表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/303

159 水竜の集落を案内してもらおう

前話のあらすじ:宮殿に部屋をもらいました。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 部屋に案内された後、俺たちは宮殿内を案内された。

 一応、王族用に人族サイズの施設もあるようで、暮らすのに支障はなさそうだ。

 ただ、どの部屋も天井がとても高かった。


「次は集落を案内するの!」


 楽しそうにリーアが言う。

 リーアがどんどん打ち解けてくれているようだ。口調もだいぶ柔らかい。

 子供はそのぐらいがちょうどいい。


「リーアちゃん、水竜の集落って広いのかしら?」

「そうなの! 宮殿よりもずっと広いのよ」


 セルリスは、ことあるごとにリーアの頭を撫でている。

 小さい子が好きなのだろう。

 リーアも嬉しそうにしている。


 仮にも王太子に対して、と思わなくもないが、侍従長もケーテも何も言わない。

 おそらく竜族の風習的に大丈夫なのだろう。


「じゃあ、ラック。ついて来て欲しいの」

「がうがうー」


 リーアはガルヴの背中に乗って走り出す。リーアもガルヴも楽しそうで何よりだ。

 そんな元気な姿を見ていると、ただの子供にしか見えない。

 リーアたちをみんなで追いかけた。


「あ、ラックさま!」

「え? ラックさまだって?」


 宮殿を出ると、たちまち水竜たちが気づいた。

 ぞくぞくと集まってくる。


「リーアが、お客様をご案内してるのよ」

「そうなんですか」

「さすが殿下、偉いですね」


 リーアがみんなに褒められている。

 竜の王族は、雲の上の存在という感じでもないらしい。


「ガルヴちゃんもえらいねー」

「がうがう」


 水竜たちに褒められてガルヴも嬉しそうだ。

 そのまま、水竜たちは集落案内についてきた。

 五十体の水竜を引き連れての移動は落ち着かない。


 だが、リーアとガルヴはあまり気にしていないようだ。


「ここが入り口なのよ。この柱の間を通って、出入りするの」


 リーアが指さしたのは、間をあけて建っている石造りの大きな二本の柱だった。

 巨大な竜、例えばドルゴであっても、間を楽々通れそうだ。


「リーア殿下。質問しても良いでありますか?」

 シアが小さく手を挙げている。


「だめなの! リーアって呼んで」

「で、ですが、臣下の方々の前で……」


 シアの戸惑いもわかる。

 多くの臣下が見ている前では、俺もエリックを呼び捨てにはしない。

 国王には君主としての立場があるのだ。


「気にしなくていいの! シアはリーアの臣下じゃないもの」

「それは、そうでありますが……」

 シアは侍従長モーリスをちらりと見た。


「殿下のおっしゃる通りでございます。みなさまは水竜でもなければ、竜族でもありません」

「そういうものでありますか?」

「はい。みなさまは臣下ではなく、殿下の御友人でございますれば」

「それでも、水竜のみなさまは、ロックさんならともかく、あたしのようなものが殿下を呼び捨てにしていたら、面白くないと思うであります」


 それを聞いていた水竜たちは互いに顔を見合わせている。


「いや、別に……」

「ああ。別になぁ?」

「もちろん侮辱されたら怒るけども……」

「殿下が許したんだろう? なら怒る理由がないよな」

「ああ」


 そんなことを話していた。

 竜族は、人族とは考え方が違うらしい。


 いや、人族との間に大きな種族的差異を感じているのかもしれない。

 王が可愛がっている犬が王の顔をなめても、怒る臣下はいない。


 とはいえ、人族を犬みたいに下に見ているということではないだろう。

 俺やエリックたちに対する尊敬の態度を見れば、それはわかる。

 ただ、文化の違う者たちと考えて、自分たちの常識をあてはめないだけだ。


 ドルゴのふるまいを見るに、竜族と人族で適用される作法が違うのは間違いなさそうだ。


「水竜さんたちも、そういう感じなのでありますね」

「そうなの! だから、リーアって呼んで」

「わかったのでありますよ。リーア」

「へへへ」


 リーアは嬉しそうに笑う。

 それを見てセルリスが優しく微笑んだ。


「リーアちゃん、嬉しそうね」

「うん、だって。近い年ごろの女の子のお友達は初めてだもの」


 周囲にいる水竜たちは親しくとも全員臣下だ。

 お友達にはなれないのだろう。


「え? 我は? 我はリーアの友達ではないのであるか?」


 ケーテがショックを受けたような顔をする。

 友達だと思っていたのはケーテだけだったらしい。可哀そうだ。


「ケーテ姉さまは、お姉さまだもの。友達だけど年頃は近くないもの」

「むむう。我とリーアの年齢差など、竜の寿命と比べれば誤差みたいなものであるぞ、誤差」

「でも、少し違うと思うの」


 一応、成長したとみなされて王位を譲られたケーテに対して、リ-アは子供。

 リーアからすれば、同年齢の友達とは思えないのかもしれない。


「そうであったかー。我は年代が違ったのであるかー」

 ケーテは少しショックを受けている。


「ケーテ。友達だとは思われていたのだから、よかったじゃないか」

「そうよ。ケーテ姉さまはお友達なの」

「我はちゃんと友達であったか。よかったのである」


 ケーテは友達が少なそうなので、とても良かった。

 俺も少し安心した。

ケーテにも友達がいたようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ