表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

169/303

169 水竜の朝食

前話のあらすじ:水竜の集落で眠っていくことにした。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 みんなベッドに入ったが、なかなか寝付けないらしい。

 激しい戦いの後だからだろう。


 そんな中ガルヴは、

「がーぅ」

 お腹を出して眠っていた。

 ガルヴは相変わらず眠るのが早い。


 可愛いので、お腹の横辺りを撫でてやった。

 自分で掻いているつもりになるのか、後ろ足がひくひく動く。


 そんなことをしている間に、俺も眠りについた。


 次の日の朝、眠っていると、モーリスに起こされた。

 朝食の準備ができたのだという。


「がうがう」

 ガルヴはお腹がすいたのか、もう起きていた。

 俺の顔をぺろぺろ舐めてくる。


 顔を洗ってから食堂に向かう。

 食堂にはすでに、エリックやゴラン、ケーテにドルゴ、リーアがいた。

 俺はみんなに向かって言った。


「それにしても、死者が出なくて何よりでしたね」

「本当にな。かなり後手に回ってしまっていたからな。死者が出なかったのは不幸中の幸いだ」

 エリックが真剣な表情でつぶやいた。


「今までの襲撃が散発的で、計画的でもなかったので……油断もありました」

 食事を並べながら、モーリスが言う。

 その通りだ。俺も油断していなかったとは言えない。


「魔装機械を動員してくるとは……。ケーテのごみ箱を回収したから、新規には作れないと思ったのだが」

「確かにそうなのである」

「ごみばこ?」


 リーアがケーテの隣で首をかしげている。

 俺はごみ箱の説明をした。


 ごみ箱は風竜王の宮殿にあった、錬金装置の通称だ。

 愚者の石や賢者の石を突っ込めば、魔装機械を作ることが出来る。

 今は回収して、俺の屋敷、フィリーの研究室に設置してある。


「愚者の石だけでなく、ごみ箱も手に入れているのかもしれねーな」

 ゴランがそういうと、

「錬金装置というのがあれば、魔装機械を沢山作れるのですか?」


 そう尋ねたモーリスの表情は深刻そのものだ。

 モーリスが危機を覚えるのもわかる。

 魔装機械があれば、水竜の結界の内側に強力な敵を運び込めるのだ。


 ごみ箱に一番詳しいドルゴが答える。

「材料を集めるのが大変ですが……。大量の魔石や生贄などの材料が必要なのです」

「ということは……。昏き者どもは生贄を?」

「残念ながら、可能性は高いと言わざるを得ません」


 それを聞いていたゴランが言う。


「愚者の石でも代用できるんじゃねーか?」

「愚者の石を作るのにも、生贄を集めるのが一番手っ取り早いので」


 フィリーのような凄腕の錬金術士なら高価な材料は必要ない。

 だが、非常に高度な技術が必要になる。

 装置を使って安易に作るならば、大量の貴重な材料が必要だ。


「それは、ゆゆしき事態ですね」

 モーリスが唸るように言った。


 水竜が生贄になれば、さらに愚者の石や魔装機械の製造が進むだろう。

 邪神召喚に至らなくとも、敵の戦力が増強してしまう。


「モーリスさん。水竜には風竜のゴミ箱のようなものはないのですか?」

「ございません。我らは結界魔法の方が得意なのでございます」

「我ら風竜は錬金術よりなのであるぞ」


 ケーテが教えてくれた。

 その割には、ケーテは錬金術が得意ではなさそうだ。

 それは指摘しないほうがいいだろう。


「魔装機械に使われている技術は錬金術なのか?」

「そうであるぞ」

「違います」

「あ、違うのであるか……」


 どや顔で言ったケーテを、即座にドルゴが否定した。


「あれは魔導機術ですね。竜族で言えば火竜が得意としています」

「種族によって得意なものが違うのですね」

「能力的なものというより、文化的なものが大きいのですが」

「なるほど」


 親から子に魔法を教える。そして魔法の奥義は門外不出だ。

 それが連綿と続けば、偏りが出るのは当然だ。


「ちょっとまて。ということは、魔装機械を新規に用意できたということは……」


 エリックが俺の方を見る。

 火竜が昏き者どもの手におちたのでは? と心配しているのだろう。


「いや、それはない」

「なぜそう思う?」

「火竜が昏き者どもの手におちたのなら、今頃邪神が復活している」

「……そうか。それもそうだな」


 火竜を落としたのなら、火竜を生贄にすれば邪神を召喚できる。

 あえて防備の堅い水竜を生贄にする必要もない。


「じゃあ、どうして魔装機械を用意できたんだ?」

「火竜の遺跡から何か見つけたんだろう」


 俺がそういうと、ドルゴがゆるゆると首を振る。


「ロックさん。残念ながら、火竜は我ら風竜のように遺跡に装置を残したりはしません」

「そうなのですか?」


 風竜は地上に集落を持たない。空をテリトリーとする竜だ。

 とはいえ、地上にも拠点が欲しいときがある。

 そうして、作った後、代替わりなどで放棄されたのが竜の遺跡だ。

 あとで使うつもりで、結局使わなかったというのもあるらしい。


 だが、風竜以外の竜族は集落を持っているので、そのようなことはしないようだ。


「当然長い歳月を過ごすうちに、集落を移動することはあります。ですが魔道具の類を残したりはしません」


 人族でもそんなことはしない。

 貴重なものなのだから新しい住居にもっていく。


「ということは、他にもごみ箱のようなものがあったということか」

 俺がそういうと、

「面目ないのである。恐らくそうなのだ」

 風竜王のケーテが頭を下げた。

明後日ぐらいから、毎日更新をお休みして、「ひざに矢~」との交互連載になる予定です。

毎日更新を楽しみにしてくださっていた方には申し訳ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ