表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

152/303

152 獣たちと昼食

前話のあらすじ:散歩に出かけた。


『最強の魔導士。ひざに矢をうけてしまったので田舎の衛兵になる』の2巻が発売中です。

 はしゃぎまくっていたガルヴが、急に大人しくなった。

 俺の近くの地面に伏せている。


「……ガルヴ。疲れたのか?」

「がうー」


 思いっきり遊ぶのはいいことだ。

 だが、疲れて動けなくなるまで遊ぶのはやめて欲しい。

 これから、屋敷まで帰らねばならぬのだ。


「ガルヴ。帰りの分の体力も考えないとダメだぞ」

「がう!」


 ガルヴは一声吠えると、立ち上がって後ろから両前足を俺の肩に乗せる。


「言っておくが、背負ってやらないからな」

「がう?」

 ガルヴは尻尾を振って、首をかしげていた。


「セルリス。ガルヴが疲れたみたいだし、帰ろうか」

「そうね。ガルヴ、競争よ」

「がうっ?」


 セルリスが駆けて行った。

 不意を突かれた形になったガルヴも懸命に追っていく。


「ガルヴ、まだ走れるんじゃないか」


 そうつぶやいて、俺は軽く追いかける。

 ガルヴは息切れしているので、セルリスといい勝負をしていた。


 屋敷に戻ると、シアとタマが出迎えてくれた。


「おかえりなさいであります!」

「わふわふ!」

「ただいま。ミルカたちは?」

「まだお勉強中でありますよ」


 勉強熱心なのは良いことだ。あとでフィリーにお礼を言わなければなるまい。

 ガルヴに水を用意しながら、シアに尋ねる。


「シア、冒険者ギルドに行ってきたのか?」

「はい。緊急性のあるクエストは無かったでありますよ」

「水竜の集落防衛の開始がいつからかわからないから、今は受けにくいわよね」

「そうであります」

 シアもセルリスも水竜集落の防衛を手伝ってくれるらしい。


「がう」

「どうした、ガルヴ?」


 水を飲み終わったガルヴが、後ろ足で立ち上がって、俺の顔を舐めてくる。

 何かを伝えたいのだというのはわかる。


「水が足りないのか?」

「……がう」

「お腹が減ったのか?」

「がう!」

 尻尾の揺れが加速した。


「そうか。そろそろお昼ごはんの時間だな」

 ミルカが勉強中なので、俺が用意しなければなるまい。


「少し待っていてくれ。食べ物を調達してくる」

「わたしも手伝うわ」

「助かる」

「あたしも手伝うでありますよ!」

「シアも悪いな」


 タマとガルヴに留守番をしてもらって、食糧を買いに行く。

 出来上がっている食べ物を買おうと思っていたのだが、セルリスは食材を買いたがる。


「折角だし! 作ったらいいと思うわ」

「そうか。まあ、それでもいいか……」

 ガルヴがお腹を空かしていたが、少しぐらいなら待てるだろう。


 俺たちは食材を買って、屋敷に戻った。


「がう!」

「ガルヴ、待ってなさい」

「がうー」


 明らかにがっかりしている。食べられる物を買ってくると思っていたのだろう。

 そんなガルヴの横でタマはきちんとお座りしていた。


「さて、頑張って、お昼ご飯を作りましょう!」


 セルリスは張り切っていた。

 俺とシアがセルリスを手伝い、昼食を調理していく。


 俺はガルヴとタマ、そしてゲルベルガさまの分のご飯も作る。

 その間中、ずっとガルヴはうろうろしていた。


 料理が完成に近づき、いい匂いが漂い始めたころ。

「あっ、忘れていたんだぞ!」

 慌てた様子でミルカがやってきた。


「勉強は終わったのか?」

「うん。ちょうど終わったところなんだ」

 そして、セルリスの方に行く。


「セルリスねーさん、申し訳ないんだぞ」

「気にしなくていいわ」


 それから、セルリスの作ってくれた料理を皆で食べた。

 獣たちもご飯を勢いよく食べていた。

 獣たちのご飯を担当した俺としてはとても嬉しい。

 特にガルヴは、勢いよく食べる。運動した分お腹がすいたのだろう。


「フィリー。勉強を教えてくれたのか? ありがとう」

 食事中、俺はフィリーにお礼を言った。


「うむ。教え始めるのは早い方がいいからな!」

「ミルカたちは、どうだった?」

「そうだな。三人とも飲み込みが早いぞ。優秀な生徒だ」

 フィリーに褒められて、ミルカ、ニア、ルッチラは照れていた。


「昼ごはんの準備、忘れていてすまなかったぞ」

「それは気にするな。授業を優先しろ」

「いいのかい?」

「いいぞ。俺がいれば俺が用意するし、俺がいない時は、授業が終わってから、食べ物を買いに行ってもいい」

「我も一緒に買いに行こうではないか!」

 フィリーもそう言ってくれるが、フィリーは昏き者どもに狙われている。

 俺はその点を説明して、自重を求めておいた。


「がふー」

 ふと横を見ると、ガルヴがあおむけで眠っていた。

 お腹が丸出しである。

 お腹がいっぱいになったら、眠くなったのだろう。


 そんなガルヴをみてセルリスが優しく微笑む。


「疲れていたのね」

「ガルヴはまだ子供だからな」


 人族だったら、毛布でもかけてやるところだが、ガルヴは狼だ。

 毛布をかけたら暑いかもしれない。


「ここ?」

「がふぅ」

 眠っているガルヴにゲルベルガさまが近づいたので、抱きかかえる。


「しばらく寝かせておいてやろう」

「ここ」


 ゲルベルガさまは、少し眠そうに目をつぶった。

 タマもフィリーに撫でられて、眠そうにしていた。

 獣たちはお昼寝の時間なのかもしれない。


 そんなゆったりとした空気が流れる中、

「ただいまなのである!」

 玄関からケーテの大きな声が聞こえてきた。

ガルヴは遊び疲れたようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ