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前話のあらすじ:ゴランが心配していた


もう一つの拙作、「最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる」が7/13頃からGAノベルから発売になります。どうぞよろしくお願いいたします

 ゴランの説教は少し長かった。

 酒を飲んでいるので、余計長引いているのかもしれない。


「いいか? たしかにゴブリン退治が大切ってぇのは、俺にもわかる」

「だろ?」

「だがな。一言、しばらく空けることを、伝えることぐらいは出来たんじゃねーのか!」


 お前は俺のお母さんか!

 そう言いたくなるのをぐっとこらえる。

 とりあえず、話を変えなくては。


「そういえば、ただのFランク向けゴブリン退治のクエストだったのに、ゴブリンロードがいたぞ」

「……なんだと? それはよくないな」


 ゴランの目つきがしっかりする。

 Fランクパーティーがゴブリンロードに遭遇すれば、全滅必至だ。

 ランクと難度のミスマッチは完全に防ぐことはできないものだ。

 とはいえ、完全にギルドのランク設定のミスなのは間違いない。

 冒険者ギルドのグランドマスターとしては、忸怩じくじたる思いがあるのだろう。


「まあ、俺がいたからな。Fランク冒険者は無事だ。いい経験にもなったと思うぞ」

「助かった。ありがとう」


 生還できれば経験になるのだ。

 難度が高いクエストほど生還時に得られる経験は多くなる。


「俺はうけた任務をこなしただけだ。お礼を言われるようなことではないぞ」

「Fランク冒険者は、未来のギルドを担う者たちだからな。グランドマスターとしてお礼を言うのは当然だ」


 ゴランはなんだかんだで、真面目なのだ。


「で、ここからが本題なのだが、ゴブリンロードもただの手下に過ぎなくてな」

「なんだと?」

「ヴァンパイアロードが巣の奥にいた」

「…………」


 ゴランは言葉を喪っている。

 ヴァンパイアロードはBもしくはAランク冒険者パーティーの討伐対象だ。

 対応を間違えれば、簡単に中規模の町ぐらいなら滅びてしまう。


「……倒してくれてありがとうな」


 気を取り直したゴランが最初に言ったのはお礼の言葉だった。

 討伐報告はしていないのに、倒したと判断しているようだ。

 それだけ俺が信用されているということなのだろう。


「そりゃ、倒したけどさ……ゴランにも詳しい経緯を報告する必要があってな」


 俺がそういうと、ゴランの眼光が鋭くなった。

 酒が入っているとは思えない。


 俺はシアに聞いた情報も含めて、すべて報告した。


「で、そのメダルってのがこれだ。半分だがな」

「専門機関に調べさせたい。借りてもいいか?」

「構わないぞ」


 ゴランは、メダルを手に取って眺める。


「これの素材は、なんだ?」

「金みたいだが、金ではないよな」

「オリハルコンでもミスリルでもねーし。魔導士としては何かわからねーか?」

「俺でもわからん。錬金術師ならわかるかもしれないがな」


 ゴランはメダルを机の上に置く。 


「そのヴァンパイアハンターの少女が言った昏き者どもの神がいるってのは事実だ」

「ゴラン、なにか知っているのか?」

「そりゃな」


 ゴランは平然と言う。

 10年前。魔神は尖兵などではなく、侵攻してくる本隊だと思われていた。


「10年も経ったんだぞ。俺やエリックがなにも調べないわけねーだろ」

「……それもそうか」


 ゴランが説明してくれた。


 ゴランたちは次元の狭間に入る方法などを調べたのだ。

 その過程で、次元の狭間の向こうについての情報も知ったのだ。

 昏き者どもの神がいることや魔神が尖兵であることも突き止めていた。

 なかなかの調査力だと思う。


「だが、ヴァンパイアたちがそのようなことをしているとは知らなかった」

「呪いを溜めたら門を開くことができるというのは?」

「それも知らなかった。助かったぞ」

「とにかく、対応頼むぞ」

「もちろんだ」


 俺は疲れたので、寝ることにする。

 その前に、念のために言っておく。


「一応シアという獣人の冒険者には、俺の正体がばれてるからな」

「そうか。わかったぞ」

「人手が必要なら、ここか、冒険者ギルドに来いって言ってあるから」

「了解。門番にも言っておくぞ」

「助かる」


 そういって、俺は自室に帰ろうと、食堂の扉を開けた。


「おおっと」


 そこには一人の少女が立っていた。

 少女に向かってゴランが言う。


「セルリス。帰ってたのか。ちょうどいいこっちに……」

「……」


 セルリスと呼ばれた少女は無言で走りさった。

 それを見てゴランはため息をついた。


「すまんな。紹介しようとおもったのだがな」

「いや、気にするな……」

「娘だ」

「そういえば、10年前に5歳ぐらいの娘がいるって言ってたよな?」

「そうだ。最近、冒険者を始めたいと騒いでいてな……。ここ数日、反抗期なのか口をきいてくれんのだ」


 ゴランは酒をコップに自分で注ぐ。


「飲みすぎるなよ?」

「わかってるさ。セルリスは戦闘能力だけはBランク冒険者並みにはある」


 自身もSランク冒険者であるゴランの見立てなら正しいだろう。

 Bはシアと同じ一流冒険者のランクだ。15歳でBランクは相当すごい。

 ゴランの娘だけあって優秀なのだろう。


「戦闘能力はあってもまだ、子供だ。冒険者になるには早いと思うんだ」

「ふむ」


 少し過保護な気もするが、一人娘なのだ。仕方ないのかもしれない。


「冒険者になるのに反対したからか、セルリスは最近口をきいてくれないんだ」

「それはつらいな」


 親は大変そうだ。

 俺は子供がいないので実際のところはわからないが想像でしかない。

 少し同情する。


「そういえば、奥方にもご挨拶してないな」

「先月から、隣国に出張中でな」

「そうだったのか」


 ゴランが言う。


「このままでは勝手に冒険者登録して冒険を始めてしまうだろう」

「それは心配だな」


 15歳から冒険者登録に親の同意は必要なくなる。

 いくらグランドマスターでも娘の冒険者登録を拒否するのは公私混同というものである。


「セルリスが冒険者登録するのは防ぎようもない。もし、見かけることがあったら、見守ってやって欲しい」

「なるほどな」

「もちろんロックとセルリスでは実力が違いすぎる。だが、ロックにしか、頼めないのだ」

「構わないぞ。そういう機会があったら気を付けておく」


 俺がそういうと、ゴランは少し安心したように見えた。

ゴランの娘は反抗期なのかもしれません

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― 新着の感想 ―
[一言] 子守のフラグな予感(笑)
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