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【web版】ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。  作者: えぞぎんぎつね
五章

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199 狼の獣人族の宴会

前話のあらすじ:ダントン以外の族長たちも集まっていた。


GAノベルから2月14日前後発売です。コミカライズも決まりました。

「ひざに矢」3巻も同日発売です。

 最年長の族長がケーテにも気づく。


「こ、これは風竜王陛下! ロックどのだけではなく、陛下にもご来臨たまわり光栄の至りでございます」

 それを聞いて、他の族長たちもケーテに気づいた。

 慌てた様子でひざをついて、頭を下げる。


「そう畏まらなくてもよいのである! 今日は遊びに来ただけであるから、普通に接してほしいのだ!」

「いえ、そういうわけには……」

「我は今日羽を伸ばしに来たのである。畏まられては逆に困ってしまうのだ」


 俺も一応フォローしておく。

「風竜王陛下は連日の激務でお疲れですから、肩の力を抜きたいと仰せなのですよ」


 ケーテは激務というほどではないはずだが、激務ということにしておこう。

 ケーテはうんうんと頷いた。


「我は激務ゆえなー」

「そういうことでしたら……」


 やっと族長たちは立ち上がる。

 ケーテは畏まられるのはあまり好きではないので、嬉しそうだった。



 それから族長たちが歓迎の宴会を開いてくれた。

 その中で、狼の獣人族について、俺は尋ねる。


「どのくらいの部族数があるんですか?」


 年長の族長が、俺の盃に酒を注ぎながら答えてくれる。


「大きく分けて十二になります」

「大きく分けてというのは?」

「説明が難しいのですが、十二以外に例外的な小さな部族もあるのです」

 この辺りの狼の獣人族は基本十二部族の一員なのは確からしい。


「例外ですか」

「もっとも最近の例外はシア・ウルコットですね」

「シアが?」


 とても意外だ。シアはダントンの部族の一員のはずだ。

 俺は末席の方に座っているシアをちらりと見た。

 シアは周囲の族長たちとにこやかに話している。


「シアはなにか問題でも起こして追放とかされたのでしょうか?」

「いえいえ、そういうことでありません」


 俺がこちらの世界に帰ってきて最初のハイロード討伐のあと。

 十二部族の族長はそれぞれ騎士の爵位を与えられた。

 そして、シアもまた、特別にダントンとは別に騎士の爵位を与えられている。

 シアの功績は特に大きかったからだ。


「それゆえ、シア・ウルコットは一人ながら、族長として扱われているのです」

「なるほど……そういうシステムなのですね」


 とはいえ、シアはダントンの一族に所属してもいるらしい。

 つまりダントン一族には族長待遇が二人いるということになる。

 分家の当主みたいなものなのだろうか。


 俺の隣に座っていたセルリスが真面目な顔で言う。


「シアも大変なのね」

「そうだな。族長だから責任も大きそうだ」

「族長の責務。大変そうです」


 俺が同意すると、シアと同じく一人族長になる予定のルッチラもうなずいた。

 ルッチラは正式に継承はしていないが、唯一の生き残りなので族長になる予定だ。

 色々と思うところがあるのだろう。


 セルリスとルッチラは客人なので俺やケーテと一緒に上座の方に座っている。

 当然ゲルベルガさまは神様なので、上座の中でも俺とケーテの間、一番中心の席だ。

 ガルヴも客人として扱われている。狼の獣人族にとって特別な狼の霊獣だからだ。



 宴会が終わると、セルリスとルッチラ、ケーテはシアたちのところに行った。

 族長たちに接待されているより、親しい者同士話したいのだろう。


 俺もゲルベルガさまとガルヴと遊ぼうとしていたら、年長の族長から呼び止められた。


「ロックさん、少しよろしいですか?」

「どうされました?」

「じつは……ご相談があるのです」

「わかりました」


 俺と年長の族長、そしてゲルベルガさまとガルヴは別室に移動する。

 部屋の中では、シアたちの父であるダントンが待っていた。


「ロック、折角寛いでいたところ、すまないな」

「いや気にしないでくれ。ガルヴとゲルベルガさまと遊ぼうと思っていただけだからな」

「ははは」

 年長の族長は笑った。俺の言葉を冗談だと思ったのだろう。


 俺が椅子に座ると、

「こ」

 ゲルベルガさまは俺の右ひざの上にちょこんと乗る。

 ガルヴは俺の左ひざにあごを乗せた。

 ゲルベルガさまとガルヴを撫でながら、俺は尋ねる。


「相談とはいったい?」

 ダントンと年長の族長は互いに顔を見合わせる。

 そして、ダントンが語りはじめた。


「ロック。身内の恥をさらすようなのだが……。我らから情報が洩れている恐れがあるんだ」

「…………ほう」


 エリックも同じ可能性を指摘していた。

 ダントンたちも、狼の獣人族から情報が洩れている可能性に気が付いていたようだ。


 年長の族長が言う。


「もちろん我らから内通者が出るとは考えたくはありません」

「つまり、出入りの業者などを警戒しているということですか?」

「さすがはロックさんです。まったくもってその通りです」


 別に俺はすごくはない。

 エリックやゴランが言っていたことだ。


「我らはヴァンパイアそのものや眷属は一目でわかります。ですが魅了にかけられたものは区別できないのです」

「私に相談するということは、魅了にかけられたものがいないか調べて欲しいということですね?」

「いえ! とんでもないことです。偉大なる英雄にそのような雑事を頼むわけには参りません!」


 少し笑って、ダントンが言う。

「ロック、違うんだ。俺たちは魔導士に詳しくない。だから信用できる魔導士を紹介してほしいと思ったんだ」

「そうか。そういうことなら、俺がやろう」


 俺がそういうと、年長の族長とダントンは少し驚いたようだった。

狼の獣人族としても危機感を持っていたようです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 探りに来たのがバレたら信頼関係が崩れるんじゃないかって、ヒヤヒヤしてたから、狼の獣人の方から話してくれてホッとした!
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