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154 竜の魔法陣

前話のあらすじ:お昼ごはんの後、ガルヴは眠った。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 それにしても、ドルゴは仕事が早い。

 俺を王都まで送り届けた後、水竜と話をつけて戻ってきたのだ。

 移動速度もさることながら、話し合いをまとめるのも早いらしい。


「ここまで、話がまとまるのが早いとは思いませんでした」

「ラックさんの名前を出せば、すぐにまとまりますよ」


 ドルゴがお世辞を言ってくる。

 ケーテも嬉しそうだ。


「さすがはロックであるな。父ちゃんもさすがなのである!」

 娘に褒められて、ドルゴもまんざらでもなさそうだ。


「早速明日にでも、水竜の集落に向かわせていただきますね」

「そうしていただけると助かります」

「我が送っていくのである!」


 ケーテが張り切っている。

 そんなケーテにドルゴが言う。


「まあ、ケーテ、待つのだ」

「む? 父ちゃんが送っていきたいとか言うのであるか? 今朝乗せたのであろう? 次はケーテの番である」

「そうではない」

「では、どういうことなのだ?」

「その必要がないかもしれぬ」

「むぅ?」


 ケーテの尻尾が円を描くように揺れ始めた。


「ラックどの、実はこのようなものを用意したのですが……」

 そういいながら、ドルゴは鞄から金属製の板を取り出した。

 高さは人の身長ぐらいあり、横幅は肩幅よりも少し広いぐらいの大きさだ。


「それは一体?」

「転移魔法陣を刻んだ魔道具です」

「なんと」

「私が作りました」

「さすが父ちゃん!」


 ケーテの中で、ドルゴの株が急上昇中だ。


 昏き者どもの転移魔法陣をみて、ケーテは見覚えがあると言っていた。

 竜族はいわば転移魔法陣の本家。ドルゴが使えてもおかしくはない。


「それはすごい……。ちなみに、これはどこに?」

「水竜の集落に繋がっています」

「すごく便利ですね」

「はい。ラックさんが王都を長く離れれば、王都の防備がおろそかになりかねませんから」


 ドルゴは気を使ってくれたようだ。

 とても助かる。王都の防衛も水竜の防衛も両方できそうだ。


 ドルゴはさらにもう一枚金属の板を、申し訳なさそうに取り出した。


「これは風竜王の宮殿につながっている転移魔法陣です」

「おお、便利であるな!」


 ケーテは、申し訳なさそうなドルゴと対照的だ。

 ケーテの尻尾が縦に揺れている。喜んでいるようだ。


「風竜王の宮殿につながる魔法陣はご迷惑かもしれませんが……」

「なぜ、迷惑なのであるか?」


 ドルゴは申し訳なさそうに恐縮しながら言った。

 だが、ケーテは首を傾げている。


 俺の屋敷に転移魔法陣を繋げたら、ケーテが入り浸る可能性がある。

 だから、ドルゴは申し訳なさそうにしているのだ。


「風竜王の宮殿に繋がる魔法陣も助かります。ありがとうございます」

「うむうむ。いつでも手伝いに来るのであるぞ」


 ケーテは嬉しそうにしている。

 一方、ドルゴは険しい表情のままだ。


「ラックさん。転移魔法陣は便利です。ですが、注意点もあります」

「と、おっしゃいますと?」

「風竜王の宮殿。もしくは水竜の集落が、敵の手におちれば、この屋敷にも敵が押し寄せることになります」

「それは……たしかにそうですね」

「敵の手におちるまではいかなくとも、向こうの魔法陣部屋に侵入を許すだけで、こちら側に敵が侵入出来るようになります」


 何者かがこっそり転移魔法陣部屋に忍び込む可能性もあるのだ。

 つまりは敵の侵入経路が増えるということ。


「なるほど、警戒したほうが良いですね」

「はい。そのリスクを考えれば、転移魔法陣の設置は慎重であるべきなのです」

「なるほど、気を付けましょう」

「くれぐれもご注意ください」


 俺は少し考える。


「こちら側の魔法陣部屋をどこに置くべきか、慎重に考えないといけませんね」

「それが良いかもしれません」


 どこに設置するのがいいだろうか。

 現状、機密的なものは地下の秘密部屋に固めてある。

 秘密通路への入り口も、フィリーの研究室も全部地下の秘密部屋の近くだ。


 真剣に考えていたケーテが言う。


「うむ。やっぱり地下がいいとおもうのである」

「いや、万が一、侵入を許したとき、そのまま王宮にまで侵入されたら困る」

「なるほど。それもそうであるなー」

「一階の空き部屋を、一つ使おう」


 窓から侵入されても困る。壁をぶち抜かれても困る。

 魔法的防御をがっちり固めたほうがいいだろう。

 とはいえ、外から魔法防御でガチガチに固めていることがばれるのも良くない。


「ふむー。慎重に部屋を整えるべきだな」


 俺はしばらく考えて、方針を決めた。


 外から見えない部屋を作ればいいのだ。

 それには地下が一番いい。

 秘密通路とは離れた位置に新たに地下室を作ればいいだろう。


 俺は一階の空き部屋に向かう。

 そして、その床を魔法で切り取り、露出した地面を魔法で掘った。


「ここに設置しましょう」

「なるほど。それは良いですね」


 ドルゴも賛成してくれた。

 俺は魔法で防御を固めていく。念には念を入れてガチガチに固めた。

 そして、くりぬいた床をそのまま扉にして完了だ。


「ドルゴさんとケーテさんも開けられるように登録しておきますね」

「ありがとうございます」

「助かるのである!」


 あとでエリックやゴランも開けられるようにしておかなければなるまい。

竜族は、転移魔法陣の本家です。

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