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【web版】ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。  作者: えぞぎんぎつね
五章

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197 狼の獣人族の集落

前話のあらすじ:狼の獣人族の集落についた。


GAノベルから2月発売決定です。コミカライズも決まりました。

「ひざに矢」3巻も同日発売です。

 着陸したケーテの背からみんなで降りると、ダントンが駆け寄ってくる。


「よくぞ来てくれた!」

「急に会いに来てすまない」

「気にしないでくれ! ロックならいつ来てくれても嬉しい。皆もよく来てくれた」


 ダントンと俺はフランクに語り合う間柄なのだ。


 そして狼の獣人族の大人たちが次々に挨拶しに来てくれる。

 全員ではないが有力者らしきものたちは全員自己紹介してくれた。


 最後になって、一人の女性が近づいてきて頭を下げる。


「いつも娘がお世話になっております。ニアの血縁上の母です」

「あっ、こちらこそいつもお世話になっております」


 俺はニアたちの母親のことは全く知らなかった。

 会話に全くのぼらないので、勝手にいないと思い込んでいたところもある。


「母上がいらっしゃるなら、もっと早く教えてくれればご挨拶に……」

「ニアは父の子でありますからね」

「そうなのです。私の親は父ですから」

「ふむ? つまり、どういうことだ?」


 俺の疑問に対して、シアとニアが説明してくれる。

 狼の獣人族の間には基本的に結婚はなく、片方が親となるようだ。

 子が生まれると、五歳ぐらいでどちらの子供とするか決めるらしい。

 母の子とすることの方が多いが、たまに父の子にすることもある。


「基本子供は沢山生まれるでありますからね」


 母の子、血縁上のニアの兄妹姉妹もいるとのことだ。

 母の子の血縁上の父親はダントンだったり、そうじゃなかったりらしい。


「そうなのか。俺たちの風習とは少し違うんだな」

「そうでありますねー」


 狼の獣人族の風習は只人族とは異なるようだ。

 そして、ニアの母は別の部族の族長でもあるとのことだ。


「ニアの母上ってことは、シアの血縁上の母上はまた別なのか?」

「そうでありますよ。結構前にヴァンパイアとの戦いで死んでしまったでありますが」

「そうなのか。変なこと聞いてすまない」

「気にしないでほしいであります」


 シアはそう言ってほほ笑んだ。

 セルリスとルッチラも真面目な表情で聞いていた。


「知らなかったわ。だいぶ私たちとは制度が違うのね」

「うちの部族もそんな感じです」

 ゲルベルガさまを抱いたままのルッチラがそう言った。

 ちなみにルッチラは只人族ではなく魔族である。


「え? そうなの?」

「そうですよ」

「ここぅ」


 ゲルベルガさまもルッチラに同意するようにうんうん頷いていた。

 結婚して二人で子供を育てるというのは、只人族に一般的なだけなのかもしれない。


「ところで、風竜族のそういう制度はどうなんだ?」

 俺は気になったのでケーテに尋ねる。


「結婚制度はないが、生まれた子は両親の子ではあるぞ。ただ我らは卵から生まれるゆえな。父母の役割の差が少ないのだ」

「へー、勉強になるな……む?」


 そう教えてくれたケーテは全くこっちを見ずに子供たちと遊んでいる。

 ケーテの周りには狼の獣人族の子供が沢山集まっていた。

 怯える様子もなく嬉しそうにケーテにしがみついたり匂いをかいだりしている。

 子供たちに人気なことが、ケーテもすごく嬉しいようだ。


「待て待て、慌てるでないのである。尻尾は一本しかないのだ」

「きゃっきゃ!」


 すごく楽しそうだが、本来の姿のままだと屋敷にも入れない。


「ケーテ、そろそろ人の形になったらどうかな?」

「おお、ロックの言う通りであるな。子供たち待っているがよい。ちょっと変身してくるのだ」

「変身? すげー」「ケーテさんすげー」


 子供たちの期待をうけて、ケーテは近くの森の中へと走っていった。

 男の前で裸になるなと言われたのを気にしたのだろう。


 ケーテが走り去ると、子供たちの興味はガルヴに移る。


「でっかいなー」

「がう」

「霊獣さんだね! お名前なんて言うの?」

「ガルヴだぞ」

「ガルヴーいい子だねー」

「がーう」


 子供たちに撫でられ、ガルヴはご機嫌だ。

 子供たちと互いに匂いを嗅ぎあい、顔を舐めあったりしている。

 そこにケーテが戻ってきた。意外と早かった。急いだのだろう。


「子供たち、待たせたのである!」

「…………」


 子供たちは人型状態のケーテを見て首をかしげる。

 今のケーテの姿は期待とは違ったようだ。


「む? ケーテであるぞ!」

「う、うーん。ケーテ姉ちゃん、かっこいいと思う」

「そうだね、かっこいいと思う」


 ケーテは子供たちに気を使われていた。子供たちはガルヴの周りから動かない。

 かわいそうなので慰めておく。


「まあ、気を落とすな。インパクトが違うから仕方ないぞ」

「……そうであるな」


 そんな様子を見ていたダントンが言う。


「立ち話も何ですし、皆さん、我が家においでください」

「ありがとうございます」


 俺たちはダントンの家に案内してもらう。

 かなり大きな屋敷だった。


「立派なお屋敷なのね」

「族長でありますからねー」


 シアが言うには、族長の屋敷は縄張りの中心にあるのだという。

 会議などを開く必要があるので、かなり大きいのだ。

 そして、ヴァンパイアとの戦いの際には砦となる。

 だから、しっかりとした石づくりの建物なのだ。


「おお、これは戦いやすそうだな」

「さすがは、ロック。やはりわかるか?」


 ところどころに水が流れていた。

 ヴァンパイアが流れる水を越えられないというのは迷信だ。

 だが、流れる水を嫌うのは事実なのだ。一瞬動きが鈍くなる。


 日光が入りやすい構造にもなっている。

 もちろん日の光を浴びた程度ではヴァンパイアは死なない。

 だが、ヴァンパイアが日光を嫌うのは確かなのだ。


 生死を分ける戦いの際、一瞬動きが鈍くなるだけでも、大きく有利になる。


「ああ、ヴァンパイアの特性をよく考えている。参考にさせてもらおう」

「参考にしてくれ!」


 ダントンはとても嬉しそうだった。

狼の獣人族の族長の屋敷は砦になっていました。

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