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【web版】ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。  作者: えぞぎんぎつね
五章

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217 戦いの後始末

前話のあらすじ:ダークレイスは倒された。


一巻が大好評発売中です。コミカライズも決まりました。

「ひざに矢」3巻も発売されております。

 俺はダントンの屋敷に戻る前にガルヴを撫でることにした。


「偉かったな、大活躍だ」

「がう!」


 ガルヴの尻尾がビュンビュン揺れた。


「だが、危ないから、気を付けないとだめだからな」

「ががう!」

「本当に無茶はするな」

「がう?」


 ガルヴは理解したのかしてないのか、首をかしげていた。

 あとで、もう一度諭した方がいいかもしれない。

 それから俺はゲルベルガさまに語り掛ける。


「ゲルベルガさま、大丈夫か?」

「ここぅ」


 ゲルベルガさまは、俺の懐でずっと大人しくしていた。


「ゲルベルガさまにはレイスは見えたか?」

「こぅ」


 ゲルベルガさまの返事では見えたかわからなかった。

 見えていたとしてもおかしくはない。


 その後、俺たちはダントンの屋敷に向かって歩いて戻る。

 ケーテが歩きながら、ガルヴを撫でる。


「ガルヴには、ダークレイスが見えていたようであるな」

「そうだな。狼の獣人族は気づかなかったようだし、霊獣狼の特殊能力だろう」

「ガルヴの牙と爪が通じていたのも驚きです」


 モルスの言うとおりだ。基本レイスには物理攻撃は通じない。

 俺の使う魔神王の剣やエリックの聖剣、ゴランの魔法の剣なら通じるだろう。

 水竜の王太女リーアから、俺と族長たちがもらった短剣も通じるはずだ。

 だが、普通の剣はレイスにもダークレイスにも通じない。


「シアやセルリスの剣は通じるのだろうか……」

「微妙なところであるな」


 シアの剣はヴァンパイアロード第六位階から奪った剣だ。

 そして、セルリスの剣はヴァンパイアハイロードから奪った剣である。

 耐久度も切れ味も素晴らしい剣だ。普通の剣ではない。

 だが、レイスに通じるかは別問題だ。


「改めて二人の剣に魔法をかけるべきかもしれないな」

「それがいいと思うのである」


 モルスは真剣な表情で言う。


「ですが、セルリスさんたちの剣も普通の剣ではないですよね」

「そうだろうな。ヴァンパイアロードやハイロードから奪った剣だからな」

「すでに魔法がかかっているのならば……。魔法を加えるのは難度が高いかもしれません」


 確かにそうだ。だが、ケーテとモルスの協力があれば何とかなるだろう。


「モルス。ケーテ。その際は協力を頼む」

「はい、お任せください」

「任せるのである!」

「とはいえ、シアたちにはレイスが見えないし、気づけない。それが問題だな」

「そうであるなー」


 そんなことを話していると、モルスが少し考えてから言う。


「レイス戦用の魔道具を開発するしかないかもしれませんね」

「そうだな。今回作った探知の魔道具を応用すれば何とかなるか」

「携帯可能にするために小型化しないといけないのが大変ですが……」

「結構難しいのである。近くにいるというのが判断できるだけではだめなのだからな」

「うーむ。確かにな」


 ダークレイスと戦うには位置を特定できなくてはならない。

 そのような機能は今回作った魔道具にはないのだ。


「ううむ……厄介かもしれないな」

「そうであるなー」



 そんなことを話していると、ダントンの屋敷に到着する。

 俺の空けた壁の穴が目に入る。まずはあの穴から修繕しなければなるまい。


 俺たちは壁の穴から入って、ダントンたちの待つ食堂へと移動する。

 シア、ニア、セルリス、ルッチラや子供たちも食堂に集まっていた。

 非常時ということで、子供たちを集めて守っていたのだろう。


「ロック! どうだった?」

「侵入者は退治したが……壁に穴をあけてしまった」

「壁の穴など気にするな」


 俺はルッチラにゲルベルガさまを丁寧に両手で手渡す。


「非常時ゆえ、俺と一緒にいた方が安全かと思ってな。ついてきてもらった」

「はい。わかっています。配慮ありがとうございます」

「ここ」


 ルッチラはゲルベルガさまを胸に抱いてやさしく撫でた。

 俺はダントンや族長たちに向けて言う。


「話さなければならないことがありますが……。壁の穴をふさいでからにしましょう」

「ロック。それは敵の侵入を警戒してのことか?」

「そういうことだ」


 壁をすり抜けるダークレイスが相手では壁があっても意味がない。

 とはいえ、敵はダークレイスだけではないのだ。壁は大切だ。


「とりあえず、応急処置で壁の穴をふさぐつもりだが、いいか?」

「それは、助かるが……。資材があっただろうか……」

「資材については心配するな。俺の屋敷を補修したりした時に使った資材が余っている」

「あたしも手伝うであります」「私も手伝うわね!」

「私も!」「ぼくも!」


 シアとセルリス、ニア、ルッチラが手伝いを申し出てくれた。


「魔法も使うのであろう? ならば我も手伝おう」

「私も微力ながらお手伝いさせていただきます」

「それは心強い」


 ケーテとモルスも手伝ってくれることになった。



「助かる。じゃあ、シアとセルリスは石の積み上げを頼む。ルッチラとニアはモルタルを頼む」

「「はい!」」


 俺は魔法の鞄から資材を取り出し、シアたちと手分けして壁を埋めていく。

 なんだかんだで、壁の補修は結構やっている気がする。

 ダントンも手伝おうとしてくれたが、慣れている俺たちに任せてもらった。

空けた穴はふさがなければなりません。

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