表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【web版】ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。  作者: えぞぎんぎつね
五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

212/303

212 魔道具の完成

前話のあらすじ:ケーテも頑張って魔道具作りしてくれた。


一巻が大好評発売中です。コミカライズも決まりました。

「ひざに矢」3巻も発売されております。

 朝食後から魔道具作りを開始して、完成品一号ができたのはおやつの時間の前だった。

 予定していたよりもずっと早い。

 完成を見届けて、ケーテが大きく伸びをする。尻尾が緩やかに上下に揺れた。


「うーん! いい感じにできたのである」

「そうだな。ケーテとモルスのおかげだ」


 俺がそういうと、モルスが丁寧に頭を下げる。

 モルスの尻尾も緩やかに上下に揺れている。


「ありがとうございます。勉強させていただきました」

「ケーテも役に立ててよかったのである」

「がうがう!」


 それまで部屋の隅で眠っていたガルヴが起きてきて尻尾を振る。

 ガルヴなりに邪魔をしないように気を遣っていたのだろう。


「ガルヴも大人しくしていて偉かったぞ」

「がうーっがう」


 ぴょんぴょん飛び跳ねている。

 それなりに広い部屋だが、ガルヴが飛び跳ねるには狭すぎる。


「あとで散歩に連れて行ってやるから、落ち着きなさい」

「がーう!」


 俺はガルヴを落ち着かせて背中を撫でながら、ルッチラにも目を向ける。

 ルッチラは助手としてテキパキ手伝ってくれていた。


「ルッチラもありがとうな」

「いえ、ぼくはあまりお役に立てなくて……」

「そんなことはない。助かった」

「ココッ!」


 ゲルベルガさまはルッチラの肩にぴょんと飛び乗り、羽で頭をふぁさふぁさする。

 よくやったと褒めているようだ。

 ケーテがルッチラの頭を撫でながら言う。


「ルッチラも錬金術に詳しいのであるなー。大したものなのである」

「いえ、ぼくなんて、まだまだです!」

「いや、確かにルッチラの知識は役に立った」


 ルッチラは最近はフィリーの助手をしている。だから錬金術も勉強しているのだ。

 魔法と錬金術を両方使えるようになるのかもしれない。

 戦闘には魔法の方が役に立つ。だが、金になるのは錬金術だ。

 ルッチラは将来、族長になって一族を復興させるのだ。

 それには当然金がかかる。錬金術も学んでおいて損はないだろう。


 俺はルッチラに魔道具を手渡した。

 魔道具は金属でできていて、ゲルベルガさまより一回り小さいぐらいの大きさだ。


「ルッチラ。試しに起動してくれ」

「わかりました!」


 ――ブォン

 起動と同時に、一瞬だけ低い音が鳴る。

 これで、魔道具を中心として、人の身長の五倍ほどを半径とする球が影響下に入る。

 この中に昏き者どもが入ると、鈴のような音が鳴るようになっているのだ。


「魅了された者だけ察知するより、昏き者全部まとめて引っかかるようにした方が簡単なのであるなー」

「はい。意外でした。勉強になります」


 最初は魅了された者を察知する魔道具にしようとした。

 だが、選別するのが想定よりもずっと大変だった。

 それゆえ、まとめて察知することにしたのだ。


「まあ、魅了された者も察知できるから問題ないのである」

「そうだな。眷属やレッサーヴァンパイアも、中に入れていいわけがないからな」

「そうですね」


 そんなことを話していると、ケーテのお腹がぐぅっと鳴った。


「ついつい、魔道具作りに熱中してしまったのである。お腹がすいたのだ」

「そうだな。お願いして、ご飯を食べさせてもらおうか」

「うむ!」「がう!」「ここっ」


 ケーテ、ガルヴ、ゲルベルガさまが、嬉しそうに返事をする。

 そして、俺たちは魔道具製作用の部屋を出た。

 すると、部屋の外で待っていた若い狼の獣人が急いでかけてくる。


「ロックさん。みなさん。作業は終わられましたか?」

「はい、おかげさまで」

「うむ、疲れたのだ」

「それでは、すぐにお食事をご用意いたしますので、食堂でお待ちください。それとも持ってきた方がよいでしょうか?」

「いや、食堂でいただきます。ありがとう」


 邪魔をしないよう食事ができても知らせずに、外で待っていてくれたのだ。

 魔導士はどうしても熱中すると寝食を忘れる傾向がある。


「みんなと一緒に食事をとれなくてすまない。手間をかけさせた」

「いえ、お気になさらないでください!」


 若い獣人は笑顔で返事をしてくれる。

 ケーテがそんな若い獣人に向かって言う。


「おぬしは、ちゃんとご飯食べたか?」

「まだですが、気になさらないでください。私たちは数日食べなくても大丈夫なので!」

「むむ。それは迷惑をかけたのである。一緒に食べよう」

「い、いえ! そんな! 勿体ないことでございます」


 恐縮する若い獣人にモルスが言う。


「気にしないで大丈夫ですよ。せっかくですから」

「ケーテもモルスも無理に誘ったらだめだ。逆に気を遣うかもしれないだろ」

「そうであったか……」「すみません」


 慌てた様子で若い獣人が言う。


「そんな、そんなことはないです。ではお言葉に甘えて……」

「それがよいのである!」


 そして、俺たちは食堂に到着した。

これから遅めの昼食です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ