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【web版】ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。  作者: えぞぎんぎつね
五章

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237/303

237 敵地

前回のおはなし:ドルゴがお留守番。


2巻が5月に発売になります。コミカライズも決まりました。

「ひざに矢」3巻も発売されております。

 俺は改めて全員に向けて言う。


「まずは俺が入る。状況がどうあれ、すぐに連絡する予定だ」

「連絡がなければ、通話の腕輪を使えない状況ということだよな?」

「ゴランの言うとおりだ。その場合は魔法陣を破壊してくれ」

「いや、すぐに増援に向かおう」


 エリックが力強く言う。気持ちはありがたいがそれは困る。


「もし即死系トラップがあったら無駄に全滅だ」

「それも、ロックが防げないやつってことだよな。わかった」


 エリックはまだ納得していないようだが、ゴランはわかってくれたようだ。


 魔法陣から最後に敵が出てきてから十五分は経っている。

 いつ、向こうからふさがれてもおかしくはない。ゆっくりはしていられない。

 簡単な打ち合わせをした後、すぐに俺は転移魔法陣に飛び込んだ。


 視界がぐにゃぐにゃした後、まぶしい光を感じた。

 転移先は広くて明るい広間だった。壁も床もきれいな大理石で作られている。

 部屋はとても広く、竜形態のケーテでも中で動けるほどだ。

 部屋には一つの大きな扉がある。その扉もケーテでも問題なくくぐれるだろう。


 そして、アークヴァンパイアが三匹いた。魔神王の剣で素早く首をはねる。


 部屋の中にほかに敵がいないことと、トラップの有無を確認するため魔力探知を発動させる。

 それと同時に通話の腕輪に小声で話しかける。


「今、魔力探知をかけているところだが、ひとまず危険はなさそうだ」

『……』

 返事はないが、耳をすませば息遣いが聞こえる。

 エリックたちにはこちら側の状況が詳細にはわからない。

 だから、俺は声を出しているとはいえ、念のために声を発しないのだろう。


 部屋の中にトラップの存在がないことを確かめて、

「よし、探知が終わった。こっちに来てくれ」

 すぐに転移魔法陣が輝いて、こちら側に皆が来る。


『どこに敵の耳があるかわからない。一応念話で会話しよう』

『わかっている。で、ここはどこだ?』

 エリックが顔をしかめる。


『立派な大理石で作られた広い部屋。宮殿か城ってところか?』

『そうだとおもうが、我が国にこのような建物はないはずだが……』


 ここまで立派な建物であれば、エリックが知っていないとおかしい。


『ということは、他国か?』

『可能性はあるな。面倒なことだが』


 エリックは国王。他国に行くとなると、政治的な問題が発生する。


『非常時だから仕方ないだろう』

『そうであります。先に攻撃を仕掛けられたのはこっちでありますからね』

『ま、誰かに会っても正体を明かさなければ問題ねーだろ』

 そういってゴランはニコッと笑った。


『さて、ここがヴァンパイアどもの拠点だとして、ボスはいるのか? ロックわかるか?』

 エリックに尋ねられて、俺は改めて魔力探知をさらに広範囲にかける。


『そうだな……。いちいち壁に魔法的防御をかけられているから探知が難しいな』

『そこをなんとか頼むぜ』

『簡単に言ってくれるな』


 魔法的防御をかけられているということは、魔法探知を察知されるかもしれない。

 慎重さと繊細さが求められる。

 そして、この場で魔法を使えるのは俺とケーテだけ。俺がやるしかないだろう。


 俺が慎重に魔力探知を進めていると、

『まあ、普通に考えていないわけねーよな』

『そうでありますねー』

『ハイロードは転移してきて、ロックに倒されたんだろう? その上がいてもおかしくない』

『そうであるなー』

 念話の使えないセルリス以外、みんな自由に念話で会話している。

 そしてガルヴは部屋の臭いをかいで回っていた。


『ガルヴ、一応俺のそばにいなさい』

 魔力探知しながら、ガルヴに語り掛ける。ガルヴは素直に俺の真横に来てお座りした。

 そうこうしているうちに魔力探知が完了する。


 魔力探査に切り替えながら、魔力探知でわかったことを皆に報告する。


『建物自体かなりでかいな。種類まではわからないが、人型の魔力反応が多数ある』

『建物の大きさまでわかるのか?』

 エリックの問いは当然といえる。魔力探知は魔力を持つものを見つけるものだ。

 生物や魔道具の位置と数はわかっても、建物の大きさはわからない。


『壁にいちいち魔力防御をかけてくれているからな。だから分かった』

『なるほどな。その魔法防御の強度はどのくらいなんだ?』

『かなりしっかりしたものだ。だが魔法に対する耐性も物理耐性も高い』

『人型の反応って言うのは、ヴァンパイアでありますかね?』

『いま魔力探査をかけているところだが、ヴァンパイアの可能性は高いだろう』


 部屋の中を調べ始めたケーテが言う。


『建物は大きいって、どのくらい大きいのであるか?』

『エリックの王宮より大きいかもしれん』

『ほほう。それはすごいのである』


 その時、ふんふん鼻を鳴らしながら、ガルヴが鼻で俺の手をつついた。

 俺がガルヴに目をやると、ガルヴはケーテの方を見る。

 ガルヴは「ケーテが勝手に歩き回っているけど大丈夫か?」と尋ねているのだろう。


 ケーテはガルヴより強い。魔導士としての素養もある。だから、大丈夫だと思う。

 だが、群れの仲間を心配するガルヴの心がけは褒めるべきことだ。

 だから、俺はガルヴの頭をなでなでしておいた。

とても大きな建物でした。

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