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162 王都に戻る

前話のあらすじ:リーアと侍従長のための通話の腕輪を作ることにした。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 俺は全員に説明する。


「魔法ラーニングとは違うんだ。ただ見て真似られるってだけだ」

「それはそれですごいですね」


 そんなことを話している間に、ドルゴの魔法が完了する。

 あっという間に通話の腕輪が作られた。


 人族の魔法技術でも、通話の腕輪は作ることが出来る。

 高価だが店で買えるぐらいだ。そこまでレアではない。

 とはいえ、これほど素早く作ることは人族の魔法技術では無理だ。


「ラックさん。必要があれば、お見せした魔法を使って通話の腕輪を作っていただいても構いませんよ」

「ありがとうございます」


 ドルゴは完成した通話の腕輪をリーアと侍従長に渡した。

 そして操作法などを説明する。


「ふわぁ」


 リーアは通話の腕輪を手にもって感激していた。

 尻尾も盛んに上下に揺れている。


「もし襲撃があれば、すぐラックにご連絡するね」

「はい。襲撃だけじゃなく、用があればいつでもどうぞ」

「そんな。いいのかしら?」

「もちろんです」


 その後、非常事態の連絡手段などを話し合ってから、屋敷に戻った。

 エリックとゴランはそれぞれ仕事に行った。

 ケーテはさぼろうとしたが、ドルゴに連れて行かれた。


 そして、俺は自室でゆっくりすることにした。

 横にいるのはガルヴとゲルベルガさまだけだ。


「がーぅ」

 ガルヴはベッドの上にあおむけに寝っ転がる。

 あっという間に眠ってしまった。


「ガルヴは寝るのが早いな」

 子犬ならぬ子狼なので、睡眠時間が長いのかもしれない。


「こっこ」

 ゲルベルガさまは俺のひざの上に座ってきた。

 俺はゲルベルガさまを撫でながら、昏き者どものことを考える。


 今、昏き者どもは水竜の集落を狙っているらしい。

 恐らく、愚者の石の製造に成功したと考えたほうがいいだろう。


 そして、忘れてはならないのは至高の王だ。

 ケーテの宮殿を襲ったヴァンパイアから至高の王という存在がいると聞いた。

 おそらくヴァンパイア・ハイロードより上位の、ヴァンパイアどもの王なのだろう。


 至高の王の配下は、風竜王の宮殿を襲い竜族の遺跡を漁っていた。

 水竜を襲っている昏き者どもも、至高の王の配下と考えたほうがいいだろう。


 王都における昏き者どもも忘れてはならない。

 彼らは至高の王の配下なのだろうか。

 どちらにしろ、政権中枢に近いところに入り込んでいる気配がある。

 官憲に影響力を持っているのは確実だ。


 王都の昏き者どもに与するものは、マスタフォン侯爵家を占拠していた。

 そしてフィリーに愚者の石を作らせた。

 カビーノのような悪党に武器を集めさせ、ご禁制のハムを保管させていた。


 風竜王の宮殿を襲った者たちよりも、王都の昏き者どもが弱いのは確実だろう。

 だが、王都の中に入り込んでいる時点で、非常に厄介だ。

 おそらく、多数の人族を使役しているに違いない。

 なぜ、人族が昏き者どもに与するのかも謎である。


「ふむぅ」

「こ?」


 ゲルベルガさまが俺の指をくちばしであまがみする。

 俺はゲルベルガさまに語り掛ける。


「王都の昏き者どもの調査は枢密院に任せるしかないからなー」

「こぅこ」


 俺にやれることは限られる。

 調査などは得意な機関に任せる方がいい。

 きっと、いま全力で調べてくれているのだろう。


「とりあえず今は水竜を守ることに全力を尽くすしかないか」


 そんなことを話していると、扉がノックされた。


「む? どうした?」

「ロックさん、ちょっといいかしら」

「セルリスか。どうした?」


 俺はゲルベルガさまを抱いたまま、立ち上がると扉を開ける。


「いま、時間あるかしら……。剣の練習に付き合ってほしいのだけど……」

「いいぞ。庭にいこう」

「ありがとう!」


 セルリスは嬉しそうに微笑んだ。


「ガルヴは……。寝かせておいてやるか」

 気持ちよさそうに寝ているのを起こしてもかわいそうだ。

 俺はガルヴを部屋に残すと、ゲルベルガさまを抱いて、庭に行くことにした。

 庭はかなり広いので、こういう時は助かる。


 セルリスと一緒に庭へと向かう途中、シアとニアを見かけた。


「ニア。いまからセルリスと剣の練習をするのだが、一緒にどうだ?」

「いいのですか?」

「もちろんだ」


 ニアは俺の徒弟だ。しかも冒険者。

 剣は教えたい。


「あの! あたしも見学させてほしいであります」

「シアもいいぞ」

「ありがたいであります!」


 庭に行くと、まずはセルリスと稽古を始める。

 重い木剣を使って打ち合うのだ。


「セルリス、筋がいいな」

「はぁはぁ……ありがとうございます!」


 息切れしながらも、セルリスは懸命に木剣をふるう。

 速いし切れもいい。以前より強くなっていると思う。


 しばらく打ち合って、セルリスの木剣を弾き飛ばす。


「次。ニア、来い」

「よろしくおねがいします!」


 ニアはまだ小さいのに優秀だ。

 筋がいい。獣人らしい筋肉のしなやかさがある。


 ニアの次はシアだ。シアとも剣で打ち合う。

 それを順に繰り返す。


 一時間後、セルリス、ニア、シアは息を切らしてひざをつく。


「持久力が足りないな」

「ロ、ロックさんの体力が異常でありますよ」

「頑張ります!」

「先は長いわ……」


 そんなことをつぶやいていた。

ラックさんは現状を頭の中で整理をしました。

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