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175 風竜王の書庫

前話のあらすじ:風竜王の書庫にも魔道具に関する資料があるようだ。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。


 次の日、フィリーはエリックに送られて帰ってきた。タマも一緒だ。

 早速、タマは俺の顔を舐めてくる。

 俺はタマを撫でながら言う。


「ご両親はお元気だったか?」

「元気だったのだ。昏き者どもの対策で忙しいらしいのだが……」


 エリックが笑顔で言う。

「マスタフォン侯爵夫妻には尽力してもらっている」

「それは助かる。枢密院でってことだよな?」

「もちろんだ。機密を扱える優秀な官僚はいつでも足りないからな」


 エリック直属の枢密院が中心になって、内偵などを進めている最中だ。

 官憲の主務省庁である内務省には内通者がいる疑念が掛かっている。

 だからこそ、枢密院の役割が大きいのだ。

 もと財務卿でもあるマスタフォン侯爵は、文官として活躍しているのだろう。


 フィリーの帰宅に気づいたミルカが走ってくる。


「先生おかえりなさい!」

「ただいまだ。昨日は授業できなくてすまない」

「気にしないでおくれよ! だされた課題をやっているからね」

「素晴らしい。今日はしっかり……」


 フィリーは授業する気の様だ。だが、今日は風竜王の宮殿に行かねばならない。


「すまない。フィリー。それにミルカも」

「む?」

「ドルゴとケーテが、風竜王の宮殿の資料を見せてくれるって言ってくれていてな」

「……それは、興味深いのだ」


 ミルカが慌てたように言う。


「おれのことは気にしなくていいんだぞ! 課題はまだあるからね!」

「ミルカ、すまない」

「ロックさんも気にしないでおくれよ!」


 フィリーは朝食後に課題の指示を出す。

 そして、俺とフィリーはドルゴとケーテと一緒に風竜王の宮殿に向かった。

 ガルヴとタマも一緒だ。


 転移魔法陣を通るので一瞬である。

 今はドルゴとケーテは人の姿だ。


「これが、風竜王の宮殿……」

「わふぅ」


 フィリーとタマは驚いている。

 竜サイズで作られた宮殿なので、全体的にとても大きいのだ。


「書庫はこちらである」

「ついて来てください」


 ケーテとドルゴに案内されて書庫へと向かう。

 書庫は魔法で、厳重に封をされていた。


「かなりしっかりと防御しているのだな」

「もちろんである。書物は貴重品ゆえな。ちなみに宮殿でロックが火炎魔法をぶっ放したが、ちゃんと延焼を防いだのであるぞ」

「それは、……すごい」

「……わふ」

 フィリーとタマが驚き、ケーテはどや顔をしている。


「ここが書庫である」

 書庫に入ると、ケーテはまたもどや顔をした。


「とても大きい本だなぁ」

「わふわふ」

 フィリーは驚いてきょろきょろしていた。

 そんなフィリーの周りをタマがぐるぐる回る。

 風竜王の宮殿に来てからのフィリーは驚きっぱなしだ。


「がう」

 ガルヴは本棚に対して興味を示していない。

 俺の背に鼻を押し付けている。


「竜の読み物であるからな。大きいのだ」

「ケーテ、ところで、錬金術の棚はどのあたりに?」

「……えっと、このあたり全部であるなー」


 ケーテが壁一面を指さした。

 竜の書庫だ。部屋の幅がとても広い。天井も当然高い。

 具体的に言うと、幅は成人男性の身長の五十倍ほど。

 高さは十倍ほどだろうか。

 あまり大きすぎるので感覚が正しいのかわからないレベルだ。


「大量だな」

「何日もかかりそうなのだ」


 一冊の本が巨大だとはいえ、本棚も巨大なのだ。

 蔵書量がものすごく大量だ。


「これは大変だ」

 フィリーは口ではそういうが、目が輝いていた。

 大量の本を前にして、興奮しているのかもしれない。

 あくなき知識欲だ。


 ドルゴが落ち着いた口調で言う。

「基本、すべての本は禁帯出、持ち出し禁止です」

「わかっています」

「読ませられない本もあります」

「それはそうでしょう」


 錬金術の得意な、風竜族。その王の書庫だ。

 一子相伝の術の類だったり、禁術的なものもあるのだろう。


「ご自由にご覧下さいとは、残念ながら言えません」

「はい、一部の本を読ませていただけるだけで助かります」

「ご理解感謝いたします」


 俺とドルゴの会話を聞いて、フィリーは少し残念そうだった。

 ドルゴは、本棚に近づき、本を数冊とってきてくれる。


 一辺が成人男性の身長ぐらいある本だ。

 厚さも俺のひざの高さぐらいまではある。装丁は美しい見事なものだ。

 本が机の上に出されると、ガルヴも興味を示した。

 一生懸命匂いを嗅いでいる。


「とても大きいですね」

「竜の読む本ですから」

「なるほど」


 体の大きな竜ならこのぐらい大きい方が扱いやすいのかもしれない。

 俺は本のページをめくった。

 表紙は分厚く重かった。だが中の紙はとても薄い。

 そして、人族の書物と文字の大きさは変わらない。


「一ページの文字量がものすごいですね」

「竜の書物ですから」

「それにページ数も……」

「それも、竜の書物ですから」


 ドルゴは笑顔だ。

 本の表紙を必死の形相で、めくったフィリーが言う。


「これは体が鍛えられるのだ」

「重いのは表紙だけだから安心しろ」

「それは、安心だが……。ロックさんの言う通り、随分と一冊当たりの文字の量が多いのだな」


 一ページの面積が人族の本の何十倍とあるのだ。だが、文字の大きさは変わらない。

 それに紙が薄い。その上。本自体は人族の本の何倍もある。

 一冊当たり、一万ページぐらいあるようだ。


「寿命の長い竜には時間があるのだ。だから、本はそうなりがちである」

 どや顔でケーテが言った。

竜族の本は情報量が多いようです。

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