表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

172/303

172 精神抵抗向上計画

前話のあらすじ:セルリスは狼獣人族と行動を共にしたいようだ。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 俺の懸念をよそに、シアは優しい笑顔を浮かべた。


「セルリスが手伝ってくれるなら、心強いでありますよ!」

「セルリスさん。お願いしますね」


 ニアも笑顔だ。

 セルリスは剣の腕は素晴らしい。

 剣自体も俺がヴァンパイアハイロードから奪った剣を使っている。

 申し分のない戦力だ。


 だが、忘れてはいけない。

 ヴァンパイアには魅了がある。

 狼の獣人族は魅了が効かないから、ヴァンパイア狩りを生業としているのだ。

 セルリスの剣の力量が高くとも、魅了にかかればひとたまりもない。


「セルリス。待ちなさい」

「ロックさん。反対なの?」

「ヴァンパイアは魅了が恐ろしいからな」

「……」

「だから、魔道具を手に入れてからにしよう。出発はそれからにしてくれ」

「魔道具?」


 セルリスがきょとんとする。よくわかっていなさそうだ。


「精神抵抗を高めるアクセサリー的な、そういうものだ」

「そんなの……売っているのかしら?」

「珍しいが、探せばあるだろう」


 かなり高価なはずだが、お金は何とでもなるだろう。

 問題は、品自体があるかだ。

 見つかればよし。見つからなくとも、セルリスを足止めできる。

 そんな、汚い考えだ。誠実ではないと思う。

 それでも、セルリスが死ぬよりはいい。


 セルリスが心配そうな表情になった。


「でも、高いのでしょう?」

「セルリス。冒険者にとって大切なことを教えておこう」

「なにかしら?」

「金で解決できることは、そうすべきだ」

「……なるほど」


 セルリスは納得してくれたようだ。

 生存率を高めるために、お金を惜しんではならない。

 それが冒険者の鉄則だ。


「フィリー、錬金術で、そういうアイテムって作れないでありますか?」

「ううむ! シアは難しいことを尋ねるものだ!」


 シアの問いに、フィリーは真面目な表情で考え込む。

 確かにそういうアイテムは錬金術の範疇の気がしなくもない。


「素材は作れるし、いいところまで行けると思うのだが……魔法も組み合わせないと厳しいと思うのだ」

「そういうものなのでありますね」

「じゃあ、先生の錬金術と、ロックさんの魔法で作ればいいんじゃないのかい?」

「ほむ?」

 ミルカの言葉をうけて、フィリーが俺の顔を見る。


「がう?」

「わふ?」

「ここ?」

 ガルヴとタマ、ゲルベルガさままでこっちを見ていた。

 期待のこもった目だ。


「魔道具はあまり作ったことがないからな……」

「ロックさんにも苦手な魔法があったでありますね」


 別に苦手ではない。知らないだけだ。

 作り方さえわかれば、並みの魔道具職人よりうまく作る自信はある。

 とはいえ、作り方を知らなければ始まらない。


「王宮の図書室辺りで、魔導書を閲覧させてもらおうかな」


 おそらく昔の魔導士が書物に残しているだろう。

 禁忌だったり、秘術だったりしなければ、大概魔導書が残っているものだ。

 精神抵抗を上げる魔道具は別に、禁忌でも秘術でもない。


 基礎理論さえわかればいい。応用で効果を高めるのは俺は得意だ。


「早速、王宮に行ってくる。くれぐれも勝手にヴァンパイア狩りに出かけたりするなよ?」

「わかっているわ。……あの」

「どうした?」

「ロックさん、ありがとう」

「気にするな」


 俺は水竜の集落の防衛に向かうのが遅くなるとモーリスに腕輪で告げる。

 それから一人で地下の秘密通路に向かうことにした。

 図書室に向かうので、ガルヴはお留守番だ。


「エリックには連絡しといたほうがいいな」


 通話の腕輪を使うことにした。

 いつもの集団通話モードではなく、個別モードで連絡する。


「む? 図書室とな?」

「そうだ。精神抵抗を高める魔道具の作り方を調べたいんだ」

「そのようなものあっただろうか……、とりあえず、司書に言っておこう」

「ありがとう、手間を掛ける」

「いや、いい。それよりもガルヴとゲルベルガさまを連れてきてくれ」

「む? 何か用か?」

「いや、娘と妻がな……」

「なるほど。あ、そうだ。それなら、タマも連れていこうか?」

「いいのか?」

「フィリーに頼まないといけないがな。図書室の閲覧、フィリーも一緒でいいだろう?」

「もちろんだ」


 フィリーも一緒に調べてくれれば助かる。

 魔道具の素材は、錬金術の領分だからだ。


 俺は獣たちとフィリーを連れて、王宮に向かう。

 フィリーは、念のために一応覆面をつけている。

 フィリーがどこにいるかは、機密なのだ。


 秘密通路を通りぬけると、エリックが待っていてくれた。

 そして、エリックの妻レフィ、娘のシャルロット、マリーに獣たちを引き渡す。

 レフィたちは大喜びで撫でている。


「がうー」

「こっこ!」

「わふ」

 ガルヴたちも嬉しそうなので、何よりである。


 そして、俺とフィリーは図書室に向かった。

 国王であるエリックから特別許可を得ているので、閲覧禁止の図書も読める。


「おお、これは……興味深いのだ」

 フィリーは関係ない図書にひかれているようだ。


「気持ちはわかるが、今は目的を優先してくれ」

「わかっているのだ」

「今度、エリックに言ってまた入れてもらおう」

「よいのか?」

「ああ、エリックも嫌とは言うまいよ」


 そして、俺とフィリーは図書室で資料探しに集中した。

王宮の図書室はかなり蔵書数が多いようです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ