も発売中です。

 後方に飛んだといえば聞こえがいいが、むしろ吹き飛ばされたという方が近いかもしれない。

 体勢を崩されないようにするためには、後ろに飛んで衝撃を逃がすしかなかったのだから。

 久しぶりの強敵だ。血が熱くなっていくような感覚を覚える。


 男が俺に向かって動いたのと同時に味方の五名も一斉に動きはじめていた。

 シアとセルリス、ガルヴは男の横をすり抜けて後方へ走る。

 エリック、ゴラン、ケーテは、シアたちに攻撃が行かないよう男に躍りかかった。


 俺やエリックたちを同時に相手にするのは分が悪いと判断したのだろう。

 男は後方に飛んで俺たちから間合いを取る。

 同時に横をすり抜けて後方に向かおうとしているシアとセルリスに向けて剣をふりあげた。


 男はまず弱いところから、つまりシアたちから片付けようと考えたのだろう。

 シアとセルリス、そしてガルヴには後方で人間たちを保護してもらわなければならない。

 男の攻撃にさらさせるわけにはいかない。

 俺は全身に魔力を流して強化しながら一気に前へと出る。


「戦闘中によそ見とは失礼な奴だな、ナメクジ野郎が!」

 ――ガガガ!


 虚を突いた俺の魔神王の剣三連撃を、男は剣で見事に受けて流していく。

 渾身の力で倒しきるつもりで剣をふるったのに、捌かれてしまった。


『こっちは任せろ。安心して作戦を実行してくれ!』

 念話でゴランがシアとセルリスに向けて叫んだ。

 そのおかげで、一瞬足を止めかけたセルリスがそのまま走り去っていく。

 セルリスたちの背に視線を一瞬向けると、男は言う。


「何を企んでいる? 浅はかな人ぞ――」

 恐らく「浅はかな人族の考えることなど、我には通用しない」とでも言おうとしたのだろう。

 だが最後まで言えなかった。男の発言を遮ったのはゴランの斬撃だ。

 ――ガガガギン!


「さっきロックからよそ見が失礼だと教わったばっかりだろうが!」

 ゴランの斬撃は鋭く強い。男を防戦一方に追い込んでいる。

 ゴランの勢いは止まらない。男は防御しきれなくなり、剣を取り落とし、体勢を崩した。


 ゴランがとどめの一撃を繰り出そうとした瞬間、

「調子に乗るな、人族が!」

 そう叫ぶと同時に男の全身から毒霧が噴き出した。


 その毒霧は毒性が非常に強そうだ。まともに一呼吸でも吸いこめば死にかねないだろう。

 息を止めたとしても目や鼻の粘膜から入り込む。長い時間さらされれば確実に動きは悪くなる。


 それを本能的に察知して、ゴランはとっさに後方に飛んで距離をとった。


「臭せーな、おい。風呂ぐらい入れよ!」

「黙れ! 下等生物が!」

 そう言って男はゴランを追撃しかけたが、

「ガアアアアアアアアアアアアア!!」

 ケーテが咆哮とともに放たれた風ブレスを男に叩きつけた。

 男は壁まで吹き飛ばされ、大部分の毒霧は砕けた巨大な窓から部屋の外へと流出していく。


 エリックが念話で語る。

『毒霧か。厄介だな』

『ああ。だが一度見せてもらった。対策は任せろ』

『そうか、それならロックに任せる』


 体から毒霧を噴き出す技の術理を俺は理解した。

 だが体を霧に変換できる上位ヴァンパイアだからこその技だ。


『あれはラーニングできんな』

 とはいえ、ラーニングできなくとも対処は可能だ。


『見た目からして臭そうだからできない方がいいだろう』


 エリックはそう言うと、自然かつ大きな動作で聖剣を構え、男に正面から突っ込んでいく。

 大きな動作は注意を自分に引き付けるためだ。

 それを理解しているので、ゴランは目立たないよう最小の動きで男の側面へと回りこんでいく。


 俺もパーティーの魔導士としてエリックとゴランを支援しなければならない。

 男に魔法の槍(マジック・ランス)を撃ち込んでいく。

 一本や二本では目くらましにも足りない。最初に七十本の魔法の槍を作って一斉に撃ち込んだ。

 その後もどんどん魔法の槍を作り、男めがけて撃ち込んでいく。


 男の顔から余裕が消える。慌てたように魔法障壁の多重展開を開始した。

 そこに俺の魔法の槍が直撃し、男が絶叫を上げる。


「うおおおおおおおおおお」

 俺の魔法の槍が魔法障壁を破壊すると同時に男も魔法障壁を張りなおしていく。

 さすがの展開スピードだ。

 ――ガギンガギガキガキガガガガガガガガガガ――

 魔法障壁が砕け散る音が周囲に響く。


 必死の形相を浮かべる男に、エリックが正面から突っ込んでいく。

 エリックは俺の魔法の槍をまったく気にしない。ないものとして動いている。

 エリックは魔法の槍が自分にあたることはないと確信している。

 俺が何とかすると信じてくれているのだ。

 その期待に応えて、俺もエリックには当たらないよう魔法の槍を調節する。


「さすがロック!」


 エリックは嬉しそうにそう言いながら、一気に間合いを詰めて男に斬りかかる。

 男の展開する障壁を、エリックの聖剣はやすやすと斬り裂いていく。


「ぬおおお」

 聖剣から身を守るため、男は障壁を集中させる。全体的に障壁が薄くなった。

 絶好の機会だ。障壁の薄くなった箇所に、俺は魔法の槍をたたきこんだ。

ロック単騎ならもっと手こずったかもしれません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 冒頭の10年の戦いを除いて、主人公と互角初登場だな ずうっと無双だったからなぁ
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