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【web版】ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。  作者: えぞぎんぎつね
五章

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228/303

228 謎の魔道具

前回のお話:謎の魔力反応を調べよう。


一巻が大好評発売中です。コミカライズも決まりました。

「ひざに矢」3巻も発売されております。

 ケーテが、魔力反応のあった個所を指さしながらルッチラに言う。


「ルッチラ。あの辺りなのである」

「あ、さすがにここまで近づいたら、ぼくにもわかります」

「それは何よりである」


 そしてケーテとルッチラは魔力探査をしながら、その場所を直接調べる。


「うむぅ。これであろうか?」

「そうですね。でも、これって何でしょうか?」

「……わからぬ。魔道具かもしれぬ。ロックが到着するまで触れるのはやめておこう」

「そうですね……。あれ? こっちにも怪しい反応がありますよ?」


 ルッチラは別の何かを見つけて指をさして、セルリスが怪訝な表情になる。


「ルッチラ、それはレッサーヴァンパイアの死骸よ?」

「それはわかっているのですが、死骸の中から何か怪しい反応があるような……」

「解体してみるであります?」


 シアが解体用ナイフを片手に近づこうとするのをケーテが止める。


「シア、ロックが到着するまで待つべきであるぞ」

「それもそうでありますね」


 そして、少し離れた位置から、ケーテとルッチラは死骸の調査を始める。


「確かに、ルッチラの言う通りである」

「ですよね。死骸の中にあることに加えて、隠ぺい魔法も厳重です」

「ものすごく怪しいのである」


 ケーテたちがそんな話をしているところに、俺とニア、ガルヴは到着する。


「怪しいものは二つか」

「うむ。ロックはどう思うのだ?」

「厳重に隠ぺいされているから、怪しいのは確かだな。とりあえずしっかり調べてみよう」

「わかったのだ」

「申し訳ないが、シアとセルリスとニアは、先に怪しくない死骸の処理を進めてくれ」

「わかったわ!」「任せるであります!」「頑張ります」


 戦士組に死骸処理を任せると、俺は怪しい死骸と怪しい場所に魔力探査をしっかりかける。

 あやしい場所には、こぶし大の球状の物体があった。素材は愚者の石である。


「愚者の石で作られた魔道具に、何重にも隠ぺい魔法をかけているな」

「ロック、何の魔道具であるか?」

「もう少し調べないとわからん」

「ロックでも即座にわからないとは……。ものすごい隠ぺい魔法なのであるな」


 俺の横で一緒に調べていたルッチラが言う。


「魔道具であることすら、絶対にばれないようにしていますね」

「我も存在はともかく魔道具であることには、言われない限り気づけなかったと思うのである」

「ぼくは存在にも気づかなかったかも」


 存在に気づかなかっただろうという言葉が引っかかった。

 風竜王ケーテが魔道具であることに気づかないということは、普通は気づかないということだ。

 よほどの高位の魔導士でも気づけないほどの隠ぺい魔法。なぜそこまでして隠したいのか。


 俺は慎重に考えて、一つ可能性に思い至った。

 皆に説明する前、確認のため一応シアとガルヴ、ニアに聞いてみることにする。


「シア、ガルヴ、ニア。この魔道具からはどんな臭いがしているんだ?」

「かすかではありますが、一応ヴァンパイアの臭いがするであります」

「……がう」「少しします」

「後始末をシアたちだけでやった場合、いつ気付いたと思う?」

「処理を全部終えたあと、念のために調べるときには気づいたと思うでありますよ」

「なるほどな……」


 狼の獣人族の集落に攻め込んだレッサーヴァンパイアが持ち込んだものだ。

 嗅覚で察知されることは、敵も織り込み済みだろう。


「魔道具であることには気づかせずに、臭いで愚者の石の存在にだけ気づかせたいのか?」

「よくわからないのである。そんなことして何かいいことがあるのであろうか?」

「特にないわよね。魔道具だろうがなんだろうが、愚者の石の時点で詳しく調べられるし」

「確かにそうでありますね。狼の獣人族がわからなくてもどうせばれるであります」


 ケーテが少し考えてからこっちを見た。


「ロックはどういうことかわかるであろうか?」

「相手が馬鹿ではないのならば……」


 そう前置きして俺は続ける。

 相手が馬鹿なら、それに越したことはないが、それを期待するのは油断が過ぎる。


「この魔道具は、調査機関に持ち込まれることを前提にした魔道具なんじゃないか?」

「ふむぅ? なぜそんなことを?」

「可能性はいろいろあるが、諜報を重視しているのならば……」


 ダークレイスは諜報にたけている魔物だ。

 そのダークレイスがメインで攻めてきている以上、諜報に狙いがあると考えるのが妥当だろう。


「もしかして、盗聴機能があったり、位置を特定する機能がある魔道具なのでありますかね?」

「シアの言うとおりだ。その可能性は高い」


 調査機関がどこに置かれているかという情報はとても重要だ。

 諜報戦に勝利するために、敵が知りたいと思っても当然だ。


 調査機関に持ち込まれるまでの間、魔道具の周りでの会話を聞けるだけでもいいだろう。

 それを考えると、うかつに話し過ぎた気がしなくもない。

 相手に情報を与えてしまった可能性がある。


『ということで、しゃべりすぎたな。以降は念話テレパシーの魔法で話そう』

『了解であります』

『わかったのである』

『わかりました』「ここ」


 シア、ケーテ、ルッチラ、ゲルベルガさまが返事をしてくれた。

ロックさんは、盗聴を疑っているようです。

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