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194 獣人族への内偵準備

前話のあらすじ:狼の獣人族に何かがありそうだ。


GAノベルから2月発売決定です。コミカライズも決まりました。

「ひざに矢」3巻も同日発売です。

 正直、断りたい。

 狼の獣人族は俺を信頼してくれている。

 その信頼を利用して、情報収集するなど誠意に欠ける気がするのだ。


 狼の獣人族のメンバーを疑っているわけではない。

 疑っているのは出入りの商人などの、狼の獣人族周辺の者たちである。

 だが、獣人族も信頼していないものを身近には寄せ付けたりはしないだろう。

 つまり、俺たちは狼の獣人族が信頼しているものを疑うということだ。


「……わかった。情報収集は苦手だがやってみよう」

「すまない」

「いや、いいさ」


 もし、狼の獣人族の周辺に怪しいものがいるならば、看過できないのも事実。

 他に適した人物はいない。俺がやるしかない。


「みんなやるべきことをやっているんだ。俺もやるべきことをやるだけだ」


 敵の本拠地の後始末などは狼の獣人族と、冒険者ギルドが手分けしてやっている。

 枢密院も全力で調査を続けている。近衛騎士団もそうだろう。


 天才錬金術士であるフィリーも枢密院からの調査依頼で忙しそうだ。

 枢密院で調査しきれなかった戦利品が全部運び込まれるのだ。

 徒弟のミルカとルッチラもフィリーの手伝いを頑張っている。


 俺も出来ることはするべきだろう。


 エリックが言う。

「シアやニアには、言わないほうがいいだろうな」

「ああ、気を使わせることになるだろう。俺だけ知っていればいい」


 ゴランが真剣な表情になった。

「わかっていると思うが、セルリスには言うなよ?」

「……ああ、わかっている」


 セルリスは一番言ったらダメな奴だ。明らかに隠し事が苦手そうだ。

 口が軽いとかじゃなくて、挙動がおかしくなってばれるタイプだ。


「コッココ」

 ゲルベルガさまが少し緊張している。

 俺の懐の中で、ふるふるしていた。

 まるで自分から情報がもれないか心配しているかのようだ。


「ゲルベルガさまは、気にしなくていいよ」

「こぅ」


 俺が優しく撫でると、ゲルベルガさまは小さく鳴いた。

 ゲルベルガさまは人族の言葉を話せないので、ばれようがない。


「……がぁーう」

 一方、ガルヴは大きなあくびをしていた。

 ちらりとみると、「お話終わった?」と言わんばかりに口を舐めてくる。

 舐めさせながら、ガルヴに言う。


「まだ、お話し中だぞ」

「……がう」


 ガルヴはつまらなそうにする。舐めるのをやめて、あごを俺の太ももに乗せた。

 仕方ないので、頭を撫でてやる。


「そういえば、エリック。狼の獣人族は部族ごとに別れて暮らしているんだよな」

「そのはずだ」

「シアたちの部族なら、簡単に遊びに行けるが、それ以外となると口実が必要だな」

「……そうだな。なにか考えておこう」

「いや、少し待て」

「む?」


 嫌な予感がする。

 エリックがなにか考えたら、よくないことを思いつきそうだ。

 新しい役職を作ったりしかねない。


「俺が考えるから、エリックは気にしないでくれ」

「そうか? 遠慮しなくていいんだぞ」

「いや、本当にだいじょうぶだ」

 俺が適当に考えればいいだろう。



 その夜はエリック以外みんな、俺の家に泊まっていった。

 早朝、ゴランが帰ってから、俺はシアに言う。


「シアの部族に挨拶に行くのって迷惑だろうか?」

「迷惑なんてことは全くないでありますが……。どうしたでありますか?」

「いや、ダントンにはお世話になっているから、挨拶に行くべきかと思ってな」

「それはまったく気にしなくていいであります。むしろお世話になっているのは我々でありますから」


 シアには予想通り遠慮された。


「まあ、それだけではないんだ。これから昏き者どもとの戦闘が激しくなるかもしれないだろう?」

「そうでありますな」

「情報連絡を密にしておきたい。そのためには一度出向いたほうがいいだろう。転移魔法陣も配置したいぐらいだ」

「なるほどであります。そういうことなら、いつでも遊びに来て欲しいであります」

「助かる。ニアも行くだろう?」

「はい。お供いたします!」


 セルリスがぴょんぴょん跳びはねながら手を上げる。

「わたしも! わたしも行きたいわ!」

「がうっ! がうっ!」

 ガルヴもセルリスと一緒に跳びはねている。楽しい気持ちになったのだろう。


「…………」

 その横ではタマがきれいなお座り姿勢を維持していた。

 ガルヴにはタマの落ち着きを見習ってほしい。

 だが子狼のガルヴには難しいことかもしれない。


「コッコッ! コココケ」

 ルッチラのひざの上にいた、ゲルベルガさまが元気に鳴く。

 そしてパタパタとんで俺の肩にとまる。


「ゲルベルガさまも一緒に来たいのか?」

「ここぅ」


 一緒に来たそうな鳴き方な気がした。


「俺が留守にしている間、王宮に保護してもらおうと思っていたのだが……」

「こっこ!」


 ゲルベルガさまは甘えるように俺の顔に体を押し付ける。

 俺と一緒に行きたいらしい。


「じゃあ、ゲルベルガさまも一緒に行こうか」

「こっ!」

「そういうことなら、ぼくもご一緒しましょう!」

 ルッチラもついてくることになった。

みんなでシアの実家に行くことになりました。

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