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【web版】ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。  作者: えぞぎんぎつね
四章

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176 読書の魔法

前話のあらすじ:風竜王の本はとても大きい。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 ケーテの竜の本に関する説明は腑に落ちる。

 読む側も、そして書く側も、時間があるので長大になるのだろう。


「なるほど。体の大きさだけではなく、時間の長さも書籍のあり方に影響をあたえるんだな」

「考えさせられるのだ」


 フィリーも感心している。


「とはいえ……」

 俺は困った。


 情報量が多いのは素晴らしい。夢のような本と言える。

 だが、読むのは大変だ。

 俺もフィリーも寿命のある人族なのだ。

 そして、あまり時間を費やしていては、水竜の集落が襲われてしまう。


「さすがに、時間がかかりすぎるのだ……」


 好奇心旺盛で、知識欲も豊富なフィリーでも困っていた。

 俺とフィリーの様子を見て、ドルゴが言う。


「ケーテ。ロックさんたちに、読むべき場所を教えて差し上げなさい」

「え?」

「え? ではない。教えたはずだな」

「教えてもらった覚えはあるが、あまり得意ではないのである」

「ケーテ」

「わかったのである」


 そして、ケーテは深呼吸をした。


「我ら竜族も暇なわけではないのである」

「え? そうなのか?」


 思わず失言してしまった。ケーテが暇そうに見えるからだ。

 ドルゴは忙しそうだから、暇な奴ばかりではないというのはわかる。


「そうなのである」

 ケーテは特に気にしていないようだ。


「長い一生、暇な時もあるのである。そういう時はゆっくり本を読むのだ」

「なるほど。それはうらやましいな」

「うむ。だが、忙しいとき、いちいちこんな分厚くて巨大な本を読んでいられないのである」

「竜もそうなのか。いや、そりゃそうか」

 知りたい情報があって調べるとき、巨大な本は不便極まりない。


「もちろん、そりゃそうなのであるぞ」

「ということは、竜族は対策を持っているのだな?」

 フィリーがケーテに対して、身を乗り出すようにする。


「そうである。その魔法を教えるのである」

「……魔法は、フィリーは苦手なのだ」

「それなら、我がフィリーのかわりに魔法を使うのだ。とりあえず、先にロックに魔法を教えるのである」


 それからケーテは俺に魔法を教えてくれた。

 本の中に書かれている文字列を探し出す魔法だ。


「このようにすると、知りたい文字列が光るのである。本を外から見てもわかるぐらい光るから、便利なのである」

「ほほう、それは助かる」

「ロック、試しに一回、やってみるのである」


 俺は教えてもらったばかりの魔法を使う。

 本の各所が光りはじめた。


「おお、すごいのである。一発で習得してしまったのだな。我は使えるようになるまで結構かかったのである」

「ケーテの教え方がいいからだ」

「がっはっは、照れる」


 それから俺は魔法をかけて、本の中から必要な個所を探していった。


「フィリー。何が知りたいのであるか?」

「そうだなー……」


 フィリーが文字列を指定して、それをケーテが魔法で探す。

 そんな感じで、フィリー、ケーテ組は本を読んでいった。


 魔法を使って目当ての文字列を探し、実際に読んで欲しい情報か判断する。

 やってみると、思いのほか脳みそが疲れる感じがする。


 一通り調べ終わるころには夕方になっていた。


「もう。もう。何も考えられないのである」

 ケーテがぐでっとして、机に突っ伏していた。


「ケーテお疲れさま。ありがとう」

「ケーテ助かったのだ!」


 フィリーも疲れた表情だが、ケーテほどではない。


「いやいや。気にしなくていいのである」


 近くにいたドルゴが言う。


「ケーテ。頑張ったな」

「とうちゃんが我をほめるとは、珍しいことなのである」


 そういって、ケーテは、がははと力なく笑う。

 本当に疲れていそうだ。


「ケーテ。そこまで疲れるのはさぼっていたからだ。ロックさんを見てみろ」

「む?」


 ケーテが俺の方を見る。


「ロックさんは、魔法を使って探し出して、読んで判断して、また魔法を使って。つまりケーテとフィリーさんの二人分の働きをしていたのだ」

「ロックは……本当に人族であるか?」

「もちろん、人族だ」

「人族とは恐ろしいものであるなー」


 フィリーが言う。


「ロックさんが特殊なのだ」

「もちろんロックは特殊というか、異常というか、化け物みたいなものであるが……」


 ケーテの言い方が結構酷い。


「フィリーも大概であるぞ。脳みその回転早すぎるのである」

「そうかな?」


 フィリーが首を傾げていた。


「我もフィリーの読んでいるところを読んでいたのだが……。全然ついていけなかったのである」

「フィリーは読書をよくしているからだと思うのだ」


 フィリーがそういうと、ドルゴが首を振る。


「フィリーさん。基本的に竜族は人よりも読書スピードがはるかに速いのです」

「それは、知りませんでした」

「ケーテがさぼっていたことを差し引いても、読解の速さで風竜王に勝つとは……。錬金術の天才とお聞きしておりましたが。心底驚きました」

「過分なお言葉ありがとうございます」


 ドルゴに褒められて、フィリーは照れていた。


「ロック。フィリー。よさげな魔道具を作れそうであるか?」

「ああ、頭の中にはもう魔法回路はできている。フィリーはどうだ?」

「フィリーも準備完了なのだ。素材も……。一つだけなら手持ちでいけると思うのだ」


 やっと、魔道具製作に入れそうだ。

いよいよ、魔道具の製作です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] フィリーは、いい歳をして何で自分の事を名前呼びしてるんだ? 我が可愛くないって前にあったけど、幼稚だって誰か教えてやればいいのに。
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