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155 水竜の集落に向かおう

前話のあらすじ:ドルゴが転移魔法陣を持ってきた。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 夕方になり、エリックとゴランがやってきた。

 即座にミルカがエリックに尋ねる。


「ゴランさんは、当然食べるとして、エリックさん、夕食は食べていくかい?」

「いや、折角なのだが……」


 どうやら、エリックは妻のレフィに食べすぎだと怒られたらしい。

 俺の屋敷でも夕食を食べ、王宮でも食べるのは確かに食べすぎだ。

 ただでさえ、国王であるエリックには会食という仕事もあるのだ。


「レフィ怒ると怖いからな……」

「ああ……そうだな」


 俺がつぶやくと、ゴランもうなずいた。

 レフィは元パーティーメンバーだ。恐ろしさは知っている。


「だが、エリック。食べた分、動けばいいだろう?」

「俺もそう思うのだがな……」

「じゃあ、お茶でも入れるぞ!」

「ありがたい」


 それから俺はエリックとゴランを魔法陣部屋に連れていく。


「これは一体なんだ?」

「新しく作った転移魔法陣部屋だ」

「ほほう。どこに繋がっているんだ?」


 俺は転移魔法陣の説明をする。

 ついでに、エリックとゴランの鍵の登録も済ませておいた。


 ドルゴが真面目な顔で言う。


「もし、風竜王の宮殿や水竜の集落が落ちた場合は、リスクがあります」

「そうでしょうね」


 エリックは頷いた。


「エリック王陛下への相談が遅くなって申し訳ございません」

「気にしないでください。風竜王の宮殿にはロックの魔法防御が掛かっていますからね。それに水竜の集落はこれからロックが守るところですし」


 それを聞いて、ドルゴは微笑む。


「エリック陛下はロックさんのことを信用なされているのですね」

「もちろんです。ロックの魔法防御を破る相手なら、そもそもの対策を根本的に改める必要がありますし」


 風竜王の宮殿の防壁を破れる敵ならば、そもそも存在がやばい。

 魔法陣など使用せずに、王都に直接攻め込まれたほうが危険だ。

 神の加護はあるが、加護の外から攻撃されるのが恐ろしい。


「水竜の集落から、ロックがすぐに戻ってこれるのは助かるな」

「ああ、心強い」


 ゴランとエリックも喜んでいた。


 それから軽く打ち合わせをする。

 ドルゴが言うには、水竜の集落には明日出向いてほしいとのことだった。


「我も同行するのである!」

「あたしも同行したいのであります!」

「私も……」

「ロックさん! パパ! 私もぜひ連れて行ってください」


 ケーテ、シア、ニア、セルリスが同行の意思を示した。

 とくにセルリスは真剣な表情だ。


「うーん。そうだな……」


 悩ましい。人手は必要かもしれない。

 だが、敵は水竜の集落に攻め込む戦力だ。

 昏竜イビル・ドラゴンやヴァンパイアロードなどが中心になるだろう。

 ケーテはともかく、その他のメンバーが活躍できるだろうか。


「うーむ」

 ゴランも悩んでいる。


「お、来てくれるのであるな。嬉しいのであるぞ!」


 だが、ケーテはニコニコして、同行を許可する。

 あっさり許可されて、セルリスが驚く。


「え? いいのかしら?」

「よいぞ?」


 ケーテはいいというが、本当にいいのだろうか。

 俺は一応ドルゴにも確認することにした。


「ドルゴ先王陛下。どうでしょうか? 大勢で押しかけたら、水竜の皆さんのご迷惑になりませんか?」

「いえいえ、構わないと思います」

「そうですか。それならよかったです」


 セルリスとシアとニアも同行してくれることになった。

 ニアはフィリーの授業があるので、初日以外は午後からの参加とすることにした。

 転移魔法陣の効果で、移動が簡単になったおかげだ。



 次の日、朝食の後、俺たちは水竜の集落に向かう。

 初日ということで、エリックとゴランも同行する。

 エリックとゴランは普段は防衛に参加できないが、水竜には挨拶する必要がある。

 当然といった表情で、ガルヴもついてきた。


 転移魔法陣をくぐると、とても広い部屋に出る。

 石造りの立派な部屋だ。


「お待ちしておりまいた」


 可愛らしい幼女が目の前にいた。

 幼女は挨拶を噛みながら、ぎこちない所作で頭を下げた。

 年のころは、エリックの四歳の次女、マリーぐらいに見える。 


 ケーテとドルゴにそっくりな太くて長い尻尾があり、頭に角が生えていた。

 竜族なのだろう。


「はじめまして。水竜の王太女リーア・イヌンダシオです」


 リーアは緊張しながら自己紹介してくれた。

 水竜には王はいないとドルゴから聞いている。

 まだ幼く即位できない王女なのだろう。


 ドルゴが俺たちを紹介してくれる。


「こちらが、メンディリバル王国国王、エリック・メンディリバル陛下です。こちらがゴラン・モートン卿、冒険者ギルドの……」


 ドルゴは一人一人、丁寧に紹介してくれる。

 それにリーアも、緊張しつつも丁寧にあいさつを返していく。

 だが、なぜかドルゴは俺をなかなか紹介してくれない。


 年齢的に、エリック、ゴランの次ぐらいに紹介してくれてもいいと思う。

 セルリス、シア、ニア、ガルヴの紹介が終わって、ついに俺の番になる。


「そして、最後になりましたが、この方が、偉大なる大賢者にして、我々の救世主、偉大なる最高魔導士、ラック・フランゼン大公閣下です」


 ドルゴの紹介に「偉大なる」が二回入っている。

 ギルドの称号では、大賢者の前に「偉大なる」は入らなかったはずだ。

 ドルゴのアレンジだろうか。

 勝手に「偉大なる」を増やすのはやめて欲しい。


「ラ、ラックさまですか!」


 リーアが駆け寄ってくる。


「お、お会いできて光栄です」

「王女殿下、よろしくお願いいたします」


 王女の尻尾が上下に揺れていた。

王太女リーアは幼女でした。

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